2019年12月2日月曜日

【ライヴレポ】なきごと「夜のつくり方」 Release Tour 2019 @ 新代田FEVER










それぞれの夜のつくり方。


ハルカトミユキのツアーファイナルを見届けた翌日、僕はなきごとのツアーファイナルを新代田FEVERで見届けた。

大好きで大切なミュージシャンのライヴ、しかもどちらもツアーファイナルを見届けられる幸せ。

ひとつだけ懸念があるのは、2つ一気に見たことでどちらも受け止めきらず中途半端になってしまうという恐れだった。それはポンコツでキャパの少ない僕の頭が100%悪いだけである。

見終わった今、それは杞憂に終わり、どちらも生きてて良かったと思えるほどの幸せに満ちたライヴを体感することができた。消化不良を起こしたのは昼に食べた油淋鶏定食だけである(自分がオッサンになったことを忘れて8個くらい唐揚げ乗った奴を食べてしまった)

兎も角。本当に素晴らしいライヴだった。

僕は日本で誰よりなきごとを長々語り倒す非公式、非公認ブログにしてやると意気込んでいるので、先日のハルカトミユキの熱に負けないレポを書こう。



【ライヴレポ】なきごと「夜のつくり方」
Release Tour 2019 @ 新代田FEVER








ツアーファイナルのゲストはSAKANAMON
名前は聞いたことはあるが、実際見るのは初めてである。

そんな人間なので詳しいことはファンの方に譲りたい。
すみません、本当なら書くべきなのだけど、ハルカトミユキのライヴレポ1万字以上書いて余裕ないという超個人的な事情です。


所感を書いておくと、とても面白いスリーピースバンドだった。

対バンであることをちゃんと意識して「MCはいつもこんな調子です」「ここまで見て掴み所がないバンドだと思ってるでしょう? それが強みであり、弱みでもあります」など自虐をしながらも、演奏は巧いし、初めて聴いてもしっかりノレる曲が多い。

初めての人が多いなかで、自身でも「鬼怖いというたけの曲です」というわかりやすい"鬼"だったり、なきごとの"メトロポリタン"を「逆輸入※」してワンフレーズ唄ったりしてしっかり盛り上げた。
※理由についてはなきごとのレポで

特に最後に演奏された"箱人間"は白眉だった。ここで唄われる「箱」は日々の中にあるものだけど、こうして聴くとライヴハウスという箱にも通じるものがあるなと思えて。それに「日々を疲れよう」というフレーズが、なきごとへのバトルタッチとして最高だなと思った。

セットチェンジを経て、いよいよなきごとである。



前置き




先に少し前置きを。ライヴレポだけ読みたいという人は次の小見出しまで飛ばして欲しい。


なきごとのライヴを見るのは2回目。前回見たのは約4ヶ月前、7月の渋谷eggmanでのosageとのツーマンだった。「nakigao」の3曲に打ちのめされ、なんとしても生で見たいと思い行ったライヴ。

その時点でデモ版を除いて(売り切れて買えなかった)音源としてリリースされている3曲のみしかわからないので、ほとんどの曲が知らない曲として聴くことになった。

後にリリースされるミニアルバム「夜のつくり方」に収録された曲もここで初めて聴くことになった。たしか、この時に新機材が導入され"ユーモラル討論会"が初披露されたのである。

そんな状態で見たライヴ。次々演奏される新曲たちに、未来や可能性が満ち溢れていて、本当に良いアーティストと出逢えたと心の底から思えた。




2ヶ月後に「夜のつくり方」がリリースされ、どうしようもないほど繰り返し聴いていた。今年リリースされた中では、僕はもうなきごとのCDとドレスコーズの「ジャズ」があれば生きていけるとさえ思えた(ポルノグラフィティは僕にとって衣食住と同じ階層にいるので比較は不可能である)。

たった6曲(+1曲)のミニアルバム。その中に詰め込まれた底なしの魅力を持った楽曲たち。歌詞とギターが好きな自分にとって、こんなご褒美のような音楽があっていいのだろうか。

