2019年5月22日水曜日

『ヒカルの碁』人気キャラ伊角慎一郎という男の魅力を今一度知らなければならない








好きなマンガは?という話になると必ず『ヒカルの碁』と答えることにしている。

もちろん『嘘喰い』もなのだが、『嘘喰い』は人生なので、好きなという区分では語れない。

『ヒカルの碁』は本当に素晴らしい。

もう連載も終わってかなり経つ作品だが、次の世代にもこの作品が受け継がれていって欲しいので、作品と伊角さんの魅力をプレゼンさせてもらう。

折しも夏に小畑健展があるそうなので、興味を持ったら是非見に行って欲しい。



【小畑健展開催記念】
『ヒカルの碁』人気キャラ伊角慎一郎という男の魅力を今一度知らなければならない









地味




週刊少年ジャンプというバトル全盛の中で「囲碁」というテーマでヒットということ自体が、まず異常と呼べる事態だ。

少年マンガで「囲碁」である。


『ヒカルの碁』原作より引用





それは「囲碁」という協議の特殊性がある。

知らない人からすれば、囲碁のルールは全く理解不能だろう。

ハッキリ言って10周以上読んで、アニメも5周くらいしている僕でも未だにルールが理解不能である。

極端にいえば陣取り合戦なのだが、これだけ見てるのにどっちが勝ちなのか、戦局や終局の盤面を見ても全くわからない。

『ヒカルの碁』をきっかけに囲碁に興味を持った人が多いとも聞くが、ほとんどの読者は最後まで理解できないまま読んでいただろう。

まさにそれこそが『ヒカルの碁』の魅力なのだ。


意味がわからないのに、とてつもなく面白く見せるって、演出力がずば抜けて高いということを示している。

原作のほったゆみ、そしてそれを的確に圧倒的な画力で資格可させた作画の小畑健の力が奇跡的なバランスとなって起こった。起こるべき奇跡の作品なのだ。

『嘘喰い』でも言われることだが「ルールが難しくてよくわからん」という意見が多い。

僕としては「5回読み返してから言えバカ」と言いたい気持ちだが、普通はルールがわからなければ、面白いと感じないものだ。

しかし、『ヒカルの碁』はそれを逆手にとった。


ルールがわからないからこそ、戦局がどう動くかわからないという演出を見せるのだ。それを向かい合う2人の心情描写だけで、読者に伝える手腕は見事としか言いようがない。

ルールを覚えたからこそ見える魅力もあると思うので、少しでもルールを覚えたいと思いももちろんあるのだが。












キャラクターの魅力




少年マンガを盛り上げるために欠くことのできないのが魅力的なキャラクターである。魅力的なキャラクターたちがいることで、作品全体を盛り上げてくれる。

囲碁のルールがわからないけど面白いという『ヒカルの碁』は、キャラクターたちの魅力で読ませるマンガなのだ。

登場人物が数多くいるが、どのキャラクターにもそれぞれの信念があって、人それぞれ重ねてしまうのではないだろうか。



『ヒカルの碁』原作より引用



まず、話の骨格として主人公である進藤ヒカルとライバル塔矢アキラが主軸となる。囲碁の囲の字も知らないヒカルがある日、平安時代の天才棋士であった藤原佐為(ふじわらのさい)の霊に取り憑かれることで物語は始まる。


どうでもいい余談になるが、アニメでヒカルの声を当てていたのは、2011年に亡くなった川上とも子である。僕はだいぶ『ヒカルの碁』のアニメを見てから、後れ馳せながら「少女革命ウテナ」を見たので、ウテナの声がしばらくはどうしてもヒカルにしか聞こえず、ヒカルが「世界を革命する力を!」と言っている違和感が凄かった(今はどちらにも馴れた)


ど素人であったヒカルは佐為の指示で囲碁を打って、名人である塔矢行洋(とうやこうよう)の息子のアキラに勝利する。天才と云われプロを有望視されていたアキラは、同世代に負けたという屈辱によってヒカルをライバル視するようになる。

