コロナウイルスが猛威を奮っている。
正直、シャレにならない状況だ。ライヴやイベントは中止や延期になり、エンターテイメント業界は、手探りの日々を繰り返している。
中止になったとしても、せめてという気持ちで無観客の生配信をするミュージシャンも出てきた。
そして、岡野昭仁が出演するはずだった「TOKYO GUITAR JAMBOREE 2020」も、中止となってしまった。
延期ではなく、中止。
その現実が、あまりに重い。
なぜなら、ポルノグラフィティは今のところ活動は発表されていない。
表立った活動もあまりないし、とりわけ岡野昭仁はレギュラーはないので、たまに見せる
なので、久しぶりの表立った活動が「TOKYO GUITAR JAMBOREE 2020」だったのである。
それは、叶わないものとなってしまった。
ならばせめて、妄想だけでもさせて欲しい。
そんな気持ちで。
※と思って書いたのだが、こんな放送をするらしいので、書く必要なかったじゃん。
アーティストたちのギター弾き語りライブを約9時間にわたって届ける特別番組『J-WAVE HOLIDAY SPECIAL TOKYO GUITAR JAMBOREE 2020 ~ROPPONGI BASHO』が、J-WAVE(81.3FM)にて3月20日(金・祝)9時より放送される。
BARKSより
ライヴレポ①
最後にその姿を生で見たのは2019年9月8日。
東京ドームでその姿を見送ったのが最後だ。
ポルノグラフィティという存在の大きさに、受け取ったギフトは今も色褪せない、いや一生忘れられない、ファンとして胸を張れる誇らしい気持ちになれた夜だった。
ポルノグラフィティは、それからあまり表立った活動はない。オフと個人活動が主である。
そんな中、個人活動のひとつで岡野昭仁はイベント「TOKYO GUITAR JAMBOREE 2020」へと出演した。
豪華な出演者たちも素晴らしかったが、ライヴレポについて、今回は岡野昭仁だけに絞らせて欲しい。それだけ、想いが溢れてしまったのだ。
今、僕の手は震えている。
やはり、それだけライヴとは、僕の中で大きな存在なのだ。
現れた岡野昭仁が両国国技館の真ん中に立つ。
違う意味で両国国技館が似合う姿になっていたらどうしようと思っていたが、思いの外スタイルは戻っているようだ。
ライヴでは小鳥が囀ずると表れる姿、それに対して「わかってはいても、もっとキャーと言って欲しい」と彼は言っていた。
しかし、そんなこというまでもなく、割れんばかりの歓声だ。みんな、その姿を見たかったのだ。僕も負けじと、すでに泣けてきてしまう。
アコギを構える。
昭仁:こんばんは。ポルノグラフィティの岡野昭仁です。
と短く挨拶をして、頭を下げた。
短くとも、どんな時でも謙虚さを忘れない岡野昭仁らしい、誠実なオープニングだ。
息を一つ呑み、アコギが鳴らされる。
その一瞬が、永遠となった。
弦が震え、ピックアップがその振動を拾い、電気信号へ。シールドをつたい、DIを抜けて、PAへ。そこから僕らの前にそびえる巨大なスピーカーへと信号は流れ、僕らの鼓膜を震わせる。その振動は脳に行き着き、快楽に酔いしれる。
音は弾けて消えていく。けれど、そこで震えた心に残るものは消えることはない。
僕らの生まれてくる ずっとずっと前にはもう
アポロ11号は 月に行ったっていうのに
どこまでも伸びて続いていきそうな歌声、"アポロ"からそれは始まった。
ポルノグラフィティのファンのみならず、初めて見たであろう観客の心までも一気に掴んだ。これこそが、ヒット曲の強みだ。
様々な音色が混ざり合い、"アポロ"という楽曲を彩る。こうしてアコギ1本と岡野昭仁の声だけに削ぎ落とされた"アポロ"は、また別の魅力を放つ。
メロディと言葉、ポップスとして今も褪せることのない力強さだ。
岡野昭仁の伸びゆく声に引っ張られるように、会場の歓声と拍手は鳴り止まない。
昭仁:あらためまして!ポルノグラフィティの岡野昭仁です!今日はよろしくお願いします。
一言挨拶をして次の曲へ。
ジャッ、ジャジャッ、というカッティング音を鳴らしながら、辺りを見渡す岡野昭仁。360°観客がいるというのは、ポルノグラフィティでもあまりない、と思ったけど、よく考えたらセンターステージで歌えばほぼ同じか、ということに気づいた。
手拍子を味わいながら、岡野昭仁はあるフレーズを弾く。
ベースでなかったとしても、そのフレーズをひと度聴けば、身体は反応してしまう。
"メリッサ"
彼方此方から歓声が上がる。おそらく、ファンでない人も多く声を上げたように感じる。
最初のサビを唄い上げ、またしてもどこまでも果てしなく伸びていきそうな声が響く。受け止めるどころか、まさに胸を貫かれたように、その声は身体に打ち付けられる。
"メリッサ"は希望だ。その希望は足を止めてしまった心に触れ、羽根を与えてくれる。その羽根は辛い心の重荷を軽くしてくれる。"メリッサ"は、ポルノグラフィティの音楽とはそんな存在なのだ。