そんな傑作「夜のつくり方」を引っ提げて行われたツアーファイナルが、新代田FEVERで行われたのである。
意気込んでチケットを取ったので整理番号は良かったのだけど、なるべく熱量の高い前で見たい気持ちと、PA辺りで良い音で聴きたいという気持ちが葛藤し、結局昼の中華の消化不良もあったのでPAの辺りから見ていた。

ということで、ようやく本編に入ろう。

といってもライヴレポとは名ばかりで、このブログ特有の、本編よりもそれを見て感じた1人の音楽好きの感情の羅列になるので、ライヴの中身をちゃんと知りたいという人はプロのライターさんが書いたちゃんとしたレポを読んで欲しい。



ライヴレポ(本編)





ピアノのSEが流れ、サポートメンバーに続き、水上えみりと岡田安未が登場する。中央に全員が集まり向かい合い、ひとつ気合いを入れ、ステージは始まった。


1. 合鍵
2. 忘却炉
3. ユーモラル討論会


アルバムのオープニングも飾る"合鍵"のリズムが刻まれ、そこにギターとベースが重ねられる。良い音で聴きたいとPA卓のところにいたにしても、思わず「うわっ」と声が出てしまうほど音が良い。ライヴハウスって結構場所によったり、アーティストによってはバランスがかなり偏ることがあるのだけど、全くそんなことがない。

かといってそれは「CDのように美しい音」とのまた違う。ドラムもベースもギターも、個々で見ればかなり主張が強い。そのはずなのに、それが全て調和し、ひとつの波となって届く、これがバンドなのだ。たとえベースの山崎英明とドラム奥村大爆発がサポートメンバーであったとしても、ステージにおいてはなきごとの音楽を届けるための4人のバンドなのだ。

そんな演奏に、もう酔いしれてしまいそうになっていた。
それでも、水上えみりが唄い出した瞬間、またしても「うわっ」と声が零れてしまったのだ。

なきごとの音楽の魅力は、演奏はとてもタイトでハードなのに、それがしっかりポップソングとしても成り立っているというバランスにあると思う。

それを成り立たせているのが、強烈なバンドにも負けない水上えみりの歌声なのだ。


"合鍵"における「生ぬるい日々」。それは曲のテーマが不倫相手との夜を越え、1人の朝をまた迎えてしまった感情だろう。「少しずつ慣れてきたなぁ」ということからも、何度も何度も、そんな朝を迎えたことが表されている。

合鍵とは合鍵に過ぎず、所詮は模倣されてつくられた偽物。君からの「愛してる」という言葉さえ、全ては紛い物だったのかもしれない。

哀しさはあるのだけど同時に、それでも主人公はそれが本物となってしまわないように心のどこかで願っているようにも思えて、それこそが「生ぬるい日々」なのではないか。

そんな切なさが、生で聴くとより強く感じられた。


"忘却炉"実は最初、何の曲かわからなくって一瞬戸惑った。なぜなら、音源だと冒頭はサビのフレーズからイントロへ入るが、いきなりイントロに入るライヴならではのアレンジで勢いそのままに進む。

生ぬるく続いていくことを唄った"合鍵"から一転、終わりを力強く唄い上げる。"忘却炉"は過去を引きずるのではなく、今を見つめろと唄う曲だ。


歪(ゆが)み、歪(ひず)み、うねるギター。"ユーモラル討論会"の攻撃的なサウンドがフロアのギアをまた一段階上げる。

海に身を投げる主人公なのだけど、最後の想いが「念願の灰になるわ」というフレーズで終わることが面白いなと思って。身体はおそらく発見されずに海の藻屑となるのではないかと思えたからだ。しかし、本当に灰になる、つまりは「燃え尽きる」「燃やし尽くした」のは魂なのかもしれない。


MC
水:こんにちはぁ…
客:こんにちはぁ
水:もっと元気よく
客:こんにちはー!

