2019年12月22日日曜日

【感想】ポルノグラフィティ 20th ANNIVERSARY SPECIAL BOOK







ポルノグラフィティの20周年を記念して発売されたSPECIAL BOOK。

その内容があまりに濃くてたまらなかったので、感想を書いておきたい。

受注生産だし、大体みんな届いてきているようなのでネタバレも何もないかもしれないけど、まだ読めてないという人もいると思うので、一応ネタバレ注意です。

読んでない人には一言しかないです。


読め、すごいから。








インタビュー:岡野昭仁




岡野昭仁が20周年イヤーを振り返る。
しまなみロマンスポルノでは地元で唄う喜びと楽しさに気付き、UNFADEDではマニアックな曲までしっかり聴き込んでくれているファンの想いに気づいたという。

そしてどちらにも共通して出たキーワードで「ニュートラル」な気持ちになったという。

20周年だからと無理に気持ちを高める必要はなく、有りのままのポルノグラフィティを見せる、それこそが20周年に相応しい姿だったのかもしれない。

なぜならインタビューにもある通り2009年、初の東京ドームライヴでの経験があったからだろう。35曲4時間オーバーというポルノグラフィティ史上最大の挑戦となったライヴ。
あまりに我武者羅に駆け抜けたライヴを、岡野昭仁はやり切ることに必死で心の余裕がなかったという。

それもまたあの狂気ともいえるライヴの熱を生み出した要因であるが、あのテンションのまま20周年で2daysというのは難しかっただろう。だからこそ、こうしてニュートラルな気持ちで向き合えるということが、あの東京ドーム2daysを生んだのかもしれない。


『そこはね、色んなことを楽しみながら考えてくれる新藤がいるわけだから、もうお任せしてればいいかなと』


ここ数年岡野昭仁から新藤晴一への信頼(その逆も然り)を、感じさせられる発言が多いけれど、今回の言葉もやはり泣けてしまう。

この「任せる」というのは無責任ってことではなくて、こうして信頼を置いて任せるということが、ポルノグラフィティチームであり、岡野昭仁と新藤晴一2人によるポルノグラフィティというバンドなのだ。

少し前に新藤晴一は未来であり、岡野昭仁は現在ではないかということを書いたけど、それと似た感覚を岡野昭仁も抱いているとしたら、嬉しくなってしまう。

新藤晴一が未来を描き、僕らは岡野昭仁とそれに向かうのかもしれない。




インタビュー:新藤晴一




新藤晴一のインタビューを読んで思わされたのは、この人は本当に「ものづくり」の人なのだなということ。

一つ挙げるとツアーが好きな理由として、ひとつひとつのライヴで出てくる修正点を見つめ直し、ブラッシュアップしていくという流れに喜びを見出だしているという点。

僕は「UNFADED」ツアーで(ライヴ・サーキットとしては)初めてツアー初日を見た。その時点で、なんという完成度なのだと驚かされた。しかしながら、ツアーが進んで数ヶ月後に横浜アリーナを見たときに、その進化を目を見張った。

僕のような素人からすれば、あんな初日を見せられたら、それに胡座をかいてツアーをしたって、おそらくほとんどのお客さんは満足すると思う。しかし、ポルノグラフィティの2人をはじめ、あのチームはどこまでもストイックなのだ。

たとえば曲間の"間"をどれだけ開けるかとか、そういう
些細なことだけでも、前後の曲の印象を大きく変える。それがたとえ一秒の差であったとしても。

ツアーは生き物で、場所も違えば、観客の反応も地方ごとで異なるという。それでも2人がまず超えるべくは、昨日の自分だとわかっていて、そこに対してどこまでもひた向きだからこそ、ツアーは進化する。


そして、新藤晴一のインタビューの中盤部分で、僕がこの記事を書きたくなった決定打がある。


『(74ersについて)結果的には僕の力不足であまり評価されなかったんだけど、そこでもし、みんなに受け入れてもらえていたら、さらに発展したライヴが生まれていた気もするというか』


