2017年10月13日金曜日

BUMP OF CHICKEN「天体観測」歌詞解釈~イマは過去になりイマに至る






誰にでも青春の曲というものがあるだろう。

ヒット曲である場合が多いが当時のことを思い出すスイッチになるような曲である。

僕の世代(1987年生まれ)くらいでいえばBUMP OF CHICKENの"天体観測"などがそれに当たるのではないか。

今またバンプ人気は復活したが、当時のバンプは凄いものがあった。
当時のバンプファンは狂気をはらんでいたものである。アンチとバンプファンのののしり合いが連日のようにインターネット上で飛び交っていたのだ。

まさに厨二まっさかりの頃に"天体観測"があったので、誰もが見えないものを見ようとしていたものだ。

思い出話はさておき、久しぶりに聴いてもこの曲のパワーは凄いものがある。

それを最も感じたのが2015年のVIVA LA ROCKである。亀田誠治さん主導のVIVA LA J-ROCK ANTHEMS!という催しがあって、これでJ-POPの名曲たちをカバーした。
その1曲目がまさに"天体観測"であった。

イントロが流れた瞬間、遠巻きに見ていた観客たちが最前のモッシュピット目指して駆け出した。

確かキュウソネコカミのヴォーカルが歌っていたのだが、記憶が定かではない。だって、みんな歌っているから。会場全員ヴォーカルである。

自分含め、あの高揚感は説明ができないものがある。藤原基央の姿すら幻影で見えかねないほどであった。

すっかり前置きが長くなってしまったが、たまにはバンプに思いを馳せて歌詞解釈でも書こうと思った次第である。



BUMP OF CHICKEN / 天体観測 歌詞解釈








not ラブソング




有名なエピソードではあるが、大前提としてこの曲はラブソングではない。
それは藤原基央が再三発言しているので間違いないだろう。異論があるなら藤原基央に言って欲しい。

では何の曲か、ということになる。

僕はそもそもが"天体観測"をラブソングと思ってなくて、ジュブナイルな歌詞だと思っていた。PVもそうだしね。

つまりは恋愛ではなく友情についての唄であると解釈していた。仮に男女の曲であったとしても恋愛とはまるで関係のない、限りなくプラトニックな間柄でいられる時期を唄っているものだろう。

歌詞の前半は冒険譚が語られる。幼心にしてみれば午前二時というのは、未だ見ぬ世界なのである。真夜中の街は、慣れ親しんだ景色を一転させる。

中~高校生くらいになれば午前二時なんてなんとも思わないだろうが、もっと幼い小学校低学年くらいの想定なのだろう。
それくらいの年頃は、目に見える何もかもが神秘的に映るものである。



思い出として




天体観測というタイトルであるが、最大のテーマはそこではない。

この曲が最も訴えかけるテーマは、幼き日の経験と友情である。もしかしたら、家族に内緒で布団を抜け出し、午前二時のフミキリへ行ったのかもしれない、ささやかでありながらも、小さな身体にとっては大冒険だ。

そんな大冒険を君としたこと、それこそが主人公にとって最も心に残る思い出なのだ。
この曲には僕と君以外出てこない。まるで午前二時の世界に二人取り残されたように。ある意味での"セカイ系"ともいえるかもしれない。

たとえ天体観測で星が見えようが、見えまいが、君と「イマ」を生きる。そこに僕らの全てなのである。

たとえ君が二分後に来なくとも、僕は変わらず「イマ」を追いかけている。

主人公が感じる痛みは、君の手を握れなかったこと。

君と追うはずの光を一人で追っていたこと。
それこそが後悔に似た主人公の心残りともなる。

しかし、同時にそれが現実として君がいたことを思い出させる確たる事実ともなる。

危険を予測して、回避して、すぐに明日を諦めてしまう僕たちには、この純粋さはもう戻ることはないのだろうか。

降られた雨に傷んだ心を主人公は忘れることはない。体験は経験となり、人生に広がりをもたらす。
僕らはいつも頭の中だけで痛みを予測して作りあげて、それを避ける。いや、もちろんケガするのは嫌だけどさ。









流星




さて、ここからは蛇足である。

この曲を聴くと僕はある作品を想像してしまう。

それは伊坂幸太郎著『終末のフール』である。





読んだことのない方のために簡単にはあらすじを。
八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する。そう予告されてから五年が過ぎた頃、そこで残された三年を生きている人たちを描いた連作の短編集である。マンガ版も最高。





パニックも一段落した世界で、諦める人、淡々と日々を生きる人、大切なものを見つける人、見つめ直す人、購おうとする人、様々な人間模様が描かれる。

もし"天体観測"の世界がこの世界なら。
面白いと思ったのが「天体観測」がリリースされたのは2001年、『終末のフール』の出版が2006年。つまり、五年後なのだ。

もし、隕石の落下が発表された世界で、"天体観測"の主人公がそれを訊いたとしたら。
もし、見えないものを見ようとしたあの日を思い出したなら。

君と見れなかった流星、主人公の心はあの日に還る。そうしたなら、主人公は居ても立ってもいられなくなる。

たとえそこに君が現れなくても、僕は変わらずに「イマ」を生きて、「イマ」を追いかけている。

そんな短編があったらなと思い描いて、僕はこの記事を終えよう。







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4 件のコメント:

  1. 敬愛する日向武史先生の『あひるの空』の読者が、こぞってBUMP OF CHICKENを聴きながら『あひるの空』を読んでいるという事実を知って、これからどっぷりバンプにハマろうと思った矢先のサトシさんのこの記事に釣られましたw

    「天体観測」は僕の大学時の思い出の曲で、ドラマも観てましたし、イントロ聞くだけでパッと色んなものがフラッシュバックしてきます。

    じっくり歌詞を読んだこともなかったので、新鮮に感じながらブログ読ませて頂きました。

    「天体観測」だけで1か月は聴き込んじゃいそうだから、なかなか先に進むことができなくなりそう(笑)
    他でサトシさんのBUMP OF CHICKENオススメがあったら教えて下さい。次の1歩はそこへ。

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    1. コメントありがとうございます。
      僕の世代は今頃あらためてバンプ聞き直してきたりしてます。今聴いてもやっぱり良いです。

      オススメはなかなか悩みますねぇ。昔の曲しか分からないのですが、僕は"ギルド"が一番好きなので是非聴いていただきたいです。あとは今のからの季節は"スノースマイル"も似合います。
      なので、両方入っているアルバム「ユグドラシル」がオススメです。他の曲も良いし名盤です。

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    2. やっぱり「ユグドラシル」なのですね。『あひるの空』で登場したのも「ユグドラシル」でした。手に入れるべし。

      サトシさんのプロフィール見させてもらったら、同郷ではないですか!びっくりです。
      以前僕のブログにも書いてたミスチルのLIVEは、あのホールでやったLIVEに行ったのですよw近すぎてホントに感激でした。

      驚きのままにコメント、失礼しました。どこかですれ違ってるかもしれませんね(笑)

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  2. あら、まさか同郷でしたか。世の中狭いもんですね笑

    ミスチルをホールで見れるなんて本当に羨ましい限りです!

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