水:ツアーファイナル来てくれてありがとうございます。
新代田FEVERは、実は1年前になきごとが初めてライヴをしたのが、ここで。その時は1/4くらい? いやもうちょっといたか1.5/4くらいしかいなかったんです。
その時には「次やる時はソールドさせます!」と言ってたんですけど、正直できるとは思ってなくて、でもソールド…しました。


この中にいくつも凄いと思わせることがあって。
なきごととして初ライヴからまだ1年ということ、そして1年でその箱をソールドアウトさせたことだ。

もちろん対バンなのでSAKANAMONのファンもいただろう。けれど、体感としてやはりなきごとを見に来たという人が多かったように思う。

何より、客層がとても若くて、彼女たちと同世代くらいの人も多かったのではないだろうか。なきごとの音楽が凄まじい勢いで伝染していく、そんな感覚を体感していく。


4. さよならシャンプー
5. ヒロイン


"さよならシャンプー"は7月にも聴いて、とても印象的だった曲だ。特に、このフレーズは、最高だ。


星屑も所詮は屑である


ヒヤリと、ドキリとさせられる。この感覚こそが、僕がなきごとに惹かれる理由なのだろう。

そして「一年前にもここで演奏した曲を」ということで披露された"ヒロイン"。SPICEのライヴレポで初めてタイトルを知った。「愛されていたい」というフレーズはとても切ない。

こうして、切々な曲もあれば、攻撃的な曲もある。それでいて、それが全く突飛なことをしている訳でなく、どれもがしっかりとなきごとの曲として腑に落ちていく。
同じ演奏者なのだから当たり前と思うかもしれないが、それをどんな曲でも成立させてしまうということは、実は相当バランスの難しいものなのだ。


6. のらりくらり
7. 連れ去ってサラブレッド
8. メトロポリタン



水:SAKANAMON先輩が「鬼」って曲をやってましたけど、なきごとにも二文字の動物の曲があります。生まれ変わったら猫になりたい、"のらりくらり"という曲を。



社会人としてどうかと思うが、いやむしろ社会人だからこそ思うのかもしれないが、のほほんと暮らす動物を見ていると本当に癒される。僕も生まれ変わったら、大久野島でウサギに生まれ変わってのほほんと暮らしたい。

時間を無駄にすることがとても惜しくて、隙間が怖い。その時間があれば、音楽を聴いたり、文章を考えたりする時間に使ってしまう。貧乏性なだけなのだが。

思えば大学の時がまさにそんな日々で、若さと時間を何にも使えなかったけど、そんな時間だからこそ、贅沢な日々だったのではないだろうか。


音源としては未発表の"連れ去ってサラブレッド"。
タイトルの通りであるが「サラブレッド連れ去って」というサビの入りがとても印象的。

たとえば、現実逃避であるなら、いっそユニコーンとか空想の生き物にすら押しつけても良さそうだが、そこが「サラブレッド」になることで、地に足がついていないのだけど、ついてるような妙な感覚になる。


ギターのカッティングから唄い出す。それはSAKANAMONの"ミュージックプランクトン"という楽曲。この曲のイントロが、なきごとの"メトロポリタン"のイントロと似ていると話題になっていたらしい(疎い人間)。

ということで、それを知った先攻のSAKANAMONが"メトロポリタン"をワンコーラス演奏し、なきごとがそのお返しをしたという経緯なのだ。

それが凄く良いなと思えて。先輩とか後輩とかの垣根を越えて、音楽を通してお互いのリスペクトを讃え合う。これこそが対バンでなければ実現しない、ライヴならではの瞬間と言えるだろう。

そこからの"メトロポリタン"。間違いなくひとつのハイライトといえる盛り上がりを見せる。
「こんな光景が見たかった」と水上えみりは言った。1年前にもここにいたファンの方にとっては、同じ想いだろう。

