2020年3月11日水曜日

【ライヴレポ】つま恋ロマンスポルノ'11 〜ポルノ丸〜(再掲+)








※この記事は昔やってたブログのライヴレポを当時のリアルな感情は残しつつ大幅に改変して掲載したものです。
※赤字は注釈です
※最後に、9年経った想いを書いておきます

TOP画はナタリーより引用






さて、つま恋レポ。

自分にとっては∠TARGET沖縄以来のポルノとなる。

「∠TARGET」ツアーのカウントダウン外れたショックは大きかった。しかも後で聞いたら何だかんだでポルノ関係の知り合いみんな※行ってやがった。
※当時はmixi全盛だった

今回は2日ともチケットを無事に確保出来て、開催のその日を心から待ちわびていた。

つま恋へは相棒である友人の車で。運転は全部任せて、自分は流す曲のプレイリストづくりしかしてない※という。やっぱ90年代のヒット曲は盛り上がる。
※この関係は今でも変わってない。むしろ「俺が運転してもいいけど、お前の車どうなってもいいんだな?」という謎の脅しをかけている

一度富士川のSAで仮眠休憩を取り、朝方に起きだして再出発と、ここで出発してから明らかに俺の買ったグッズのハットが見当たらない…
いきものがかりの"気まぐれロマンティック"が流れる中、必死に捜索するも行方不明に。これはあれだな、SAで落としたな。

orz

※当時はまだ「orz」が死語にはなっていなかった

ライヴのための意気込みだけでなんとか気を取り戻しつつ、つま恋へ到着。

とにかくこの日は暑かった。チケットを譲る予定があったため、相棒と別れて自分は大学の友人である近藤くんにチケットを渡すため待機、相棒は先にグッズ買うため先に会場へ。っていうか車の中めちゃくちゃ暑い。

無事に近藤くんと合流できて、共に会場へ。会場に着くと、人生初ライヴという男、近藤くんを盛大に放置プレイして相棒と再合流。後に判明するけど、近藤くんははかなり楽しんでくれたようだ。
※初めてライヴに来た近藤に対して乱暴すぎる

初日はKブロックで遠い、ということだったので、しばらくフ-ドエリアで待機することに。すでに生2杯※。暑いんだもん…
※真冬でもそれくらい呑んでるだろポンコツ

1時くらいになってから、会場内へ。おぉ、ステージまで遠いなぁ。しかもやっぱり日差しがかなり厳しい。

恒例の客イジリのキャラはボーダー・D・横島、通称BODY。今回も始まる前に「ヘン顔して」とか「タイタニックのポーズして」とかで会場を盛り上げてた。

そして、約1年ぶりのポルノグラフィティのライヴということで、ここら辺から緊張感もかなり高まっていく。

定刻を少し過ぎたところでアナウンスが入り、今回の震災の被害に遭った方々へ黙祷。

左右のスクリーンにはそれぞれ岡野昭仁と新藤晴一が映っていて、同じように黙祷。「御直り下さい」のアナウンスの後しばらくして爆音が轟き、花火があがる。

スクリーンに映像が流れ、今回の地震についてのメンバーのコメントが流れる。これがとてもメッセージ性があって、心に残る。

SEにのせメンバーとサポートメンバーがステージに登場、この為に創られたと思われる"ポルノ丸"歌が流れる。
場内も温まってきたところで(というか通り越して暑い)、いよいよスタート。


"君は100%"
何度聞いてもこのイントロのギターフレーズを聴く度に心が沸き立つ。震災によって心に澱となった積もっていた感情たちが、突き抜ける青空を進む船によって浄化された気がした。震災以降、初めて生で見たポルノグラフィティの姿に、もう感極まってしまう。

トーキング・モジュレーターのイントロが鳴り、"NaNaNa サマーガール"へ。
お祭り騒ぎしたい空にはこういう浮かれソングがピッタリ合う。ここでダンサーが登場して、バランスボールを使ったパフォーマンスを見事に演じていた。