『たまに夢見ることは今でもある。でも、もう絶対に遅いと思うんだよなあ。今となってはSEKAI NO OWARIとかが
面白いことやってたりするから。』


違う。

違う。

違う。


大事なので、3回も言ってしまった。

僕は「74ers」については、生で見ていない。けれど、当時の反応もたしかに知っている。それは言葉にあるように、決して好意的ともいえない意見も少なからずあった。

けれど「74ers」にあまりに感動させられた人間だっているのだ。

もちろん商業としてやっている側面もあるし、2人(もちろん当時はTama含め3人)は、来てくれた人みんなを喜ばせたいと思っているということもわかる。

映像で見た「74ers」はあまりに素晴らしく、僕は何度となく見返して感動を味わっている。「74ers」でしか起きえなかった感動が、そこに収められているからだ。

自信持ってくれ、胸張っていてくれ。

そんな想いだった。

僕は、当時うまくいかなかったからこそ、再挑戦して欲しいと願うのだ。当時、ポルノグラフィティはまだ4~5年目。まだひた向きにライヴを見せる存在だった。けれど、今は違う。

音楽は多様性を見せ、リスナーはおそらくミュージシャンの想像以上に、柔軟に今の音楽を受け止めている。15年前と今とでは、全く違う。

「たまに夢見ることは今でもある」ならば、たしかに抱いた想いならば、挑戦して欲しい。

たしかに、万人から愛されるとは限らない。けれど、どんな最高のライヴだって、万人が同じように受け止めてはくれない。

様々なアーティストがライヴの見せ方を変えていっている。その中でもし、「それなら自分たちがやらなくてもいい」というなら、間違いだ。

ポルノグラフィティでしか描けない世界は、きっと必ずあるのだから。


インタビューを通して2人から未来へ向けての視線を強く感じた。








マネージャー座談会




とても興味深かったのが、歴代マネージャーたちの座談会だ。

特に初期の棚瀬マネージャーなどの話は、とても興味深いものばかりだ。

物凄く嬉しかったことがひとつあって。

それが"アポロ"に纏わるエピソード。

当初は"ヒトリノ夜"がデビュー曲となっていたが、デビュー日が遅れた。


様々な経緯で"アポロ"が生まれることになるのだが、その経緯の一つは東京ドーム公演で本間昭光から直接語られていた。

「ロマンチスト・エゴイスト」の曲たちが出揃ってきて、もうひとつ勢いのあるやつが欲しいという提案が為され、それから本間昭光の頭に浮かんだものが"アポロ"の原曲だ。

そしてレコーディングして全員が「これはいけるのでは」という手応えを感じたというのがドームの話。今回語られたのが、その間のエピソード。


その"アポロ"について、新藤晴一が「せめて作詞だけは、やらせて下さい」と願い出たという。この申し出がなければ"アポロ"は"アポロ"として世に出なかったかもしれない。

初期のポルノグラフィティに付きまとうこととなったのが、バンドとして代表曲たちの作曲が自分たちではなく、プロデューサーの本間昭光がつくったということだ。

それでもポルノグラフィティが注目された要素のひとつとして新藤晴一が書く歌詞の世界観が評価されたことも外すことはできない。

メンバー自分たちだけが持つアイデンティティの証明、それこそが岡野昭仁は歌声であり、Tamaは作曲であり、そして新藤晴一にとっては作詞だったのだ。


新藤晴一の頭にどこまでの未来が描かれていたかはわからない。けれど、自分なりに作詞に自信があり、このままプロデューサーが作詞まで手掛けてしまったら、自分たちの"色"がなくなってしまう。

僕は自分が歌詞を書きたいというエゴではなく、危機感として新藤晴一が作詞をやりたいといったのではないかと思えて仕方ない。

メンバー以外の作曲でデビューしたということについて、岡野昭仁からも葛藤したという話が以前あったが、だからこそ今の自分たちがあると考え、更には"オー!リバル"という新たな代表曲を自分たちでつくり上げた。


そしてもうひとつ印象的だったのが「シスター」の頃のエピソード。

代々木の小さなライヴハウスで撮られたアーティスト写真。

あれがそれだったのか定かではないけれど、Tamaの脱退が発表され、当時の公式ページにコメントが載り、そこに初めて2人になったポルノグラフィティのアーティスト写真が掲載された。

その写真を見て「ああ、本当に2人になったんだ」とどんどんと心に込み上げてきたのを今でも覚えている。



本当ならスタッフインタビューまで触れたいけど、それについて言えることといえば、感謝と、あと100ページ読みたいことと、みんなあの豪雨ライヴがやっぱり印象に残ってるんだなということだけだ。

その他、写真集はもう男目に見ても惚れかねないレベルで格好いいし、本当に凄いものを出してくれたものだ。

ここまでのことをやってくれたならば74ersの写真が明らかにSWITCH FINALということは目を瞑ろう。

20周年の重みと、まだ進む未来へ期待を抱ける一冊だった。



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