そしていつしかヒカル自身も囲碁に目覚め、少しずつ才能を伸ばし、いつか自分の力でアキラに勝利したいと願うようになる。

つまりは(ヒカルに憑いた)佐為を追うアキラを追うヒカルという構図である。



『ヒカルの碁』原作より引用



この本筋が崩れないまま話が進むので、登場人物が増えていっても、物語がスムースに読み進められる。



『ヒカルの碁』原作より引用



『ヒカルの碁』原作より引用



奈瀬が可愛い、何かとはしゃぐ佐為が可愛い(※佐為は男)などキャラクターを語り出せば終わらないが、『ヒカルの碁』において、どうしても騙らなければならないキャラクターを紹介して終わろう。



伊角慎一郎という男




『ヒカルの碁』原作より引用



伊角慎一郎(いすみしんいちろう)は日本棋院所属の院生である。色々とあるが院生とはプロ棋士を目指す子どもたちが通う学校(塾)のようなものと認識すれば良いだろう。院生になることで、一部試験が免除になったりとメリットがある。

院生の中でもプロになれるのは5%ほどだという。そんな中で、伊角はトップの成績を収めているが、プロ試験ではいつも失敗してしまう。

とても優しく穏やかな性格だが、メンタル部分で弱くがあり、失敗し続けていた。ヒカルが院生になった年が院生としての最後の年で後がなくなっていた。

その焦りから試験中にヒカルとの対局でミスをしてしまう。

それはハガシという反則であり、ヒカルもそれに気づくが、先に伊角が反則を認め、それ以降調子を崩すことになる。


『ヒカルの碁』原作より引用



そんなバカ真面目なキャラクターなのだが、なんと当時の読者人気投票でぶっち切りの1位となったのだ。


『ヒカルの碁』原作より引用



なぜ「伊角さん」はそこまで読者の心を掴んだのだろうか。


焦りと動揺から院生としての最後の試験でミスをしてしまった伊角は試験に不合格となる。そして院生の期限(17歳の3月)を待たずして、院から去る。

優しく誰からも慕われるキャラクターだけに、失敗をして落ち込む姿は心を揺さぶられるものがある。

そんな伊角が自分を鍛え直したのが中国である。

そこで、伊角は感情のコントロールを学ぶ。



『ヒカルの碁』原作より引用


さらに名言を貼っておこう。


オレはオレだ 自信を失ったわけじゃない
俺の碁が俺を支えている!


この中国のくだりに何話か割かれヒカルも不在となるので、リアルタイムだと本当に『伊角の碁』になっていた。





主人公不在のまま進むストーリーに当時は賛否があった。しかし、この自信を取り戻した伊角がヒカルにとって大切な存在となることを思えば、これだけの話数を割くことが必然だったといえる。

伊角が中国にいる間、ヒカルは“ある出来事”によって絶望し、囲碁を打てなくなり、プロを辞めると言い出すまでになっていた。
ライバルであるアキラの説得でさえも、ヒカルの心は動かなかった。

そんな囲碁を辞めてしまっていたヒカルに囲碁をまた打たせたのが伊角だったのである。拒むヒカルに「俺のために打ってくれ」と願い出る。


「伊角のためなら」と仕方なく一局打つことになったヒカルは、そこで自分の囲碁を見つめ直すことになる。屈指の名場面なので、是非直接読んで欲しい。ちなみに僕はこのシーンを思い出すだけで泣ける。というか、これ書きながら泣いている。

そして伊角は中国での経験を発揮し、プロ試験を全勝合格する。

誰からも慕われるけれど人生がうまくいかない不器用な伊角が、主人公ヒカルを立ち直させる。これほど「努力・友情・勝利」を体言するキャラクターがいるだろうか。

『ヒカルの碁』において、最も少年ジャンプしているのは伊角なのだ。

天才の陰に隠れがちな努力の才能が、天才を立ち直らせ、諦めない気持ちが勝利を招く。こんな熱くて泣ける展開を作るのだから、伊角の人気は間違いないものだ。




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