ちょっとレトロ感のロマンス映画の音楽のような間奏から、ハートモチーフを持った女性ダンサーが現れ、ドラムが鳴り響く。久しぶりの"Sheep~song of teenage love soldier~ "。カップリングとは思えないくらいファンの反応も良くて、人気の高さ分かる。軽快なフレンチポップもまた青空がよく似合う。あの日止まってしまった心が、一歩を踏み出す主人公の心に重なる。

続けて"狼"へ。
「アゲハ蝶」のシングルを死ぬほど聴いていた人間にとって、感動もひとしおだ。炎の演出もあったり、派手なホーンの音も野外にピッタリだ。

ドラムのリズムに乗せ、岡野昭仁が挨拶。っていうか初日は「ワシらがポルノグラフィティじゃ!」なかった?2日目はここでちゃんと叫んでた。記憶が曖昧に。
※そう言われても

しっかり客を煽ってから、まさかの"ヒトリノ夜"。サビではこっち側にも歌わせたり、まだまだ序盤の猛攻は収まらない。岡野昭仁も早速左右の花道や、センターステージへ行って唄っていた。

そのまま"空想科学少年"へ。雨に打たれる主人公とは裏腹な空だけれど、それはそれで野外によく似合う。


ここでMC。曖昧な記憶なのでニュアンスは違うと思う。

「ポルノグラフィティでございます」と岡野昭仁が叫び、「こんな暑くなるとは思わんかった。みんな倒れないように気をつけて」と言う新藤晴一は、口に含んだお茶をロックに観客に向けて噴射させたりしながらも、「俺、ペース配分考えてなくてヤバいヤバい」みたいなことを言っていた。

2日目は台湾と上海での中継があったため、岡野昭仁がカンペ読みながら中国語でご挨拶。新藤晴一なぜか「I love マーボードーフ!チンジャオロース too!」と英語まじりの挨拶をしていた。
※向こうからしたら「スシ!テンプラ!フジヤーマ!」みたいな受け取り方をされるのだろうか


昭仁:ライヴも去年の年末以来、9ヶ月ぶり。その間シングル1枚しかリリースしていないということで、ポルノグラフィティ何やっとんのかという声もあったんですが、今日は元気なところを見せつけてやろうと思います!ではここで今年唯一リリースした曲を聞いてもらおうと思います

"EXIT"。ここまでアップテンポな曲が続いていたから、ここでギュッと帯を締め直すような切ないイントロが流れる。ライヴで聴くと、岡野昭仁のヴォーカルがいかに表現力を増してるかが分かる※。そして新藤晴一は例のマイモデル仕様のギター※。とても音が澄んでいて綺麗美しく、特にギターソロは今回の名演のひとうだろう。
※ここから毎年のように歌声が進化するとは思ってもなかった
※sagoの黒いテレキャスターシェイプのギター、最近見ないけどどうしたんだろう。くれないかなあれ


"ヴィンテージ"。ようやく聴けた。会場の歓声もまた一段とあがる。重ねてきた時間というテーマが、ここで演奏されることで、より一層深いボルドーの色を落とす。菱形を使った映像も印象的だった。

メンバー2人がテレキャスを構えて始まった"ROLL"。新藤晴一のトレモロを使った揺らぎのサウンドから、Cメロの岡野昭仁の力強い声へ繋がるかろこそ、あの「恐れてたんだ」という歌声から最後のサビへ繋がる展開の効果が高まる。


昭仁:ここ最近の活動というと、新曲を沢山創ってたんですよ。なので、ここで新曲を聞いてもらおうと思います。この曲は晴一が創った曲でどんな曲ですか?
晴一:元気一杯な曲です!
昭仁:今回はいつもプロデューサーをしてもらってる本間さんに監修にまわってもらって、色々な人とセッションしようということで。この曲は"煙"でも一緒にやったtasukuくんとやった曲です。この野外の青空に似合う盛り上がる曲になったと思います
※この辺りから色々なアレンジャーと組むスタイルは始まったのか