歌詞の強い個性の世界観、それなのに、なきごとが演奏するととてもフラットな日常の延長にある現実にさえ思えてしまう。

そう思わせてくれるのは、最初にも触れたように、なきごとの音楽が最後にちゃんとポップソングとして着地しているからだ。ポップソング、ポピュラーとは、大衆向けという見方をされがちだが、本来誰しもの心を打つほどの音楽というのは、決して容易くできることはない。

ロックでありながらポップさも兼ね備える。それは水上えみりがスピッツを敬愛していることもあるかもしれない。冗談抜きで僕はスピッツのロックのほそ道でいずれ抜擢されると思えて仕方ない。


9. 癖
10. Oyasumi Tokyo


"癖"は一年前に、初めてこの場所でライヴをした時の1曲目だったという。最後のサビの唄とコーラスの響きが美しく、切ない。早く音源としても聴きたい。


"Oyasumi Tokyo"。
僕は岡田安未の弾くギターがとにかくツボにツボに入ってくるのだが、この曲のイントロはやはり特別だ。

タワーレコードで"Oyasumi Tokyo"を聴き、イントロのギターと唄い出しだけでCDをレジに持っていったのは、それがあったからである。







前回もそうだったけれど、好きすぎるあまり聴いてて寂しくなる。一音一音が響き消えるたび、曲が終わっていってしまうからだ。ライヴそのものもそうだ。その空間が好きだからこそ、曲が終わる度、ライヴの終わりも近づいていってしまう。

それでも響いてなくなった音楽は消えはしない。それが自分の心に残したものがある限り。


泣き顔が一番綺麗だ


というフレーズは病んでた岡田安未のために水上えみりが書いたという歌詞だという。そんなフレーズを水上えみりが唄い上げ、ギターを鳴らす岡田安未の笑顔が見えた瞬間に、そんな日々を越えて今この瞬間を生きる2人を見て、涙が出た。

その上でこの曲はアウトロのギターソロも最高であり、本当に、僕はこんな曲と出逢いたくて音楽好きをやっている。


水上えみりがアルペジオをポロリポロリと奏でながら、ポツリポツリと語る。


水:人にはそれぞれの夜のつくり方がある。楽しい夜、悲しい夜、誰かと会いたくなる夜。
「死にたい」と口にした私に、「バカじゃないの」とはなで笑ってくれた人がいて。一年前のライヴ見に来てくれた。今日は来てるかわからない。見に来ててもわからないくらい人がいる。
その人にはもう会えなくても、私はやっていけると言いたいけれど。この曲を聴いてる時だけはどうしても、会いたいと思ってしまう。
私の背中を押してくれたあの人のように、私もきてくれた人の、聞いてくれた人の背中を押せるような。そんな思いを込めて書きました。



11. 深夜2時とハイボール


MCがあったこともあり、サビのフレーズがより力強く聴こえた。


疲れ切った日常にほんの少しのなきごとを。


なきごとのプロフィールにはそうある。泣き言を受け止めてくれた人がいたからこそ、泣き言を受け止めることができる。

岡田安未が水上えみりの歌詞に救われたように、水上えみりに「バカじゃないの」と言った人のように。

なきごとが奏でる「背中を押す」とは、寄り添うことなのだ。「泣き顔が一番綺麗だ」も「バカじゃないの」も、ポジティブなだけの言葉ではない。

その言葉が伝わり、背中を押せるのは、相手のことを見つめていてわかっているからだ。それであるならば、ミュージシャンは不特定多数に言葉を投げ掛けるもので、真逆にも思えてしまう。