昭仁:今日は1人で弾き語り、ということなので、せっかくならと、今まで弾き語りでやったことないような曲もやってみようと思います。
鳴らされるコード感で、もしかしてと思う。
そして、唄い出した瞬間、会場には思わず動揺に近い声が漏れてしまうファンたち。
"今宵、月が見えずとも"
ポルノグラフィティにとって所謂「ロック」を感じさせるナンバーだが、こうして弾き語りで聴くと、また違った魅力を感じさせる。
曲や歌詞に表れているゴツゴツとした感触、それが弾き語りになることでより剥き出しになり、生々しい感情となる。
昭仁:コロナウイルスで、世界がこんな事態になってしまって。ニュースを見ていて、何が自分にできるんだろう、と考えました。でも、答えは出なくて。
だけど、それでも僕にできることがあるとしたら、唄うことだと思いました。そんな気持ちを込めて次の曲を聴いてもらいたいと思います。
ライヴレポ②
徐々に輪郭を形作るギター。
次第に露になる曲名に、「え?」という声が漏れる。
周りでもその声はたしかに響いている。
その輪郭をなぞった後、岡野昭仁は唄い出す。
雨が家を沈め 波が町ごとさらった 奪った
大地は揺れて裂けた 人はうろたえるだけの無力さよ
小さきこの存在
たしかにそれは、"∠RECEIVER"だった。
「UNFADED」ツアー、つまり比較的直近でやった曲、ではある。しかしいま最も必要なのは、この曲なのだ。
世界は僅かにブレながら揺れながら
混沌と混乱と共にあると知っている
そう、まさに未曾有の事態が、世界を包んでいる。
未来がどうなるか、誰も、何もわからない。
けれどそんな世の中になったとしても、そこにたしかに、音楽はある。決して色褪せることのない音楽が。
未知のウイルス、未知の未来、何が起こるのだろう、起こってしまうのだろう。その時、人はどうすればよいのか。その答えはたったひとつ。
僕たちがコントロールできることはほんの少し
ほとんどの出来事には関われないとしても
この星の裏側でも僕たちの足下でも
起こりうる出来事から逃げない 受信者(∠RECEIVER)でいたい
∠RECEIVERでいるしかない。
新藤晴一が書いたその歌詞は、決して生易しいものではない。なぜなら、いままさに現実に起きているのは、一人の人間で受け止めきれる代物ではないからだ。
∠RECEIVERとは受け止める人である。では、僕らは受け止めたものをどうすればいいだろう。逆説的にいえば、だからこそ僕らは音楽を聴くのだ。
昭仁:"∠RECEIVER"という曲を聴いて貰いました。
次に聴いてもらうのは僕らの、一応、一番新しい曲を聴いてもらおうと思います。これも弾き語りでやるのは初めてです。
"VS"
音数少ないギターに乗る、誠実な歌声。過去の自分と向き合うという歌詞が、より際立ったように思う。
Bメロに入ると、視界が徐々に開けていく。
そしてサビで、そこに空が見えた。それは新藤晴一が描いた歌詞の情景が僕らにも見えているからだろう。
東京ドーム公演「神vs神」。その本編ラストを飾った"VS"は、万感の想いで見届けた、感無量のラストだった。
"∠RECEIVER"があったことで、かつて憧れた少年、それは世界に立ち向かったロッカー、その姿にも重なる。
音楽が世界を変えるなんて、おこがましいのかもしれない。けれど、その音楽が自分と世界を向き合わせてくれた。
昭仁:"VS"を聴いてもらいました。
さて、せっかくなので次の曲はみんなに、手拍子と歌で参加してもらいたいと思います。
"アゲハ蝶"
ギターをやってる人ならわかると思うが、"アゲハ蝶"はコードチェンジが激しく、ただでさえブレス不足に詰め込まれた歌メロを1人で唄いながら弾くのはかなり大変な曲だ。
しかし岡野昭仁は、どこか余裕さえあるように演奏をしている。余裕というのは、楽をしているというわけではない。その余地があるだけ、その余地には表現力を入れることができる。
昭仁:両国!みんなで唄いましょう。
ファンだけではない会場に、様々な歌声が混じる。
その光景はROCK IN JAPAN FESなどでも圧巻の光景を生んだ。しかし、ひとつ違うことがある。ROCK IN JAPAN FESはいくつかのステージの中からポルノグラフィティを選んできた人々が集まっている。
それに対してこの手のイベントは、ひとつのステージに対して何組ものアーティストが登場する。なかには、自分の推しのために来ていて、それ以外は全く興味ないという人がいたっておかしくない。
それでも、両国国技館に響いた歌声は、会場全体がひとつになり、その壁を、天井を突き抜けてしまいそうなほど力強いものだった。
予想以上の歌声を聴いて驚いたのは、ファンたちだけではない。他ならぬ岡野昭仁自身が最も驚いているかのようだ。それが、思わず綻んでしまった顔に表れている。
昭仁:スゲー。すごい歌声です!でも君らならもっと行けるはず!
