iPodを全曲シャッフルにして聴いていて、不意に掛かった曲に、うっかり号泣しそうになった。
タイトルに書いているので、本題に入ろう。
宇徳敬子の"光と影のロマン"である。
僕くらいの世代(1987年生まれ)であれば、ほぼみんな聴けば「あ!あの曲!」となるはずだ。
「名探偵コナン」のアニメで3代目のエンディングとなった曲である。
今の世代の人にもきっと伝わる名曲なので、是非紹介しておきたい。
宇徳敬子「光と影のロマン」
(名探偵コナンエンディングテーマ)
名探偵コナンエンディングテーマ
先に書いておくと、僕は「名探偵コナン」に関しては初期しかわからない。例外としてポルノグラフィティの主題歌を聴くために劇場版の「業火の向日葵」を見に行ったくらいである。
対立しているわけではないが、どちらかというと僕は「金田一少年の事件簿」フリークになっていった。
"光と影のロマン"は1997年3月~8月のエンディングテーマであった。
話数でいうと52話から70話にあたる。
これを見て意外と期間短いな、という印象を受けたのだ。
この曲を聞くとハッキリとエンディングが浮かぶほどなのに。しかしながら、その間のエピソードを見てみると、その理由がわかった。
52話は霧天狗伝説殺人事件である。思わず「懐かしい」と呟いてしまった。最初の方は原作を読んでることもあって、よく覚えている。
ホームズ・フリーク殺人事件
幽霊船殺人事件
大怪獣ゴメラ殺人事件
闇の男爵(ナイトバロン)殺人事件
20年以上前なのによく覚えているエピソードばかりだ。
そもそもコナンの曲は名曲ばかりということもあるが、それだけ熱心に見ていた辺りなので、よりエンディングが印象に残っているのだろう。しかしながら、何よりそれは音楽としても"光と影のロマン"が素晴らしいからに他ならない。
光と影のロマン
それにしても宇徳敬子さんとても美人。
柔らかなアコースティックギターときらびやかなピアノのイントロが美しい。
宇徳敬子の歌声がまた、自分にはとても心地好く優しさと力強さを兼ね備えている。
"光と影のロマン"は郷愁の歌だ。
記憶のなかのあなたを想う。それはかつての思い出であり、今も忘れられない記憶。
ロマン語れば一晩中 疲れ知らずの all night long
恋する暇もないよ 波が押し寄せてくる
記憶の中を泳いでも 現実 は coll and dry
愛(それ)を確かめたくて 何処に彷徨い行くの
この出だしだけで、2人の関係と距離感が伝えられる。
あなたを想う私だけれど、あなたはロマン、おそらく自分の追いかける夢、ばかりを見ている。
あなたはロマンばかり追いかけ、私のことは見てくれない。しかし、主人公はそんなロマンを追いかけるあなたの姿に惹かれ、何処までもついてゆくと心に誓う。
この曲の歌詞にはいくつか仕掛けがあって、歌詞表記と実際の歌が違ったものが当てられている部分がある。
「愛(それ)」がひとつ目である。
歌詞をしっかり見ながら聴いたことがなかったので、普通に「それ」と歌ってると思ってた部分に「愛」という漢字が当てられていて驚いた。
いつか全てが解っても あなたを好きでいられること
たとえ戦う毎日に 明け暮れても
懐かしさで思う故郷 昔の自分映す
光と影のロマン 追いかけて
1番サビだ。メロディの美しさ、アレンジ、歌声、そして歌詞、どれをとっても完璧だと思う。このフレーズを聴くと、胸が締めつけられるようで、いつも切なくなる。
「全てが解っても」は、あなたが私を想っていなかったとしても、という意味に聴こえる。ならば、それでも「あなたを好きでいられること」というフレーズは想いの強さだけに、切なさも増すことになる。
あなた
年下とわかっていても 生意気と知ってても
手にするものはすべて あなたへと繋がってく
いつかこの愛の 形が変わっても
胸焦がす 不思議な人のこと 探して
2番で歌詞は少し意外な展開となる。それは僕の思い込みによるものが大きいが、「年下」ということがとても意外だったのだ。
おそらく「あなた」という言葉で、同い年か年上の人を想像してしまったからかもしれない。
ただ、冒頭からそうなのだが、実も蓋もない話をすればタイアップが「名探偵コナン」なので、どうしてもそれが重なってしまう。それがどこまで意図しているのかはわからないし、それだと矛盾する部分もあるので、あまり考えないでおくことにする。
2番のサビ。
あの時言えなかったけど 裸になれなかったけど
