2019年10月16日水曜日

尊敬してるドラマー~その2「﨑山龍男(スピッツ)」







ドラムはバンドの礎となり、根幹を支える楽器である。

どうしても花形とは言い難い。

何より、端的に凄さが掴み辛いということはないだろうか。

たとえばYOSHIKIくらい派手だったり、とにかく手数が多かったりするが、得てしてポップスではドラムに注目する機会はドラムソロとかしかないのではないかと思う。

音楽好きとして、様々なドラマーを見てきた。そんな中で、「あ、この人凄い」「上手い」と思わされたドラマーがいる。

それがスピッツのドラマー﨑山龍男(﨑ちゃん)である。


ニューアルバムも出たので、このタイミングからで改めてその凄さを語りたい。

ただ、僕はドラマーではないのでドラムについての語彙はない。たとえば﨑山龍男を語る上で「モーラー奏法」が話題となるが、それはいくつか語られてるし、専門の方に任せる。

純粋に音楽好きとして感じた凄さを語りたい。


尊敬してるドラマー~その2「﨑山龍男(スピッツ)」



※文中の敬称略





プロフィール




1967年10月25日生まれ
栃木県佐野市出身

中学、高校はベーシストだったが、高校の途中でドラムに転身。その頃からドラムが評価される。

その頃はハードロックやへヴィメタルをやっていたそうで、純粋に基礎の技術が高いのはその辺りのロックを通ってきたからだろう。

スピッツ結成については草野正宗と田村明浩のバンドに三輪テツヤが加入し、三輪の紹介で﨑山龍男が加入したという経緯である。全員実力派のスピッツの中で最後にテクニックをかわれて加入したというだけでも、いかにその技術力が高く認められているかわかるだろう。

動物好きで犬を飼っている。今はどうかわからないが、うさぎも飼っているという話もあったので、飼ってもないのにうさぎガチ勢として親近感が一気に湧く。

いくつかエピソードを拾ってきたので、これを読むだけでも見た目通りの優しい方というのが伝わると思う。



メンバーの背中を見続けてると、今日は調子良いなーとか、演奏中に分かる事があるんだけど。ミスした後とか、なんか可愛いんだよね


田村「打ち上げで崎ちゃんがすげぇ酔っ払って『俺ドラム叩きてぇよ!ドラム叩きてぇよ!』って言い出して・・・普段散々叩いてるのに!
のに!会場にドラムがあって、もう帰るよって言ってるのに『俺ドラム叩く!』ってずっと叩いてるのを見て『あぁこの人本当にドラムが好きなんだなぁ』って」


三輪「スピッツのメンバー全員が兄弟みたいな感じですかねぇ。付かず離れず」
草野「音楽をやる上での。兄弟って言葉が一番ぴったりだと思うんですけどね。俺はだんご3兄弟じゃないけど、”自分が一番次男”みたいな感じなのかなぁ」
﨑山「バンドがあって自分がいるから。俺が母親みたいな時もあるし(笑)」

※プロフィールでいくつか「今でも悪ガキのメンバーの引率役」というのがあったほど。



草野 「うん。俺はね…。﨑ちゃんがちょっと遅れて入ったんですけど、ちょっと怖そうな感じだったんですよ」
(笑)
テツヤ 「今も怖いけど」
草野 「ロックでビジュアル系みたいな感じ」
(笑)
草野 「でもみんながんばってね、最初の日から「﨑ちゃん」って呼ぶようにしたんだよね。「﨑山さん」じゃなくてね」
テツヤ 「帽子をたたきつけるからね」
(笑)
MC 「ホントですか」
草野 「﨑ちゃんって呼ぶことで4人が平等になったっていうか。﨑山さんが上じゃなくてね」
田村 「(笑)」
MC 「今見ている限りはとっても優しそうな方ですが」
﨑山 「優しいです」
田村 「ま、20年たってね」
テツヤ 「僕たちもそう思ったんだけどね」
草野 「﨑山さんキャラから徐々に﨑ちゃんキャラに」



人柄が伝わったのではないだろうか。


では本題に入ろう。








ドラムのテクニック




さて、本題である。

スピッツは世間の持つパブリックイメージとは裏腹な部分が多い。ファンの人にとってみれば当然でも、世間はそうでなかったりという面も多い。
一部、以前三輪テツヤについての記事で書いた部分と重複する部分もあるが、あらためて書いておこう。

メンバーをパッと見たときにまず目に止まるのが三輪テツヤだろう。一般的には(実際は違うが)草食系のイメージが強いなかで、一人だけロックンロールの申し子という風貌である。

しかし、ある程度スピッツを知ってくると見た目が一番派手な三輪テツヤが一番淡々と演奏しているという印象に変わる。もちろんギターソロや派手な曲ではギタリスト然として前に来たりもするが、全体的にはギターの安定供給につとめている。

