2026年9月20日日曜日

【歌詞考察】ポルノグラフィティ"スペース・ヴァンガード"




ポルノグラフィティ最新アルバム「果実」を、日々狂ったように聴いている。

いや、狂ったようにではない。

僕はもう狂っている。

ということで、先日のアルバム感想に続き、アルバムのオープニングナンバーである“スペース・ヴァンガード”について書こう。




スペース・ヴァンガード



作曲:岡野昭仁
作詞:新藤晴一
編曲:tasuku

「水」ツアーでは序盤の公演で新たな“種”として披露された。

初めはEDMっぽい、ダンスナンバーのイメージだったんです。でもtasukuくんがロックなアレンジをしてきてくれて。「そうきたか!」っていう驚きがありましたね。
ナタリーより

インタビューを見ると、当初はダンスナンバーを目指していたようだ。

これはこれとしても、いつかFCUW4みたいな既存曲のダンストラックアレンジでライヴで披露してほしい。
アルバム感想でも書いたけど、ピアノの音色が良い感じに神秘的な印象をくれていると思う。

公式が水ツアーの時のショート動画をあげているけど、リズムがシンプルな4つ打ちなんだけど、音源になったら打ち込みで凝り倒していて、これだけでもまた結構印象違うだろうなと思う。
ライヴでの肉体的な印象フルで聴いてみたかったな。

あと最後のサビの「長い旅を終えて」のところで流れる「ヒュオーー!」ってEDMチックな音が飛行してる感じが出て好き。

Foster the People(フォスター・ザ・ピープル)というロサンゼルス出身のバンドがいて、彼らが2024年にリリースした“Lost In Space”というダンサブルなディスコ調の曲があって、めちゃくちゃリピートしてた。




この話、記事につながると思うでしょ? ただ宣伝したくなっただけです。


こういう、楽曲で宇宙を描く曲が好きだ。そう考えたら初手“アポロ”の人たちに人生を捧げてるのは必然といえる。その上に“スペース・ヴァンガード”は終末論までぶっ込んでくる、愛してる。

あと個人的にCメロのメロディがとても好きで、曲としてもラスサビに向けてギアがまた一段入る感じがして良いフックになってると思う。








スペース・ヴァンガードの歌詞①



さて、では歌詞について順を追って見ていく。

冒頭でタイトルでもある「スペース・ヴァンガード」は宇宙へ旅立つ船であると明かされる。
そこに乗るは「人類最後の少年」。新藤晴一が物語調の歌詞で少年を描いたら勝確である。

この「人類最後の少年」という言葉ひとつで、壮大で壮絶な世界観が一気に伝わってくる。


これが演劇とかだったら、その人の生い立ちから年齢まで、裏設定も用意しないといけないけど、歌はそれが要らないから。ラブソングも「どう別れたか」とか、「何歳のとき」とか関係なく、別れた状態から始まるし、(この曲のように)「宇宙に行った」から始めることができるから、音楽の長所として、すごく楽しんで書けますよね。
Billboardより

インタビューで似たことを言っていたが、これが演劇や小説ならもっと詳細な描写が必要になるんだけど、歌詞にするとこの2行で全てを分からせられる説得力をもたせられるんだが、歌詞って面白い。

続けて「ヘリオス炉」という言葉が出てくる。
元々存在する用語ではなくオリジナル用語なのだが、ヘリオスの意味がわからなくても不思議な説得力がある。

ヘリオスは古代ギリシャ語で「太陽」を意味して、ギリシャ神話においても太陽神を示す。太陽神なんて松岡修造くらいしか知らないので勉強になった。

ただ、実際ヘリオスという言葉の意味を分からなくても「ヘリオス炉」で何か納得させられるあたりも言葉遣いが巧みだと思う。「プロジェクト・ヘイル・メアリー」読んでるときずっとこんな気持ちだった。

サビでは少年がヴァンガードへ問いかける。そこで「僕ら」と言っているところが絶妙だ。
船であるヴァンガードが少年を「神」と呼ぶのは、会話できる人工知能のような印象だ。

更には、少年がその目的を、その存在を知らないことも明かされる。そして次のフレーズの言葉でまた「えっ?」となる。

600万年前のHD

ちなみに今の2026年の600万年前を調べたらサヘラントロプスという最古の人類の一種とされるものがいた頃らしい。サヘラントロプスはヒトとチンパンジーが分岐したのでは?という辺りの説があるらしい。※諸説あり