けれど、なきごとはしっかりと伝えたい人たちがいる。傷ついた夜があった人、人の痛みがわかる人、もしかしたら死んでしまいたいとさえ思えた夜を迎えた人。

人生において誰しもに、泣き言を言いたくなるような夜が一度はあるはずだ。ポップソングとは、ポピュラーとは、まさにそんな気持ちに寄り添う歌なのだ。


そしてもうひとつ、"癖"~"Oyasumi Tokyo"~"深夜2時とハイボール"まで、曲が終わっても、客が水を打ったように静かだったのが印象的だった。

盛り上がっていなかった訳ではない。動けなかった。少なくとも僕はそうだった。これほど、余韻が消えないまま進むライヴは、初めての経験だった。

その流れがあったからこそ、"深夜2時とハイボール"の終わりに割れんばかりの拍手が鳴った瞬間、これがライヴなのだと思った。

この空気はあの場にいた者しか感じることはできないだろう。







水:最後に、羊の安楽死の歌を



12. ドリー


初めてライヴで聴いた瞬間から、どうしようもないほど愛おしくなった曲。

デモCDは買えなかったので、「夜のつくり方」が発売されるまでは、バズリズムで放送されたワンコーラスの"ドリー"を狂ったように聴いていた。

そして「夜のつくり方」を迎えて、歌詞カードを噛みしめながら聴いた時、漠然と感じていた想いが確かなものだと、これがあの羊のドリーの物語なのだと気づいた。

歌詞については「夜のつくり方」の記事にあるので、そちらを。だが僕の中の今年1位と確定したMVと合わせて、またいつか改めて語りたい。

歌声に、切ないギターに、自然と涙が溢れそうになる。もはや理由などない、わからない。"ドリー"の歌の意味を越えて、とにかく嬉しかった。こんな音楽に出逢えたことが。大袈裟かもしれないが、それほどの気持ちで見ていた。

本編最後の曲ということもあって、演奏はこれ以上ないほどの熱を見せる。最も胸を打ったのは最後のフレーズ。


ドリーおやすみ これで最期なんだね


その唄い終わりの「なんだね」、その最後のフレーズを水上えみりはより長く伸ばして唄っていた。そこに絡む岡田安未のギター。伸ばした声が掠れ途切れる瞬間、これこそがエモーショナル、エモなのだと思えた。

終わって欲しくないと願った。こんな幸せな時間さえ、呆気なく過ぎていってしまうことへの哀切なる想い。もしかしたら、命も同じなのかもしれない。

なきごとの特徴として1曲が3分台の短い曲が多い。なので1時間と少しの本編だったけれど、12曲も演奏された。



~アンコール~


水:アンコールありがとうございます。


そこから、新年会でのSAKANAMONとのエピソードへ。


水:コミュ障なんで、お酒の力を借りるしかないって思って飲んで、なんとか聴いてくださいっていって。その時のお酒の味とか全然覚えてないです。
岡:でも、見てたけど、どんどん打ち解けていって、最後には先輩後輩の良い関係になってたよ
水:そう?その時のレモンサワーの味が忘れられなくて、曲を買いてきました。"憧れとレモンサワー"



13. 憧れとレモンサワー


SAKANAMONの"ミュージックプランクトン"となきごとの"メトロポリタン"のイントロ。

結果的に似ていたとしても、じゃあ「パクった」というかといえば、そうではない。
ミュージシャンとして、自分の音楽が聴かれ、憧れを持たれることは、ひとつの誇りとなるだろう。

結果的にSAKANAMONとなきごと、先輩と後輩の関係は、こうしてツアーファイナルという舞台で最高の対バンという形で実現した。


夢と憧れは何が違うだろうか。夢とは、1人で見るもの。憧れとは、心理学では「モデリング」と呼ばれる。モデリングとは、対象の真似をして、同じような動作や行動をすることだという。

たとえば、幼い子が周りの大人の真似をして、成長していくという過程がある。

初ライヴから1年を迎えたなきごとが、おそらく自分たちすら信じられないペースで成長している。僕が前回見たときに対バンしたのは同期の仲間であり、ライバルとも呼べるosageで、負けてられないという意欲を強く示した。

