2017年12月6日水曜日

【感想】「オトトキ」 THE YELLOW MONKEYドキュメンタリー映画




THE YELLOW MONKEYのドキュメンタリー映画「オトトキ」先日見て参りました。

正直僕が感想を書いて良いものかと躊躇してしまっていたが、やはり気持ちの整理のために書き残しておこうと思う。

素晴らしいドキュメンタリーである。

ちょくちょく書いているが、THE YELLOW MONKEYは相方さん経由で再結成後にハマった口である。
相方は解散前からのファンなので、これを語る上では彼女の方が胸に降り積もったものは多いだろう。

だが、僕も音楽好きをこれだけ続けてきただけに、音楽として、ロックとして、スクリーンに映るTHE YELLOW MONKEYについて沢山のことを感じた。その記録である。




あらすじ





THE YELLOW MONKEYの音楽は「SHOW」である。
THE YELLOW MONKEYのライブは「SHOW」である。
THE YELLOW MONKEYの存在は、それ自体が「SHOW」である。
なぜ今彼らは再集結したのか?
「ザ・イエロー・モンキーはもう一生解散しない」、吉井和哉の言葉は本当なのか?
2004年の申年に解散し、2016年の申年に再集結。
あまりにドラマティックに復活した彼らの記録を新進気鋭の映画監督、松永大司が切り取る。




ツアードキュメンタリー①




2016年に再終結を果たしたTHE YELLOW MONKEY。その復活から2017年を迎えた約1年を追ったドキュメンタリーである。
合間にはこの映画のために撮りおろされた渋谷La.mamaでの客を入れない、メンバーだけの演奏シーンが挿入されている。

そもそも僕はドキュメンタリーが好きで、とりわけ音楽系ではよく特典映像などでドキュメンタリーなどは大好物だ。

その「オトトキ」は僕が生涯ベストの音楽ドキュメンタリーとしているのが「ヤング@ハート」である。それに勝るとも劣らないほどの作品であった。

こんなに泣かされた作品はそうない。

まず骨格となるドキュメンタリー部分。
再終結後、初のライヴとなった代々木第一体育館公演の様子が映る。"プライマル。"が演奏されるシーンは生中継もしていたし、何度も見たシーンである。だが、それでも鳥肌が立ってしまった。

特に良いと思ったのが、映画ではメンバーの姿よりも、この日を待ち詫びたファンたちの姿を中心に捉えていたことだ。生中継では当然ながらメンバーの姿を中心に捉えていたので見守るファン中心の映像は新鮮であった。
場内も場外のスクリーンでも涙するファンの姿に、もらい泣きしてしまった。早速である。

僕に解散後この瞬間を待ち詫びたファンの気持ちに重ねる権利はないが、音楽が好きだからこそ、ライヴを見ることの喜びは痛いほどよく分かるのだ。活動休止から15年、解散から12年の月日。その重さが画面からしっかりと伝わってきた。

そして開始されたアリーナツアーの最中、菊地兄弟の父親が亡くなっていたという事実が明かされる。

エマ、アニーのそれぞれが語る父親のこと、そしてそれを受け止めたメンバー。神戸公演の舞台袖で出番前にヒーセがエマとアニー(ついでにロビン)を無言で抱き締めるシーン。

このシーン、これにバンドの良さが全て現れてるような気がした。
その公演で演奏されたエマの長いソロからの"球根"。菊池兄弟の心中を重ねると、凄まじいほどのエモーショナルがそこにあった。

ちなみにシングル「砂の塔」に収録された"球根"のライヴ音源はこの日のものとのこと。





ツアードキュメンタリー②




映画の前半は菊池兄弟が主役といえるほどの展開であった。
しかしながら終盤ではTHE YELLOW MONKEYはやはりこの人なのだ、というほど吉井和哉がフィーチャーされる。

それが映画のラストで最もエモーショナルなCOUNTDOWN JAPAN FESの映像であろう。

武道館でのメカラ・ウロコ、紅白と充実した一年を過ごしたTHE YELLOW MONKEY。
そんな2016と2017年を繋ぐイベントがCOUNTDOWN JAPAN FESであった。

そこでそれまで絶好調であった吉井和哉の声に異変が表れる。
声が枯れてしまい、思うように声が出せない吉井和哉。やむを得ずステージを一度退き、しばらくの時間ステージを止めることを余儀なくさせられた。

激動の一年を過ごしたTHE YELLOW MONKEYが、最後にこんな試練を受けるのだ。
もしこれが脚本であったとしたら、こんなクライマックス、あまりに嘘のような展開に見えることだろう。しかし、これは事実であり、これこそがあの瞬間を生きたTHE YELLOW MONKEYの姿なのだ。

騙し騙しであったとしてもステージに再度上り懸命に歌う姿に胸を打たずにいられるだろうか。

ここの場面、淡々と状況を整理して、少しでも声を戻そうとする吉井和哉の姿をはじめ、置かれた状況で最善の道を探すメンバー、スタッフの姿が映る。
そのプロフェッショナルな姿勢に、本来の悔しさといった感情を乗り越えて今出来る最善を求める姿、そこにまた涙してしまう。









渋谷La.mama





先にも触れた通り、ドキュメンタリー映像の合間に、撮り下ろした渋谷La.mamaでの演奏シーンが挿入されている。

観客のいないライヴである。
「誰に向けて」を取り除いた時にどんな演奏になるのか、という監督の意向により撮影された映像である。

最初こそ戸惑いを見せていたメンバーであるが、途中、吉井和哉が客席に降り、演奏しているメンバーを見つめるシーンがある。

映画公開記念の特番で語っていたが、ここで何かが掴めたそうである。それこそが、ドキュメンタリー部分と呼応しているものではないか。

具体的にいうと、スタジオでのツアーリハーサルのシーン。吉井和哉が某知恵袋で調べた「バンドの音を良くするためには」という質問。その答えが「自分の演奏を3、他のメンバーの演奏を7くらいの割合でよく聴くこと」というものがあったそうだ。

ドキュメンタリー部分ではちょっと面白おかしくするシーンであるが、まさにそれがあの渋谷La.mamaでメンバーを見つめる吉井和哉の顔に宿ったのだ。
メンバーそれぞれが笑顔で向き合い、演奏するシーン、これこそが「バンドの音を良くするには」ということへの最適解ではないか。

その最高の顔でエンドロール、"Horizon"が流れ始めるというのは、僕はちょっとこれ以上素晴らしいラストシーンはないのではないかと思う。
"Horizon"については書き出すと1記事分になるので今回は割愛させてください。名曲。





先日感想も書いたが、少し前に「パンドラ」を見たこともあって、それとの対比をしてしまう。あの映画は最盛期であったバンドが長いツアーによって「壊れてゆくバンド」を克明に捉えた映像であった。

そして今回の「オトトキ」ではファンですら感じていた一抹の不安から始まり、これからの新たな最盛期に向かうメンバーが映される。
まさに"ALRIGHT"の歌詞にある《もう一度運命のタイマーを回して》ではないか。

もう一度言おう。本当に素晴らしいドキュメンタリーである。

演奏シーン含め、できるだけ劇場で見て欲しい。

音楽って、バンドって、面白い。



【感想】パンドラ ザ・イエロー・モンキーPUNCH DRUNKARD TOUR THE MOVIEを観た















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