ということで、石板ですら無理そうな600万年もののHD。ポルノグラフィティの記録を残して受け継いでおいていただけないでしょうか。

中身が受け継がれてきた、的なメタファでもあるとは思うけど、途方もない記録だ。

ただし、そこに記されているのは人類の残酷な秘密、機密。




スペース・ヴァンガードの歌詞②



ガガガ…聞こえて…
ガガガ…いますか…
そちら…危険…巨大なブラックホール


2番も冒頭から飛ばしてくる。

当初は2番にラップがくる予定だったらしいが、ガガガをくらってしまうと想像がつかない。

この無線「過去の座標から届く」となっているけど、過去のログとして記録が残っているのか、デス・ストランディングみたいなシステムなのか。
なおフロムソフト製の無線だったら「この先隠し道があるぞ」って嘘メッセージが届く。

ここが凄いのって、「ガガガ」を効果音とかではなくてあえて歌として馴染ませているところ。しかもなんなら歌にエフェクトもかけないのに、これがカッコ良さに昇華できていることが凄いと思う。


そして2サビ。主人公の少年が求めるのは、


ゲノムが求めてる最終形態
物理の法則を歪める不規則な感情のユラメキ


もう何言ってるのか分からないが、もうこの歌詞しか有り得ない。ゲノムは生物の遺伝情報のことだけど、最終形態とはどうなってしまうのか。

というか少年、幼いイメージだったけど、ここでいきなり踏み込んでくるやんとなった。

ここのフレーズはもう具体的な意味合いというよりは、世界観の補強として雰囲気で聴くことが正しい気がする。時間は距離じゃないんだ。

ここでコールドスリープが出てくる。
近年はPerfumeのコールドスリープということもあったけど、最近「エイリアン」を見返したので頭にはどうしてもシガニー・ウィーバーが浮かんでしまう。

コールドスリープする少年。そのコールドスリープ装置とは。

少年が一人寝るにはやや硬すぎるクレイドル グレイブ? 

個人的に最も撃ち抜かれたフレーズ。
「クレイドル(ゆりかご) グレイブ(墓・棺桶)?」という言葉が主人公の立ち位置を描ききる。しかも「一人」なのだ。

自分が“スペース・ヴァンガード”を聴いて「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を思い浮かべるのは、主人公が望まずとも、この孤独な運命に飲み込まれてしまうというところだ。

そこに対して「やや硬すぎる」という表現がいいなと思って。SF作品ではコールドスリープ的な表現はあるけど、その無機質な感覚はあれど、「やや硬すぎる」って急な主観描写はかなり斬新だと思う。

他の作品でそういう場面を見ても、なんとなく「そういうもの」って感覚でスルーしてしまうからだ。


空間系のエフェクトが効いた雄弁なギターソロからのCメロ。

地球滅亡の日に人類が
晒した野蛮で残虐な姿を直視せよ

アルバム感想でも書いたけど、メロディがとにかく気持ちいいし、一連で聴くと“峠の鬼”に出てくる人類の所業とも重なる人類の醜い業を思わせる。

それはきっと600万年もの間にも積み重なれたもの。

そこからのラスサビ。

燃え尽きそうなヴァンガード。再起動が再起動になるかも定かではないその狭間。

遂には少年の目的が明らかになる。

綺麗な水がある星まで後何光年

「綺麗な水をください」という問いかけから始まったライヴが「綺麗な水をあげよう 望むまま」と終わる水ツアーを経たこと。

この曲が水ツアーの最初の種であり、アルバムOPを飾るべき確かな理由だ。

それは水を注ぎすぎて枯れてしまったサボテンだったように。

人類が目指した月を水槽に飼った君のように。

胃液の底のように。

絞りだした一雫のように。

君を潤す水のように。

愛とは水であり、水とは愛なのだ。

生命は水から始まった。

生命はいつしか愛の証となり、それが受け継がれていった。

ヴァンガードの使命が尽きるとも、まだ主人公は終わらない。

そこに投げかける言葉。

See You

ここであえてyouではなくYouとしているのがいい。


愛は誰かに見せたり
まして誇るようなものではない

たとえ水が凍って眠りについても、また氷は溶けて水となる。

コールドスリープから目覚めたその先に、たしかな愛(水)がある世界であることを祈って。

どうなるか教えて、ヴァンガード。





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