2020年5月23日土曜日

ポルノグラフィティを初めて聴くと全力で思い込んで聴いてみた









ある程度ポルノグラフィティに毒されたファンになると、曲に対しての理解の深度は上がってくる。

それに比例して、新鮮さはなくなっていく。

人は、慣れてしまう生き物なのだ。

今からポルノグラフィティの曲を初めて聴くという人が、兎に角羨ましい。バンド界隈でたまに話題になるファン歴でマウントを取るなど、如何におこがましい行為か。

なので僕は今からポルノグラフィティと出逢う人々へ、畏敬の念を禁じ得ない。

僕はもうポルノグラフィティと出逢ってしまっている。ポルノグラフィティと出逢ったときのあの純粋な喜びは、もうないのだ。

それを叶えるには、自己暗示しかない。

せっかくなので初めてポルノグラフィティを聴く+初めて聴いた14才の時の気持ちになるよう、全力で脳を騙すことにする。

ちなみに本当に一週間くらいポルノ断ちしてからやろうかとも思ったけど、本当に病みそうだったのでやめました。






ポルノグラフィティと出会う男(※妄想)




音楽というものを聴いたことがない。

もちろん、全くという訳ではない。

店頭のBGM、コンビニの有線、雨の音、歩く人の足音、どれもが音楽を奏でている。

僕にとっては世界の全ては音楽なのだ。

しかし、僕は出逢っていない。

自分の心を揺さぶられる、今までの人生を決定的に変えてしまう音楽に。

自分はいま、14才だ。

心はこんなことを書いている場合じゃないという間もなく33歳のオッサンだけど。

今は兎に角、14才なのだ。

話題の音楽に疎い僕は、音楽と改めて向き合おうと、CDショッ プへと向かった。

そこには、星の数ほど、音楽があった。

一生掛かっても聴き切ることはないだろう。

いくつもの音楽を視聴していた。

どれも良さはあるが、どれも自分の人生を決定的に運命づけてしまうというには、程遠い。

尤も、そんなアーティストなど、そうそうに出逢う訳はないのである。

そんなときに、あるアーティストの名前が目に入った。

「ポルノグラフィティ」

なんという名前だ。

「ポルノ」

なんて破廉恥な名だ。

「君たちのバンドなんていうの?」

「ポルノです」


変態じゃないか。

これは期待できる。

しかもポルノグラフィティである。

ポルさんのグラフィティではない。

「ポルノ」なグラフィティだ。

変態じゃないか。

これは期待できる。


自分はいま、14才なのだ。

これを書いてて虚しい気持ちになり、肩こりもヒドイ、間もなく33歳のオッサンだとしても。そもそも「ポルノ」という言葉を本来の意味で考える人がどれだけいるんだという話だが、そんなことは関係ない。心は、14才だと思い込むのだ。

思春期の男なんてものは猿よりも知能が低いのでポルノという言葉を見せたら、自然と買うのである。

気づいたら、視聴もせずに、タイトルも見ずに一番左のCDを手に取った。

ジャケットは青いバックに大きな蝶が描かれている。

今のところ全くポルノ要素がない。

わかっている。

そんなものを表紙にしたら、即18禁である。

きっと裏や中にポルノなグラフィティがあるのである。

「ポルノグラフィティ」だけ購入するには、拗らせた思春期男子には躊躇いがある。

念のため、ワゴンで安売りしていたショパンのCDを上にしてレジへ出した。きっと店員はショパンのCDを買いにきた少年だと思うだろう。

完璧なカモフラージュである。


帰宅。

なぜか胸がドキドキしている。

袋に手を入れ、ショパンのCDを投げ捨てて、ポルノグラフィティのCDを手にする。

なかなか開かないビニールをなんとか破り、開く。

なんとなく見えていたが、裏には写真があった。

これがきっとポルノのグラフィティなのだ。

裏ジャケットを見る。

……全く破廉恥じゃないじゃないか。

強いていえば、写真に写る、歌い手らしき女性はセクシーで格好いい。それにしては後ろにいる男3人が邪魔である。

不思議な構成だ。

バンドなのになんで一人パーカッションを叩いているのだ。

中を見てもポルノなグラフィティは全くなかった。

これは、詐欺ではないか。

ポルノグラフィティと謳ってポルノなグラフィティがないのである。

しかし、今さらながらよく見るとタイトルは「アゲハ蝶」と書いてある。

ジャケットそのままである。

きっと、蝶がポルノなグラフィティのメタファだったのだ。

脳ミソがプリンでできてるような頭の悪い14才男子にとって、メタファなどまどろっこしいこと以外のなにものでもない。

もっとストレートな、ポルノなグラフィティが見たいのだ。

今日はショパンを聴いて寝てしまおうか。

……そうだ。音楽だ。

僕はポルノなグラフィティを買いに行ったのではない。

音楽を買いに行ったのだ。









アゲハ蝶を聴く




なんとか猿一歩手前のところで人間としての理性を持ち直し、CDを聴いてみることにした。

なんというイントロなのだろう。

楽器が複雑に絡みあって、なにがなにか理解が追いつかないのに、とても惹き付けられる。

そこから歌が入ってきた。


!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


その瞬間、全身に衝撃が走った。


声が。


男ではないか。


あの写真はなんだったんだ。

これは、詐欺ではないか。

あのセクシーなお姉さんはどこへ行ったのだ。

まさか、あれは正しくなく、後ろのよくわからない男3人がメンバーだったとでもいうのだろうか。

まさかあのパーカッションを叩いてた男が歌っているとか、そんなバカなことはあるまい。

憤りが頭を過るが、よく聴いてみると、その声もまた悪くないではないか。

いや、悪くないなんてもんではない。

むしろ、良い。

え、待って。

この気持ちはまさか。


恋?


いや、騙されてはいけない。

ポルノなグラフィティもなければ、アー写すら違う詐欺集団なのだ。

思うほど、心は真逆に沸き立つ。

抗えない。

頭のサビで心が全て奪われた。

間奏に入ると、笛やらなんやらのピーヒョロした音色も入ってきた。

この雰囲気はなに。

こんなの聴いたことない。

ここまで来ると、好きといったら負けではないかと思い初めてきた。

そんな天の邪鬼さえ、手拍子を始めそうなくらい心は熱くなっていった。

何気なく歌詞カードに目を向ける。

旅人は、僕自身だった。

なるほど。

全く意味がわからない。

1回で理解できるほど知能が発達していなかった僕だが、その言葉に徐々に魅了され始めていた。

こんな気持ち、生まれて初めてだ。

歌が、言葉が、演奏が、全てがポルノなグラフィティよりも刺激的だった。

まるで、世界に光が満ちるように。

すると。


あなたに逢えた それだけでよかった
世界に光が満ちた


やだ。

心を、見透かされてる……!

自分の好きを全部先回りされてるみたい。

色々なことに騙されたけど、この気持ちは嘘じゃない。

私は、きっと。

いや、ゼッタイ。

ポルノグラフィティが好き。




……誰だよ。



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