特にライヴを見れば明らかであるが、フロントマンの草野マサムネももちろん動かないので、その分ライヴで一番暴れまわるのがリーダー田村明浩に驚くことと思う。

そんな中で﨑山龍男はドラムという役割がために、ドラムソロ以外はなかなか意識しないのではないのだろうか。しかし、次に見る時には是非注目して欲しい。
※先日の「SONGS」でだいぶ伝わると思う

専門的なことは語れないが、自分なりにテクニックという部分を語るとすれば、それは如何にスピッツの曲の土台となり曲を引き立てるかという役目がドラムには必要となる。
決して派手なドラムではないので目立たないが、﨑山龍男のドラムはその1点において、とてつもない技量を誇っている。

それを体感したのが、とあるイベントだった。



ドラムとは




少し前の話になるが、会社にスピッツファンの方がいて、その方に誘われていった下北沢のドラムのイベントに﨑山龍男が出演していた。

そのイベントが少し特殊なイベントで、ドラマーのためのイベントだったのだ。﨑山龍男の他にプロとして活躍する某バンドのドラマーが2名参加していた。

ゲスト3名がお題の曲や自分の演奏したい曲をそれぞれ演奏していくという内容だった。呑み比べならぬ、聴き比べである。

特に課題曲は何人かが演奏するので、同じ曲でもドラマーが変わることで、いかに曲の印象が変わるか体感できる。「関ジャム」でやりそうなレベルの内容だ。

2人先に演奏をして、それぞれ個性的で素晴らしいドラムを披露した。言うまでもないが、2人とも実力あるドラマーである。しかしながら、最後に登場した﨑山龍男のドラムを見てぶっ飛んだ。

恐ろしいほど、曲が聴きやすくなった。

ドラムが主役のイベントなのでドラムが目立つということもあるが、それだけに曲を聴かせるというよりもドラムを聴かせるという印象が強かった。しかし﨑山龍男のドラムだけは、いかにきちんと曲を聴かせるかに特化したドラムだったのだ。

それでいて、細かいフレーズを聴けばその安定感とテクニックが垣間見える。歌の部分でしっかり音を絞りながらもタイトなドラムを聴かせ、間奏などではしっかり他の楽器の帯域を邪魔しないサウンドで盛り上げ、たまに遊び心溢れるフレーズが入る。

当たり前のことを書いているようだけど、それをやるにはテクニックが必要だ。その点で﨑山龍男のドラムはまさに「お手本のような」というリズムを奏でていた。それがテンポの早い曲、遅い曲問わず一貫している。その安定感。

他の2人も十分に巧いのに、﨑山龍男のドラムは次元がひとつ違っていた。これがJ-POPの一線を歩み続けた、プロからも評価されるドラムのテクニックなのだ。スピッツのカバーバンドが難しいのは草野マサムネのヴォーカルによるところも大きいが、やはりメンバー全員の演奏スキルの高さが尋常ではないからだろう。

その後にお客さんの中からも演奏する人を募って演奏する場面もあったが、特にそこで違いが明白となった。そのお客さんのドラムも巧い、それだけど曲を引き立たせるよりも、自分のドラムを叩くことに精一杯な印象だった。なので、ひたすら力任せになってしまい、押しの強さが印象に残ってしまった(偉そうなことを書いてしまい恐縮だが)。

ドラムという楽器について、ひとつにはどれだけ他のメンバーが見えているかということが重要である。決して大きな会場でなく、そこに7~8人のバンドがいたので、そこで必要な音量や力加減を掴んでいたのは﨑山龍男だけであったと思う。だからこそ曲として最も聴きやすいものとなったいた。

それを思った時「メンバーの背中を見続けてると、今日は調子良いなーとか、演奏中に分かる事があるんだけど。ミスした後とか、なんか可愛いんだよね」という言葉の重みが増す。

ずっとメンバーを見てきたからこそ、その時々でドラムを変えてきたのではないだろうか。それは職人がその日の気候や天気によって、匙加減を微妙に変えて同じクオリティを保つように、メンバーのその時々のサウンドに合わせてドラムも合わせている。

バンドはアンサンブルだ。
ドラムがしっかりしていなければ、バンドは呆気なく崩壊してしまう。

それは素人目には到底わからないものかもしれない。しかし、こうしてスピッツが今なお変わらぬ魅力で活動していることがそれを証明している。

ドラムは礎である。目的はメンバーの創ってきた楽曲の世界を届けること、その為に最も適切なリズムを奏でる。「あのドラム凄い」と思わせるドラムではなくて、「スピッツの音楽って良いな」と思わせるドラムを叩くことができるのは﨑山龍男だけである。

それがスピッツの音楽に心地好さを感じる要素のひとつであり、それが﨑山龍男というドラマーの凄さなのである。


【おまけ】
ちなみにそのイベントで少しだけ話させていただいたが、本当にどこまでも気さくで優しい方であった。


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毎回アルバムジャケットは素晴らしいが生越千晴さんがモデルをつとめた今回のジャケットも最高だ。

ジャケットについては、是非このアートディレクターの木村豊氏の本を読んで欲しいなと思う。







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