"マイモデル"。イントロのギターから既に印象的で、花火も勢いよく爆発し、初披露とは思えないほど、すぐに身体に馴染む曲だ。疾走感あるサビに、2番のAメロが突然裏打ちのギターの陽気な感じになったり、かなり凝ったアレンジが為されている。

昭仁:まだまだ新曲がありますよ。もう1曲新曲を聴いてもらおうと思います。この曲は僕が創った曲で、アレンジは僕が昔好きだったボガンボスというバンドのDr.kyOnさんにお願いしました。もう50歳を超えるような年齢なのに、スタジオでは本当に音楽が好きなんだって気持ちが伝わって来て、僕らもこうなりたいと思えました。この曲もこの天気の野外に似合うと思います。聞いてください

"グッバイサマー"。何よりメロディがとにかく気持ち良い。クラップが入ったり、ちょっと懐かしいようなジャジーなアレンジが入ったりと、"マイモデル"といいカップリングとは思えないくらいの盛り上がり。
夏を惜しむ歌詞は、まだ夏の残り香が強い9月の空に、そっと切なさを織り込んでいく。

「もっと近くで歌いたい」ということでPA卓の後ろのステージへ。初日はKブロックだったので、ここでやっと肉眼でメンバーが見れた気がする。2日目は前のブロックだったのでセンター来た時はとても近かった。

岡野昭仁がハーモニカを構え、新藤晴一はアコースティックギターを構える。何を演るんだ?と思っていると、ハーモニカとアコギの旋律から、岡野昭仁が唄い出す。

"元素L"。このアレンジはズルすぎる。自分でも、もちろん好きな曲だけど、何より相棒が大好きな曲なので、内心「良かったな」と思って曲終わりに言おうとしてたら、続けて"黄昏ロマンス"がきて全俺が泣くこととなった。

しかも、1番はアコースティックスタイルで演奏して、サビ終わりでバンドが入ってくるアレンジは、卑怯だ。もはや許せない。なんてことしてくれるんだ。
メインのトランペットのパートをNAOTOがヴァイオリンで弾いていて、とても良いアレンジだなと思う。許せない。ありがとう。

この2曲、新藤晴一がずっと歌を口ずさんでいたのが印象的だった。マイクに通す通さないに関わらずずっと嬉しそうに、満足そうに、唄いながらギター奏でていた。このライヴを待ち望んでいたのは、ポルノグラフィティ自身なのだ。

センターステージでもう1曲と"メリッサ"。岡野昭仁がアカペラに近い少ない音数のギターの中で唄い出す、新藤晴一はPRSのギターを使っていた。
ライヴを見ていると時折感じる、「今ここが世界の中心だ」という感覚、それがこの"メリッサ"にはあった。

ちなみにだがセンターステージ、"元素L"で相棒がやられ、"黄昏ロマンス"で僕がやられ、"メリッサ"で近藤くんがやられた。たった3曲でピンポイントに脳天を撃ち抜かれたのだ。怖い、ポルノグラフィティ。






儀式を告げるシーケンスが流れ出す。メインステージに2人が戻るために3輪バイクが登場し、「ワシらくらいになると戻るのにタダでは戻らんよ」と、それぞれ乗り込む(岡野昭仁は「背中お借りしまーす」とさりげなく言っていた)。バイクに乗りながらFUーFUタイム。途中で昭仁さんが何回か「ワシらイケてるー!?」※とかも煽っていた。
※「イケてるー!?」って聞くことが一番イケてないと思う

そしてFUーFUタイムを終えていよいよ"Century Lovers"。色とりどりのテープが飛ぶ。初日全く取れず、2日目は掴んだと思ったら相棒と同じテープを取ってた……