1年の中で様々なミュージシャンと接するなかで、なきごとは無理だと思っていた新代田FEVERをソールドさせるまでに至った。

彼女たちの成長は、憧れが連れてきたのかもしれない。けれど、本当に憧れを現実とするのは、なきごとの2人が何よりも音楽と真剣に向き合ってきたからだ。



水:あー緊張した。リハで全然歌詞覚えられなかったんですよ。目の前にいるから。


水:ライヴはアルバム1曲目の"合鍵"で始まって、最後の"ドリー"で終わりました。それで、CDにはシークレットトラックが入ってたんですけど、気づいた人いますか?
客:(かなり手が上がる)
水:結構いますね。それで、シークレットトラックが始まるまで、1分4秒なんですけど、それに気づいた人いますか?いませんよね?だって誰も呟いてなかったもん。時間が1.04で104。初めてライヴをした10月4日のことです。


正直白状してしまえば、僕は外で聴く時に隙間恐怖症のため、空白トラックとかは省いてしまう。なので、今回もシークレットトラックを聴くべく、PCでCubaseへ取り込み、あれをこれして空白部分を切ってしまってた。

申し訳ない。

ということで、最後にシークレットトラックが演奏された。原曲は歌と岡田安未が弾くピアノだけの、とてもシンプルなトラックだったので、どうするのだろうと思って見ていた。


水:暗い部屋、あなたと2人。あなたの手に持っているのは、私を殺すためのもの。
あなたがいなくなったら、私は生きていけない。



14. B


水上えみりがテレキャスターを鳴らしながら唄いだす。ピアノも良かったが、こうしてギター弾き語りの演奏も良い。

1番を唄い終えた瞬間、バンドサウンドが一気に鳴らされる。その瞬間の感動。
人は幸せに泣けるのだ。

シンプルな演奏と唄だけだった"B"という楽曲、それがアレンジが変わったことで曲の印象が一変した訳ではない。元々の曲が持っている切々としたものは失わず、その切なさがより何倍にもなる。これこそが音楽のアレンジの魅力だ。

歌詞について、正直全然掴めないでいた。
撃ち抜くことも、刺すことも、おそらくはメタファで。そう思うとタイトルが"B"の理由は、そのままの意味だったのだろうかとか。

たとえば歌詞がそのまま殺されるという意味とした時に、それまでの間は逆説的にいえば、あなたによって生かされているという考え方もできる。君によって生かされているのならば、引き金はいつもあなたが握っている。

あくまでも妄想だけど、色々な解釈ができる歌詞が僕はやはり好きなのだ。
同じ言葉を受け止めたのに、人それぞれに夜があるように、それぞれの世界で違って響く。

YUIの曲で"Why?という曲で「どうして人は言葉を持ったのだろう?」というフレーズがあって、大好きな歌詞なのだけど。人は、それぞれの夜をつくるために言葉を持ったのかもしれない。"
(突然例に出すのもどうかと思ったが、岡田安未の音楽を志すキッカケとして名前が出ていたのでYUI直撃の同世代として例に出した)

誰かと繋がることも別れることも、夜には全てが溶けている。自分さえも。


最後にSAKANAMONと写真を撮ったりして、ライヴとしては1時間20分ほどだろうか。なきごとのこれまでとこれからが全て詰まった時間だった。

1年前を僕は知らない。けれど、この夜に見たなきごとの2人は憧れだったステージを自分たちの色に染め上げた。

ライヴの良さとは、音楽を全身で受け止めるところにある。
CDやiPodで音源を聴く時には、耳で受け止めるという感覚になるのだが、ライヴとは全身の細胞に音が伝わる。

音はいつか溶けて消え、また夜に形作られる。

なきごとの音楽を全身で受け止め、新代田の夜に溶け込んだ。



なきごと「夜のつくり方」全曲感想・歌詞解釈
【感想】なきごと「nakigao」 白状しますと、すみません今年のベストが出ました



【セットリスト】
1. 合鍵
2. 忘却炉
3. ユーモラル討論会
4. さよならシャンプー
5. ヒロイン
6. のらりくらり
7. 連れ去ってサラブレッド
8. メトロポリタン
9. 癖
10. Oyasumi Tokyo
11. 深夜2時とハイボール
12. ドリー

〜アンコール〜
13. 憧れとレモンサワー
14. B


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