にしなのツアー「クランベリージャムをかけて」のセミファイナルの記録を残しておきたい。
春にやった「1999」のツアーも行ったりしていたのだけど、レポを書きたいと思いながら色々重なってしまって書けていなかった。
と言いながら「書かなくていいから何も考えず存分に楽しもう」というスタンスで参戦していたので、所々記憶が薄いのはご容赦願いたい。
ほら、映像収録もしたらしいから……
クランベリージャムをかけて
日本で狂気的なレベルで好きなミュージシャン・バンドが何組かいて、にしなは間違いなくその一人に入る。
なきごととかもそうだけど、ほぼ一回り歳下なのに、存分に心の琴線に触れてくる。
本当に、音楽とは恐ろしい。
ということで、そんなにしなが2023年に行ったツアー「クランベリージャムをかけて」のセミファイナル、Zepp
DiverCity公演初日を記録しておきたい。
僕は整理番号200番台だったんだけど、仕事終わりで行く+6時開場だったので到底間に合わず、1000番台くらいの時に入った。
開き直ってビールを呑んで、ちゃんとトイレにも行ったけど、前方エリア後方の、なかなかステージを見渡せる良いポジションに行くことができた。
場内にはツアータイトルでもある新曲"クランベリージャムをかけて"を鉄琴で演奏した短いアレンジがずっと流れていた。
開演が10分くらい押したのもあって、軽くゲシュタルト崩壊しかけた。音にもゲシュタルト崩壊ってあるんだ。
暗転して開演。
ステージに、にしなが現れる。
ハケを持ってステージのセンターやや下手(しもて)に設置された白いドアに、赤いペンキで文字を書いていく。
With
cran
berry
jam
ツアータイトルであり、グッズのTシャツのデザインの雰囲気を想像してもらいたい。
なんだけど、僕は去年から今年1月にかけてポルノグラフィティが行ったアルバムツアーで、同じようにステージ下手に扉が設置されていたのを思ってしまって、動揺していた。ビックリなシンクロだよ。
書いている間に、バンドメンバーも板付き、そのステージが始まった。
1. "ランデブー"
たまたまライヴ前に会社出る時に頭に流れていたのがこの曲だったので、イントロで驚いた。
にしなはステージを漂うように左右へ行ったり、寝そべってみたり、とても自由で楽しい。
自分にとってライヴという空間それこそが現実逃避の最たる手段だし、ちょっと久しぶりのライヴともあって、一気にライヴに引きずり込んでくれた。
2. 東京マーブル
夏の夜に聴くこの曲は最高だ。
ちょっとだけダウナーだけど、芯がしっかり通るこの感じ、気持ちいぃぃ。
にしなが撃つシャボン玉銃から出るシャボン玉が、その幻想を深めてくれる。
今回はステージ上の小道具が色々と面白い。
3. 真白
この曲のロングトーンを活かしたギターすごく好きなんですよね
それに対するアコギのカッティングが心地好くて、ギターって本当良い楽器だな。
もちろん他の演奏も凄くて、このアンサンブルの喜びがライヴなんだよな。
曲自体のアダルトな雰囲気独特の冷めた熱さも相まって、もうステージから目が離せない。
4. 夜間飛行
この曲って、日増しに好きになっていく気がする。
ちなみにスタート地点から「これスッゲー好き、最高」ってところにいるという前提。
決して甘いだけではない曲だ。
けれど、それぞれがそれぞれの孤独を持ち寄ってできるライヴという空間が甘酢っぱさに余韻をくれる。だからタイトルのクランベリーとも合っているなと。
ライヴってやっぱり良いな。
短めのMC。
セミファイナルで、撮影も入っているので盛り上がっていこうと沸き立てる。
5. 夜になって
イントロが流れ、ステージの左右が赤と青に染まる。その中心は3つほど紫の照明が、シャボン玉を漂わせるにしなを照らしている。