観客たちは待ってましたとばかりに飛び跳ねる。初日は確認出来なかったけど、2日目は岡野昭仁は「カメラそこか!」からのいつもの股間パフォをしたり、新藤晴一はカメラにひたすら寄っていくギターソロをしたり、お祭り気分は増していく。


昭仁:ここで新曲を。この曲はあらためてみんなの心と心がつながることの大切さを歌った曲です。"ワンモアタイム"


いよいよ"ワンモアタイム"をライヴ初披露。ラジオやTVなんかでかかってたのもあるだろうけど、既にかなりファンに浸透しているように思えた。最後の合唱もバッチリ決まっていた。

思い出話をひとつすると。カフェイン11で"ワンモアタイム"は相棒と一緒に車で聴くという稀有な体験をした。友人一同でお盆で休みの月曜日、激混みのディズニーランドへ行って遊び倒して帰ろうとしたら、駐車場が大渋滞していた。なかなか出れないと嘆いているうちに、カフェイン11が始まって、舞浜のオリエンタルランドのお膝元で、"ワンモアタイム"を聴いたのだ。

どんな曲かは発表されていなかったので、「ミディアムテンポな曲じゃない?」とか話していたら、新藤晴一が「デジタルロック」と言い出し、「マジか」となった。もちろん聴いてからも「マジか」となった。そんな思い出


震災を受けて書かれた、まさにヴォーカリストとしての魂の叫び。希望というものは、そう優しくない。日本全体が絶望に押し潰されそうになった時、その魂の叫びは、聴く者の心を真に揺さぶる唄となる。

流れはそのままに打ち込み音が流れ、野崎真助のハイハットカウントから"DON'T CALL ME CRAZY"へ。再び炎の特効(2日目は近かったので本当に熱かった)や野崎森男のデスボイスも決まり、会場をヒートアップさせていく。

続けて"A New Day"。サビの爆発力。
何よりも落ち込んでいた気持ちを、歌詞が盛り上げてくれる。身の回りの出来事は自分ではどうすることもできないが、自分自身は変えていける。そんなメッセージは世にたくさんある。しかしながら、「監督」というのは、内面の想いだけでなく、俯瞰した視点から自分を含めた物事を見よ、というメッセージにも取れる。

"Please say yes,yes,yes"へ。初日はイントロのリフが聞こえないと思ったら、新藤晴一、踊ってる。

岡野昭仁はセンターステージに接地されていたクレーンでまさかの空中散歩で、おまけに水まで撒き散らす。その時の「水♪水♪かけちゃって♪」とかが凄く耳に残って、終演後みんな口ずさんでた※。
※まぁまぁ水をかけてから「携帯とか濡れないように頑張って」という岡野昭仁は鬼だなと思った

ラストには後方に向けても水を噴射。初日は風の流れもあってかからず仕舞いだったけど、2日目は岡野昭仁が上を通るほどだったので、水を浴びることができた。


「行くよー!」という岡野昭仁がタオルを掲げ、今回はソロなしでそのまま"ハネウマライダー"へ。
水を浴びたためか、よりテンションの上がった客はタオルをもう夢中でブン回す。最後の方の舞い上がるタオルが綺麗だよね。後方にある鉄塔にいる照明スタッフまで一緒にタオルを回していたのに気づいて、プロの仕事は凄いなと思った。。

そのまま「JOPG・FM~」が流れ"ミュージック・アワー"へ。初日はここで、「あ、俺もう死ぬな」と思った。展開が鬼のようだ。ダンサーも勢揃いで、お祭り気分は最高潮に。というか新藤晴一はまた踊ってギターを放棄していた。

変な踊りもみんなバッチリ揃っていて、この一体感は何度体験しても恐ろしいほどだなと思う。この時、新藤晴一がチャリティに出した黄色のレスポールJr.を弾いていて、「あぁこれが新藤晴一がこのギターを弾くのは最後なんだな」と感慨にふけっていた。

