2017年3月1日水曜日

【合唱曲】心の瞳/坂本九の歌詞を解釈する






"心の瞳"という曲がある。

合唱曲として有名な曲であるが、元々は坂本九さんの曲である。


合唱曲ってたまに思い出したように聴きたくなる時がある。

久しぶりに聴きながらあらためてしみじみ良い曲だなと浸っていた。それで記事にしようかなと思っている時にこの曲も聴き返した。


イントロのピアノも素晴らしいのだけど、何より歌詞が素晴らしいと感じた。
初めて聴いてから10数年経ってたから歌詞の良さに気づくのだから我ながらおめでたいものだ。

ということで、派生記事として曲の経緯や歌詞の解釈について書いてみようと思う。
まだ合唱曲の記事書き終わってないけど。




心の瞳/坂本九




曲の経緯










そもそもになってしまうが、これを書こうと思うまで坂本九さんの曲であるということを知らなかった。中学の合唱コンクールで唄ってた当時はそんな事知りもせず良い曲だなと思っていたくらいである。

ピアノ伴奏だけで聴くと(唄うと)歌謡曲らしさをあまり感じないからだろうか。

原曲を初めて聴いたが、やはり素晴らしき名曲である。
当たり前だが原曲はとても歌謡曲然としている。それでも尚、色褪せないなと思う。


1985年5月に発売したシングル「懐しきlove-song」のB面に収録された曲である。生まれる前だ。

坂本九は同年8月の日本航空123便墜落事故で亡くなってしまうため、この作品が遺作となり、"心の瞳"がコンサートで披露されることはなかった。


その後、合唱曲として使用されるようになり広まっていった。


心の瞳/坂本九 歌詞解釈










歌詞解釈




では、歌詞を見ていく。

「心の瞳で君を見つめれば」と、語り部である私(仮にそう呼ぶ)は"君"のことを語る。
独白のようでありながら、どこか遠い未来に向けてのメッセージとも受け取れる。理由は後述する。


聞き手ごとに様々な人物像を思い浮かべられる歌詞だろう。


歌詞をひと通り聞いて思い浮ぶのが、恋愛においての変わらない愛である。

共に歩んで行ける人に巡り会えたこと、その喜びを唄っているようにも取れる。

僕も今までずっと何の気なしにそう考えていたんだけど、改めて歌詞を見ていて、歳を取ったこともありまた違った印象も持つようになった。


たとえばひとつに浮かぶのは親から子へのメッセージである。


いつか 若さを 失しても 心だけは
決して 変わらない 絆で 結ばれてる


全体を通してもここの歌詞はとても印象的だ。

身体が老いたとしても、子を思う親の気持ちはいつまでも変わらない。
"決して変わらない絆"という部分、それは恋愛だけの愛ではなく、もっと大きな愛を内包するもの、たとえば家族の絆と捉えた方がしっくりくる。


瀬尾まいこの小説に『幸福な食卓』という作品がある。北乃きい主演で映画化もされた作品である。





家族を巡る話なのだが、その中で主人公である佐和子にある悲劇が訪れる。落ち込む佐和子に、兄の恋人の小林ヨシコが語りかける言葉がある。


「あのさ、言葉は悪いんだけどさ、恋人はいくらでもできるよ。もちろん、今、そんなこと言うの最悪だってわかってる。(中略)でも、家族はそういうわけにはいかないでしょう?お兄ちゃんの代わりもお父さんの代わりもあんたの力ではどうすることもできないじゃん」


「家族は作るのは大変だけど、その分、めったになくならないからさ。あんたが努力しなくったって、そう簡単に切れたりしないじゃん。」

講談社 瀬尾まいこ『幸福な食卓』より



この、小林ヨシコはこの言葉の前までは二股(もしくはそれ以上)をかけたり、欲望にひたすら忠実な人であまり良い印象を受けないのだけど、この言葉は作品においても重要なメッセージになっている。

そう、家族とは不思議な強い絆で結ばれているものだ。
ただ、この「強い絆」というものは、人によっては逆に辛く切り離せない存在にも捉えることになるかもしれない。

世の中には様々な愛のかたちがあって、それぞれが胸の内に抱えている。

原作はもちろん映画も完璧に近い作品なので、是非読んで、観て欲しい。関係ないがこの時の北乃きいは殺人的に可愛い。








そして、解釈を思い浮かべていて心打たれたのはタイトルである「心の瞳」という表現。

"心の瞳"で君を見つめれば、ということはつまり、君が目の前にいるわけではない。


このことを踏まえ浮かんだのが、お腹にいる子を想う母親であった。

これが「未来へのメッセージ」にも聞こえた理由である。

まだ見ぬ子へのメッセージ。

自分には子どもがいないけれど姪っ子や友人の子らを見ていても思う。「愛すること それが どんなことだか わかりかけてきた」とは慈愛なのである。


坂本九はこの曲をコンサートで唄うことなくこの世を去った。
音楽家にとって、いや音楽だけでなく作品を生み出すものにとって、作品は自分の子のようなものだという。

いつまでも唄い継がれる"心の瞳"という楽曲は、時代を超え多くの人の心に愛とは何かを伝え続けている。

愛とは、普遍的な人生の標なのだ。

最後に、この曲の歌詞で僕が最も好きなフレーズを引用して終わりたい。


夢のまた夢を 人は見てるけど
愛すること だけは いつの時代も
永遠のものだから


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