2022年3月1日火曜日

アフターコロナのポルノグラフィティ ライヴを妄想する






これはいつかの物語。



……



制限が緩和された。

世界で猛威を奮った新型コロナウイルスに対する、効果的な経口薬が開発、承認されて今はインフルエンザに近い扱いとなった。

人々の日常はほぼ元通りになった。



それは、あくまでも"ほぼ"の話である。

100%元通りではない。

規制が緩和されても、半数以上はマスクをしているし、まだ密集した場所や顔を近づけての会話には抵抗が生まれてしまう。

ここ何年かの間に染み付いた習慣に、頭ではわかっていてもどこか身体に抵抗を覚えてしまう。

それでも、ポルノグラフィティのライヴにおいても「条件付きで発声OK」となった。


"コロナ禍"と呼ばれる事態のなか、僕らはいくつかのライヴを乗り越えてきた。

たとえ声は出せなくとも、演奏を聴かせるもの、演奏を聴くものの想いは同じで、あの場所は変わっていながらも変わらない空間となっていた。


入場する。


規制は緩和されたとはいえ、引き続き消毒や検温は続けられている。

会場に入ると広く抜けた空から風が吹き込んできた。

少し窮屈な座席に身を押し込める。


声が出せなかった時と違う緊張感のようなものを感じるものだ。

今までともコロナ禍とも違うライヴが、いま始まろうとしている。

屋外での開催ということもあり陽はまだ高く、それにつられて気温も上がっている。

大丈夫になったとはいえ、完全に大丈夫というわけではない。

けれど。

彼らだけではない、多くのミュージシャンたちが、全国で新たな一歩を踏み出している。

不安が消えることはなくとも、不安に負けそうな弱い僕らには、音楽が必要なのだ。

約束を胸に、その時を待ちわびる。


入場の遅れもあり、定刻を10分ほど過ぎたころ。


ロマンスポルノは開幕した。



会場には久しぶりの歓声が響きわたる。

中にはまだ躊躇ってしまう人もいる少なくないが、ポルノグラフィティを迎え入れる久しぶりの歓声に、泣きそうになる。

オープニング用の音源とともに左右のスクリーンに映像が流れる。

それはコロナ禍が始まってきてからの写真たち。


人のいなくなった街
マスクをして行き交う人たち
感染者数を伝える新聞記事
声の出せないライヴ
それでも笑顔の人々


これまでポルノグラフィティが続けてきたもの、これからもポルノグラフィティが続けていくもの。

変わらない決意を胸に秘めながら、ポルノグラフィティはまたステージへ帰ってきた。


昭仁:ロマンスポルノ始まります!まずはこの曲を一緒に歌いましょう!みんな今まで我慢してた想いを存分にぶつけてください!


新たな始まりを感じさせるドラムのあと、岡野昭仁は歌い出す。


ほら 見上げれば 空があって 泣きたくほどの青さ
ほら 雲のようなスニーカーで 高く高く登ってゆけ

甦る言葉。


「今日は声を出せんから歌えんじゃろうけど、今度会った時はみんなででっかい声で、次の曲を一緒に歌いましょう。それまでの約束」


ほら 見上げれば夕日があって 燃えるような熱い赤
その胸は 震えてるか?


まさに雲ひとつないような青空に、音が溶けていく。

屋根のない会場に、どこまでも声が広がっていく。

"テーマソング"という楽曲は、こうして一つの完成を見たのだ。

声の出せない悔しさを胸に、それでもいつの日かを夢見て繋いだ約束。

そして、もう一つの約束を。


昭仁:素晴らしい歌声をありがとう!次の曲もみんなで一緒に歌いましょう。前回は雨だったけど、今日はこの美しいしまなみの空気を、深呼吸して存分に味わっていってください。


"ブレス"


そう、ここは「広島県立びんご運動公園 陸上競技場」。

雨に濡れ、雨に泣いたあの日の約束。

僕らは再びこの場所へ戻ってきたのだ。

美しいしまなみの景色を、もう一度味わうために。

ライヴ・ビューイングで画面越しに観たしまなみの美しさ、今は目の前に広がっている。


晴れた日も雨の日もあるように 朝と夜が今日も巡ってくように
出会いとさよなら繰り返す 旅人のように


まるで歌詞を表すように、雨と晴れを味わった僕ら。


アウトロで響いた合唱は、あの日とは違った感動をくれる。

ポンチョを鳴らす雨音は今ここにはない。

陽射しとは違う暖かさが会場を満たす。


それからも新旧織りまぜた楽曲たちが、会場を沸かしていった。野外で聴く"メビウス"の破壊力は凄かった。

まだ100%ではないけれど、たしかに未来は変わっていく。


昭仁:次で最後の曲です。この場所で、様々な天気を体験しました。きっとどれもに意味があって、僕らの未来へ繋がっているんだと思います。

夕暮れに響くイントロのピアノに息を飲む。

そして、岡野昭仁が紡いだフレーズ。


雨にもちゃんとした素敵な理由がある
誰かの事を想う時にはこぼれる涙隠してくれる
晴れたらちょっとだけ青い色を借りて
痛む心に鳥を描こう



雨に傷んだ心、僕らにとっての青い色はポルノグラフィティの音楽だった。

そんなポルノグラフィティにとっての青い色は、僕らだったら嬉しいなと思う。

ライヴは帰結する。

一本のライヴとしても、僕らの人生においても。


最高の天気は最高の口実に
傘を離した右手を君に差し出してみようと思ってる
海にも街にも続いたこの空を
どこまでだって歩いてゆこう 眩しい陽の光に包まれ


雨も晴れも乗り超えた。

そんな風に思いを巡らせたそがれに
明日はどんな日になるのかな 明日こそは誘えるといいのにね


美しいしまなみの黄昏を目に焼きつけ。


僕らは明日へと向かう。


僕らの明日は続いてゆく。


※言うまでもなく当記事は全て妄想です。





【ライヴレポ】続・ポルノグラフィティ 2021.12.21 +セットリスト

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