赤と青は言うまでもなく遺伝子のメタファで、曲そのもののテーマと直結している。
この後のMCの話になってしまうけど、声出しができるということで掛け合いをしたんだけど、その中で男子、女子に分けたコール&レスポンスがあった。
最後の方で間違えたりしたりも出てきたんだけど、すぐに「まぁそういうの(男女の決めつけ)はいけないよね」と自然に言っていたりしたけど、こういう感性って本当に大切だと思う。
Cメロ後の間奏で明滅するストロボライトの演出がとても印象的だった。
6. FRIDAY KIDS CHINA TOWN
個人的にはテンションぶち上がる曲なんだけど、意外と観客側がみんな大人しめ(?)な雰囲気だった。
もちろんそれぞれの楽しみ方があるからだけど、東京ってこういう楽しみ方の人多いよなって、土地柄の楽しみでもある。
この曲を新曲として初めて聴いた時、かなりビックリして。
色々なタイプの曲があるシンガーソングライターではあると思ってはいたけど、こんな引き出しもあるのかと。
歌詞の語感のセンスといい、この曲でまた更に磨きがかかった印象である。こういうものを飄々と出してくるミュージシャンはいい意味で怖い。
7. U+
にしなの中でというより、オールタイムベストとしても入れたいほど好きである。
僕は間違いなくこの曲で取り返しのつかないくらい好きになった。
今回、声出し解禁になったのもあって1番と最後のサビはほとんど観客に委ねられた。2番も半分くらい歌ってたかな。
春に行ったフェスでも声出し解禁の嬉しさを痛感したけど、こうしてコロナで最初にやり玉に上がったライヴハウスに響く声は、ちょっと泣きそうなくらい美しかった。
それと、僕この曲のCメロはオールタイムでトップ3に入れたいくらい好きです。
メロディも歌詞も歌声も、完璧に自分の狭いストライクゾーンをえぐってくる。
8. 透明な黒と鉄分のある赤
ライヴの壊れポイント。
にしなはギターを鳴らしながら余韻たっぷりに歌う。
この曲は照明がもう一人の主役だと思っていて、視覚的にもとても楽しめる曲。
曲中でキメのポイントに合わせて変わる照明が気持ちいい。
もう堂々たる鉄板を感じさせる曲になってる。
MC
声出しが解禁ということで、コール&レスポンスのお時間。
ツアーでは各地の名物でやっていたらしいけど、東京ということで
「とう」「きょう」
みたいな感じで観客に後半を叫ばせる感じ。
客席からの提案も取り入れつつ。
「ひよ」「こ」
「東京」「ばなな」
「東京ばな」「な」
「東京ば」「なな」
なんて感じで楽しんだ。自分は東京出身だからひよこも東京ばななも食べたことがない。
※ひよことか色々諸説あるので喧嘩しないように
そのままメンバー紹介。
メンバーも同じように、と思いきや東京のものが少ないということで、日本の名物に。
範囲広くなりすぎてバンドメンバー、観客全員が困惑してた。
望月 敬史(Dr.) :「」「」
※すみません「自分だったらなんて言うんだろう?」とか考えていたら完全に失念。
欠片でも思い出せたらって思ったけど、日本の名物って範囲広すぎんだろ。
もっちーさんごめんね、誰か教えて。
Tomi(Ba.):「おんせ」「ん」
大樋 祐大(Key):「らー」「めん」
※にしな「『だー』『つ』って聞こえて何かと思った」
真田 徹(Gt.)「ふじ」「さん」
真田徹が前日誕生日だったということで全員でおめでとうして、誕生日プレゼントがその場で渡された。ステージの後方にこっそり掛けられていたTシャツ。
にしなワンマンツアー
— 真田 徹 (@tetsu_JOE) July 26, 2023
"クランベリージャムをかけて"
東京初日でした🗼
にしなちゃんと俺は誕生日が同じ7/25なんだけど、会場のみんなに祝っていただいて忘れられない誕生日になった。翌日だけど、そんなことは良い!