そして本編もラスト1曲。

つま恋にはツースリーのリズムが鳴り響く。やっぱり、自分の人生の中でこれを上回る曲はないだろう。自分の人生の全てを変えた曲"アゲハ蝶"。もう身体の一部と言っても過言ではないほど聴いていても、それが流れた瞬間にグッときてしまう。

特に2日目はずっと一緒に唄っていたので(初日は唄ってがラララのことだと思ってた)、歌詞をあらためて一つひとつ噛みしめていた。

旅は人を変える、ならば人生という旅はどうだろう。"A New Day"で唄われたように、自分を変えるのは自分自身だ。
なぜなら、ある出来事によって心が動いたとしても、最後に本当に自分を動かすのは、他ならぬ自分の意志だからだ。

「想いをひとつにしたい」という気持ち(或いは願い)があったからこそ、最後は"アゲハ蝶"だったんだろう。響き渡った大合唱は、2011年9月10日、11日という日にしか聴けない、掛けがえのないものとなった。


アンコール

いつものようにメンバー紹介。
ここでも新藤晴一は「I love マーボードーフ!」、岡野昭仁も思い出したようにカンペを持ってきて、また中国語で同じ挨拶をする。
中継先からの応答はないので、本当に中継が流れていたのだろうかとさえ当時疑問だった。けど、後に海外ライヴやったりだったので、やったんだろう、きっと

2日目の紹介の時に、新藤晴一が「野外っていうのは天気も気にしなくちゃいけないし、晴れたら晴れたで暑いし。それにここまでシャトルバスがあったにしても来るの大変だったでしょ?。なのに、何でこんな楽しいんじゃろ?みんなマゾっ気があるよね。ちょっと辛いほうが良いのとか。ちょっと痛いほうが良いのとか」って言葉が面白かった。
※水かけられて喜んでたファンは立派なマゾである

"ネガポジ"へ。お祭り気分はまだ終わらない。岡野昭仁はセンターステージで、とにかく煽る煽る。中盤ではソロ回し。2日目の新藤晴一はソロで往年の背面弾きまでやってのける。難しいなぁという感じなのか、曲が終わってメインステージに戻る際、岡野昭仁に「晴一それ出来るんか?」というツッコミに首を傾げた後ろ姿で答えてた。

昭仁:暑い中ここまでやってきましたが、さらにみんなを追い込むぞ!ジ、レンマーー!

"ジレンマ"へ。みんな待ってました!とばかりの壊れっぷり、だけれどライヴが終わってしまうという寂しさもある、やっぱりそんな曲だ。まさに、問答無用。本当にみんな暑い中、頑張ってる。見る方も演る方も。でも同時にどうしようもなく、楽しんでる。

さっき"ネガポジ"でソロ回しをやってしまったので、"ジレンマ"のソロ回しはどうすんだろ?と思っていたら、「またソロ回ししちゃいます!」という言葉から、またしてもソロ回しへ。宗本康兵はショルダー型のキーボードを使ったら岡野昭仁から「今どきショルキーって!」とツッコまれる。NAOTOブリッジ2回目である。首は大丈夫だろうか。

それなのに、なんとソロ回し2周目へ突入。しかも今度はもっと早いテンポになり、nang-changは「地味ー」とツッコまれ、宗本康兵はまた「ショルキーって!」とツッコまれていた。

最後には花火が打ちあがり、つま恋の夏が終わった。


……わけではなかった。


ダンサーの紹介とサポートメンバーとの挨拶が終わり、ステージ上はメンバー2人だけに。いつもなら、2人はここで丁寧なお辞儀をして終わるはずであった。しかし、マイクスタンドが置かれ、ギターがローディーより手渡され、夏がまだ終わらないことを予感させる。ここで岡野昭仁のMC。