けれど、それでも許してくれないのもまた、このヴォーカリストなのである。
しかしながら、呼応するようにまたひとつギアが上がった。
歌声に、身体が震えている。
昭仁:ありがとうございます。本当に!素晴らしい歌声でした!最後の曲です!タオルを持ってる人は、みんなで回してください!ラスト1曲!"ハネウマライダー"!
"ハネウマライダー"
新藤晴一がいつも奏でるギターリフをひとつ鳴らした後、会場を彩るタオルたち。
色とりどりのタオルは、まさにここに集まった人々の多様性を表している。
昭仁:ずっと回さなくていいよ!
またサビでまた回してね!
Aメロに入る直前で教えてくれる岡野昭仁。ファン以外もしっかり見えている。
たとえファンじゃなくて、一気に曲の世界に引っ張り込まれる。それがポルノグラフィティの魅力であり、ポップスにおいて、これほど重要なことはない。
回される色とりどりのタオル。360°の視界に、それはどう映っただろう。
名残惜しい、いつまでも見ていたい、そんな想いで、最後の一音まで聴き届けた。
昭仁:ありがとうございました!ポルノグラフィティ!岡野昭仁でした!
そして岡野昭仁は東西南北それぞれに深いお辞儀をして、ステージを去った。鳴り止まない拍手を背中に背負って。
両国国技館はいうまでもなく相撲をする場所である。
相撲は娯楽でもあるが、神事でもある。
そんな相撲において「はっけよい」という言葉を行司がいうが、どんな意味かご存知だろうか。
これにはいくつか諸説がある。気を発するという意味で「発気」などの意味とか、「早く競え」が変化したなどだ。そして、そのひとつにこういう意味という説がある。
「八卦良い」という意味だ。
占いなどで「当たるも八卦当たらぬも八卦」という言葉があるが、その「八卦」である。「八卦(はっけ・はっか)」とは、易学の基本となる8つの象徴である。正直、この辺りからかなり入り混んできて、よくわかってきてないが、そういうものと思って欲しい。要するに「自然にある万物を表す」ものを示している。
そんな森羅万象を描いてきたのは、音楽も同じではないだろうか。
音楽に勝ち負けはないけれど、「残ってきた」その事実は音楽という業界においては、重要な要素である。続けていくこと、それこそが音楽で生きていくということにおいて、最も困難な壁だからだ。
そして、森羅万象が形作る「世界」は、「続いてきた」ことで"今"がある。
その中で音楽を奏でるという行為は、自然を奏でるということではないだろうか。
まるで自然を体現してるような、岡野昭仁の歌声、僕はそこに惹かれてしまったのではないか。
最後に。ひとつ、気づいたことがある。
セットリストは全て、新藤晴一が歌詞を手掛けた曲だったのだ。
ワンマンの弾き語りコーナーでは、自分の詞曲を唄うことが多いので、意外であった。もちろん、初期の一般的に知られるヒット曲は新藤晴一が書いているということもあるが、もしかしたら意図的だったのかもしれない。
新藤晴一の魂の入った歌詞があることで、そこに新藤晴一もステージを共にしている感覚となるのだ。
……こう書くと死んでしまった人みたいだな。
兎に角、岡野昭仁という男が見せたステージは、ソロでなく、まさにポルノグラフィティのヴォーカリストとして魅せたステージだったのだ。
逆に、だからこそポルノグラフィティとして見せるステージが、より一層待ち遠しくなってしまった。
それでも、ずっと思っていたことは、揺るぎないひとつの想いだ。
岡野昭仁、この人を超えるヴォーカリストは、他にはいない。
【セットリスト】
1. アポロ
2. メリッサ
3. 今宵、月が見えずとも
4. ∠RECEIVER
5. VS
6. アゲハ蝶
7. ハネウマライダー
※ここに書かれているものはすべて妄想です
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