にしなちゃんがファイヤーバードTくれた🎸#にしな #クランベリージャムをかけて pic.twitter.com/WeietmBHDB
ちなみに、にしなも同じく7月25日が誕生日なので「徹さんに何倍にもして返してもらう」
みたいな感じでねだってた。
あと年齢は「数えないことにした」とのこと。
MCから曲に移ろうとするが「水が喉につっかえたから休んでて」と、一旦仕切り直し。
落ち着いたあと腰掛けて、あのイントロのフレーズを爪弾く。
9. 春一番
夏本番という感じで連日暑いのだけど、ここだけはアコースティックで爽やかな春風がステージを吹き抜けた。
それでいてサビの切実な叫びにも似た歌声は、爽やかだけでない現実を感じさせる。
だけど、自分くらいおっさんになると、もうそれすら爽やかな青春だよと悲しくなる。
でも青春だけでなく、色んな出会いと別れに重ねられる名曲だと思う。
10. centi
モラトリアムの曲。
苦しくなるような夢さえ見つけられずに
って表現は本当に名フレーズだと思う。
この曲を聴いた時に感じるセンチメンタルは、ちょっと独特でにしなの音楽でしか得られないものだと思う。
11. 青藍遊泳
今回のハイライトの一つ。
ライヴで聴くこの曲は、自分の身体の感覚がなくなるというか、完全に「もってかれる」感覚。それくらい引きずり込まれる。
“春一番”〜”centi”と続けて聴くと時間軸が推移していくみたいで、また新しい物語性が生まれたと思う。
会場の空気そのものが世界で、これもライヴでないと味わえない感覚だ。
MCで「あと何曲かで最後」と伝えられる。早すぎる、まだ序盤であって欲しい。
12. スローモーション
イントロのギター最高だよね。
それにしてもカジノを弾く姿、良いなぁ。
「たた、してくれた手順で傷つけてあげる」とか「無機質な孤独、Em7」とか好きなフレーズがたくさんある。
その中でもサビの「我愛イ尓」って曲だけ聴いてる時は気づけなくて、歌詞見て驚いた。
“FRIDAY KIDS CHINA
TOWN"とかもそうだけど、結構歌詞を見るとびっくりすること多い。
なので、歌詞見たことないって方は、是非歌詞を見ながら聴いてみて欲しい。
13. ヘビースモーク
曲始めにキーボードとギターの掛け合いが追加されていた。
そこからイントロが鳴った瞬間、会場全体の空気がギュッと引き締まるような印象を受けた。
たぶんみんな「来た」と身構えたのだと思う。
そういう人も多いと思うけど、自分がにしなを知ったのは、やっぱりこの曲で思い入れが深い。ちなみにそれから色々聴いて”U+”を聴いて「この子は天才や!」と思って今に至る。
消えてしまった煙に薫りの余韻が残るみたいに、鳴っては消えていく一つひとつの音が、僕らに今この瞬間を記憶に繋いでくれる。瞳に焼きついた思い出とともに。
14. 1999
微妙に今回やらないかと思っていたので、流れた瞬間に「ひゃあっ」って声出そうになった。
1999年という時代をこういう視点で1998年生まれが表現したことに、どれだけ驚かされたことよ。
それでいてサウンドはノスタルジックで、こういう曲とにしなの歌声って本当に相性完璧だな。
これも「Cメロ最高」部門の最高ランク。
いつかCメロ最高を語り倒すだけの記事書きたい。
全体的にはスライドギターがとても印象的で、アウトロで足されたアレンジとか、もう失禁しそうになった。
あと、ステージ上のぬいぐるみをいじったりが、なんか凄く可愛かった。
本編ラストは、ツアータイトルでもある曲。
ツアータイトルが先に決まっていて、それに合わせてライヴで盛り上げる曲に仕上げたとのこと。
15. クランベリージャムをかけて
飛び交う風船、サイケデリックで攻めた楽曲、会場はもうカオスの坩堝だ。
全ての感情がただ楽しいという歓びにねじ伏せられていく。
ライヴという空間は音楽が全てを支配している。
誰も逆らうことができないからこそ、音楽は人智を超えた感動を生むのだと、そう思って仕方ない。
アンコール
至福の本編を終えて物語はアンコールへ、