昭仁:あの震災から半年が経ちました。半年というのは長いようだけど、まだ元通りにはなってなくて。この半年の間様々なことを学びました。現実は嬉しいことや、楽しいことばかりじゃなくて、辛いことや苦しいこともあって。今ある『幸せ』を確かめ合って、こぼれ落ちんように大切に守っていかないといけんと思う。こんな時、だからこそ僕らはこの曲をやろうと思います。"∠RECEIVER"


これほどライヴ中、気持ちが抑えられなかったことはない。

アコギとエレキのみの、本当にシンプルな構成、スクリーンには歌詞が映される。それは岡野昭仁の歌声を、新藤晴一が紡いだ言葉を、何よりも届けようというポルノグラフィティとしての意志なのだ。

映し出された歌詞を一言一言、噛み締めるたびに溢れる想い。

間奏に入ったときに新藤晴一は、


晴一:誰も半年前に戻りたいとは思っていないわけで。みんなここまで必死になって、やっと辿り着いたって気持ちなはずだと思うのね。波は色々なものを奪っていったけど、俺らを未来とか明日へ運んでくれる、そんな波もあると思う。そんな波をみんなで創れたらなと思うのね。だから、狭いとは思うけどみんな座ってくれる?俺がカウントして歌が入るから、それと同時に前から波をつくってください。まだ中には、ここに立ち止っていたいって思う人もおるんだろうけど、そんな人は、なんだろうなぁ、3時間やったライヴの最後にひとつノビでもしてみようかとか、ワシらの12周年を祝う万歳でもとかでもいいので、そうしてください

新藤晴一のカウントからウェーブが起こった。それと最後のサビが重なったあの瞬間、あの夏は永遠となったのだ。

その、最後のフレーズ。

「起こりうる出来事から 逃げない ∠RECEIVER でいたい」

で完全にやられてしまった。

メンバーにとってここで"∠RECEIVER"をやるというのはかなりの葛藤もあったはずで。こういった内容の歌詞を演奏することは来るファンのことを思うと、そうそう容易な判断でできるものじゃないと思う。

だけど、メンバーはあえて、このライヴの最後のこのタイミングで、このアレンジを持ってきた。それこそ、それに対する批判さえ受け入れるというまでの全てを受け入れる覚悟で。それが全部このフレーズに込められている。こんな時"だからこそ"なのだ。だから、岡野昭仁が渾身の力を込めて叫んだ「逃げない」というフレーズが突き刺さるものだった。

今回の震災に対して、親父が福島に単身赴任に行ってたりするから、自分とは無関係とかは思ってなかった。それでも日が経つにつれて、どこか自分事からは遠くなっていった気がするし、実際そう考えてた。

だからこそ、このフレーズが歌われた瞬間、これ以上ないくらい、心揺さぶられた。

やっぱり2人は前を向いていた。そんな2人に問われた気がしたのだ。

地震後にいくつか他のアーティストのライヴにも行って、、「来れて良かった」とか「みんなに会えて嬉しい」という言葉は聞いてきたけど、ポルノグラフィティから聞いたそれは、自分には特別なものだ。

そして、最後にはクリスマス&カウントダウン・ライヴの発表。
まだ未来があって、それが嬉しくて、涙が止まらなかった。また会えるという喜びを噛みしめて。

初日終了後は1人ぼっち状態の近藤くんを迎えに。感想を聴くと、とても楽しんでくれてよかった。

2日目は<リンク先の男>※のマイミク※と合流したり。

※相棒の当時の呼び名(懐かしいのでここだけ残しておく)
※マイミクという死語


ライヴ後に会場を離れるのは寂しいけれど、社会人としてそうは言ってられない。
※この時まだ社会人2年目のピヨピヨ

車に戻った後、帰りのSAでシラス丼を賭けた、相棒とのセットリスト予想対決の結果を確認。言うまでもないが多く当てたほうが勝ちである。

結果、どっちも当てた曲数が13曲(といっても定番曲ばかり)というどっちつかずな結果。結局、SAでは各々食券購入。企画倒れで、自分たちが予想したところで、土台無理で平気で予想と妄想を超えてくるのがポルノグラフィティなのだ。
※これ以降、やらなくなった