まるで子供のように 無邪気になれたら
膝を抱えて見た夕日 胸に刻み込んだ
あなたの言葉 ずっと忘れない
この度歌詞をちゃんと読みながら見て初めて気づいたこと二つ目。
歌詞表記はこうだが、実際にはこう歌っている「あの時言えなかったけど 裸(ゼロ)になれなかったけど」。普通に「0(ゼロ)になれなかった」だと思っていた。
「裸(ゼロ)」という言葉がいいなと思う。単に裸が好きという訳ではない。あなたへの想いを伝えることでゼロになるのは、あなたを想う私。
そして、それを伝えることは無邪気な2人にはもう戻れなくなるということ。
それに対してあなたが口にするのは「言葉(メロディー)」というのが切ない。こちらも「言葉」に「メロディー」が当てられている。
おそらく、あなたは何の気なしに口ずさんだ歌かもしれない。そのメロディーと言葉が、私にとってはあなたとの思い出を閉じ込めた永遠となる。
間奏ではトランペットが飛び込んでくる。
トランペットは使いようによっては華々しさが増すのだが、こういった曲では、より切なさが増す役割を果たす。
僕は間奏でこのようなトランペットが入ってくる90年代的なアレンジを聴くと泣くようにできている。
他に例を出すと、堂本剛の"ひとりじゃない"である。こちらはドラマの「金田一少年の事件簿」のエンディングだ。ということは探偵もののエンディングで間奏がトランペットの曲にグッとくるという特殊な性癖なのかもしれない。
夜空見上げて 月の光浴びて
ほんの一瞬 感じた永遠が 愛しい
ポルノグラフィティの代表曲"サウダージ"にこんなフレーズがある。
あなたのそばでは 永遠を確かに感じたから
夜空を焦がして 私は生きたわ恋心と
あなたとの日々。
幼き日にはそれが永遠に続いていくと錯覚してもおかしくない。それこそが恋というものだ。
それを肯定できることが、主人公の強さであり、強くあろうとするからこその切なさなのだ。
大人になること
そして最後のサビで、僕が最もハッとさせられたフレーズがある。
いつか全てが解っても あなたの愛を掴んでも
時に埋もれたように 流されない
ただ年をとるだけの大人には なりたくないよね
もう過去(きのう)のために 泣いたりしない
当時、10才だった自分が、本当にただ年をとるだけの大人になるとは思ってもみなかった。
大人と呼ばれる年齢になっても、大人になった実感などない。それは結婚したり、子どもが生まれた友人たちと話していても同じで、皆似た感覚なのだと思わされる。
大人とは幻想なのかもしれない。大人とは、子どもと大人というものに1人の人間が線を引いたものに過ぎない。
なぜなら、成人は法的な区切りだが、大人の定義などないのだから。それでも人は過去を受け入れ歩みだすことで、強くなることはできる。同時に痛みを受け止めることができる。
身体の成長と心の成長は違う。痛みを受け入れ、人の痛みを受け入れられた時、人は大人になるのかもしれない。だから、身体が高校生でも小学生でも変わらない。
というかコナンだろうが新一だろうが未成年だろ。
ここまででもかなりグッとくる曲なのに、この曲は最後にこんなフレーズで終わる。
気持ちが 一人で 動きだす
天まで 届いて 今にもはちきれ
あがいて もがいて どこまでも続く ロマン
最後の「あがいて もがいて」で叫びに近い歌になり、すっと「どこまでも続くロマン」とすっと落として歌う。大好きでしかないやり口だ。
ロマンと夢は似ていると思う。
どちらも1人でしか見ることのできないものだ。
もしも、あなたの想いが同じだったとしても、人と人はひとつになることは出来ないのだから。
あなたがくれた光が影を生む。けれども、あなたがくれた光が、今の私を導いた。
そこまでわかっているからこそ、コップの淵の水が溢れてしまうように溢れ出す。
想いと郷愁、永遠に戻ることのない、永遠になってしまった日々が胸に消えないロマンを残すのだ。
☆名曲アルバム
- 【名曲アルバム①】ハルカトミユキ「その日がきたら」
- 【名曲アルバム②】I WISH「明日への扉」(川嶋あい/旅立ちの日に…)
- 【名曲アルバム③】Buzy / パシオン(作詞:新藤晴一 作曲:本間昭光)
- 【名曲アルバム④】The Flaming Lips/Do You Realize?? 〜君の知り合いもいつか死ぬ
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