尻尾を振ったりして楽しみましょうの前振りから、もちろんこの曲へ。
EN-1. ケダモノのフレンズ
アンコールってこうあって欲しいってくらい、ただ楽しいひと時。
実は"クランベリージャムをかけて"の時に会場で舞ってた風船をひとつ手にしていたんだけど、アンコールでリリースしようとしたら、思いの外みんなそんな空気じゃなかったので、手に持ったまま楽しんだ。
自分はライヴを見ながら色々とメッセージとか意図を汲み取ったりしたいと思いがちなんだけど、アンコールはなんかそこから開放されて、純粋に楽しめる。幸せだけを噛みしめる。
ラスト1曲。
撮影していいよ、という代わりにその分盛り上がってという交換条件。
EN-2. アイニコイ
そんな前振りなんて意味もないくらい、ラストにこれが来て盛り上がらない訳がない。
一応自分スマホは出したけど、自分の目に焼き付けることを優先していたら、残った映像はかなりブレブレだった。
短い曲だけに名残惜しさも強いんだけど、その分、次のライヴが待ち遠しくなる。
(と思ったタイミングでファイナルで新しいツアー発表はズルすぎる)
スッゲー楽しかったなぁって、ステージメンバーを見送っていたら、最後の最後にとんでもないラストが待っていた。
終演後の場内に、あの曲が流れ始めたのだ。
終幕のジャム
THE YELLOW MONKEY "JAM"
やられた。
本当にやられた。
僕は常々「どんでん返しと謳わずにどんでん返しを味あわせて欲しい」と言ってるんだけど、まさにその最上級がきた。
これがオープニングの、開場中のSEで流れてイたなら「あージャム繋がりね」って思えたの。
それが、最後にこうして流すとなると話が違う。
確信を持って"JAM"を選んだということだ。
"JAM"という曲では世界と自分を対比し、起こった悲劇をどう受け止めたかを歌っている。
思えばにしなが描いてきた世紀末的な世界観は、まさにその鏡写しともいえる。
ノストラダムスの大予言が1999年に世界の破滅を予言したとしても、こうして世界は今も変わらずに回り続けている。
自分は世界にとって大したことない存在だとしても、世界は自分の全てではない。
“JAM”については最後のフレーズがよく揶揄されるけれど、僕は決してそう思わないということは、別の記事で触れているのでそちらを参照いただきたい。最後にリンク貼ります。
“JAM”においてのジャムという存在は、
キラキラと輝く大地で 君と抱き合いたいこの世界に真っ赤なジャムを塗って食べようとする奴がいても
〜THE YELLOW MONKEY”JAM"
という表現で用いられる。
それに対して。
クランベリージャムジャム
逃げ出して
外は悪夢の続き
敵も味方もわかんない???
そうなりゃみんな纏め踊るだけさ
僕にとって、にしながライヴで紡いでいたメッセージが、そのまま”JAM”へのアンサーに聞こえた。
世代間闘争みたいなのは嫌いなのでZ世代って言葉はあまり使いたくないけれど、今の若い子たちは昔よりもっと世界をフラットに見ている。比較ではなく、どこまでも自然に世界と自分を見つめている。
どちらが正しいとかそういうことではなくて、いずれも同じ本質を捉えている。
忘れてはいけないことは、自分にとって大切なものを見失いこと。
僕らはコロナ禍という未曾有の事態と向き合ってきた。
大事なものを想ってきたからこそ、僕らはこうしてまたライヴハウスで、声を出して喜びを噛み締めた。
変わっていく世界で変わらない音楽という存在が、90年代と今を繋いでいる。
ゴチャゴチャと書いてきたけど、その実はつまり「音楽って最高だな」ってことに全部集約されていて、こうして若い世代が”JAM”を受け止めていることが、それがすごく希望だなって思えて嬉しかったのだ。
同時にそういう視点を持っていたにしなを好きになったことが、自分にとってすごく必然に思えた。本当に凄い子だと思う。
これからもにしなの躍進から目が離せない。
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