といった2日間が終わった。

本当にポルノファンというのは、打ち解けるのが早い。新しく知り合ったポルノファンもそうだし、ホテルのエレベーターたまたま一緒になった女の子ともすぐに盛り上がれるってのは凄いよね。

今年はまだまだライヴもあることだし、また楽しい時間を過ごそう。

再掲はここまで。


ここからは2020年3月11日を生きる僕の想いを、最後に書かせてもらいたい。

今回、改めて見返すと、本編はお祭り騒ぎという印象が強いけれど、とても前向きな曲が多いことに気づいた。

その「前向き」を描くとき、岡野昭仁と新藤晴一はまた違った目線を持っている。その違いがポルノグラフィティの魅力であり、様々な人の心を打つのだろう。


人生には、それまでの人生を決定的に変えてしまう瞬間がある。

それぞれの人生の節目、そして大きな社会的な出来事。

僕らはもう2011年3月11日午後2時46分より前の世界には戻ることはできない。決定的に世界が変わってしまった前の世界には。


人は、時間に抗いたくて音楽を聴くのかもしれない。
過ぎ去ってしまった過去へ、刻一刻とすぎてしまう今へ、やがて訪れるはずの未来へ。


ワンモアタイム──もう一度


同じ演奏をすることはできない。翌日に同じ内容でライヴをしたとしても、全く同じ演奏などあり得ない。

けれど、変わらぬ想いを唄うことはできる。その瞬間にしか伝えられない想いが、そこにある限り。


辛い現実に為す術もないまま、人はうろたえるだけの無力な存在なのだろうか。

僕は違うと思う。

決してまだ「乗り越えた」とは言えないほど、あの日の爪跡は残っている。

それでも、それを"受け止め"た僕らに、未来はやってくる。それが決して受け入れられないほど重い現実だっととしても。

ならば、人はまた歩き出すことができるのではないだろうか。


こぼれた涙を拾って
未来の種へと注いで
あなたと花が咲くのを待とう どんな色だろう?


では、その色とは?


何度も飽きもせず色とりどりの君の未来を描け


それは、自分で選べばいい。
一人ひとりが主演であり、監督総指揮なのだから。


人はなぜライヴに行くのだろう。

それは、確かめたいからだ。音源として永遠にパッケージングされた音楽が、今の自分はどう受けとるのか、そしてミュージシャンが、どんな想いでそれを鳴らすのか。

それが、ポルノグラフィティが20周年イヤーのツアー「UNFADED」で最後に"∠RECEIVER"を選択した意味なのだ。

流れる時の中で、変わらないものと、変わっていくもの。
音楽は過去も今も、未来さえ同時に描くことができる。

それがLIVEという場所なのだ。

だからこそ、2020年3月11日という今。

9年前の追悼さえままならないほど、この星の裏側も、僕たちの足下も、混乱を極めている。

ライヴという空間さえ、見えない脅威によって、自粛をしなければならない状況が、出口が見えないまま続いている。この閉塞感は、あの時の計画停電で、街が光を失った瞬間にどこか重なる。


いくつもの感動するはずだった瞬間が潰えることとなった。

しかしながら、それでもミュージシャンたちは、まだ諦めていない。

きっと、悲しみと苦しみの先にまた、僕らに音楽を届けてくれる。

それまで、あの空間を共有できなかったとしても、音楽はいつでも宙を舞っている。孤独の隣で待っていてくれる。

ミュージシャンは闘い続けるだろう。

またあの幸せな場所を取り戻すために、あの幸せな場所が、なくならないように。

ワンモアタイム──もう一度、もう一度と祈りながら。



未曾有の事態に、いつまでも∠RECEIVER(受信者)でいるために

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