2021年9月29日水曜日

【歌詞考察】IT'S A NEW ERAはシスターの続編





由々しき事態だ。

"IT'S A NEW ERA"の歌詞解釈ができない。





IT'S A NEW ERA




"IT'S A NEW ERA"はポルノグラフィティの最新シングル「テーマソング」のカップリングである。



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「テーマソング」のシングルを聴けばわかるが、同じくカップリングの"REUNION"含め、カップリングとはなんだったか判らなくなるクオリティである。

もちろんポルノグラフィティはカップリングのファン人気の高さを見ても、カップリングで手を抜くことはない。何とは言わないが気を抜きすぎることはあるが。

とりわけ今回は特にこれがA面にならないのは異常という並びである。
サブスクの配信により、A面B面という概念がなくなっていることが大きいのかもしれない。


さて、今回はそのカップリングの1曲"IT'S A NEW ERA"である。

シングルの初聴き時に興奮しすぎて鼻血出す勢いで俺案件だと息巻いていたけど、落ち着いてきた今、改めてこれ歌詞解釈する必要なくない? という結論に至ってしまった。

なぜかというと新藤晴一"らしい"メタファが満載で、いかにもこのブログ案件なのだけど、曲のテーマそのものを新藤晴一がインタビューで語ってしまっているからだ。そのテーマこそが、表題曲"テーマソング"と同じというものだ。

元々メタファというものは物事を他のものに例えて表現する手法だ。僕のようなメタファ愛好家は、そのメタファが何を伝えようとしているのか紐解くことを生き甲斐にしている。

なので元よりテーマを開示されるとそこに答えがあるという状態なので、深読みしてまで読み解く必要がなくなるのだ。商売あがったりだよ、まったく。

"IT'S A NEW ERA"は時折ある、人を煙に巻くように比喩表現というわけでもないので、テーマから逆算しつつ歌詞を眺めて曲を聴けばアレンジを含めてテーマが伝わる構成になっている。


曲そのものはミュージカルを意識していることもあり、とても映像的だ。

雨雲立ち込める灰色の船出から、サビで強い決意が宿り、大サビでは霧が晴れていくかのように大きな世界が見える。僕は最後の「IT'S A NEW ERA! (ダン!)」でいつもヒュー・ジャックマンが目に浮かぶ。おかげでシングルが3曲しか入っていないことを錯覚するほどの満足感だ。

ちなみにタイトルにある「NEW ERA(ニューエラ)」というのは「新時代」という意味だ。

本来なら新時代というのはポジティブに使われることが多い意味合いの言葉のはずなんだけど、今の世の中にとっては「コロナ禍における新しい生活様式」という、少し後ろ向きな言葉になる。ただ、そんなネガティブの中でも希望を見出だし、自分の意志を強く持てというのが「テーマソング」のシングル3曲に込められたテーマである。

さらに余談だがドレスコーズが2019年にリリースした傑作「ジャズ」にも"ニューエラ"という曲が収録されている。コロナ前の作品でありながら、今聴くととても意義ある作品なので、サブスクなどでも聴いてみて欲しい。合わせてコロナ禍に創られたアルバム「バイエル」と聴いてもらえると嬉しい。

今回のシングルのタイミングでハルカトミユキが「明日は晴れるよ」という、今までになかった明るい曲たちを創ったこともそうだが、自分が信頼を置いているミュージャシャンの間でいくつものシンクロニシティが起こっていて興味深い。ドレスコーズとハルカトミユキは隙あらばどんどん宣伝していくぞ。

ということで、あえて"IT'S A NEW ERA"の歌詞解釈を書くのは野暮かなと思ったのだが、ひとつ思い浮かんだことを書き残しておきたい。腐ってもこじつけ癖を発揮させたいのだ。

タイトルにも書いたように"IT'S A NEW ERA"が"シスター"の続きではないかという考察だ。






IT'S A NEW ERAはシスターの続編




なぜそれを感じたかといえば「CYBERロマンスポルノ'20〜REUNION〜」で久しぶりに"シスター"が演奏されたからだ。映像はシングルにフルセットリストで収録されているので買えばいいと思うよ。

"シスター"がセットリストに入っていたことと、"IT'S A NEW ERA"がカップリングに収録されたことには直接の関連はないし、本人たちもまったく意識していないとは思う。だが自分の中でどうしてもこの2つが繋がってしまう。

そもそもどちらの歌詞も「船出」を描いているという共通項があるのだが、もっと深くで繋がるテーマがあるのだ。

「シスター」は2004年にリリースされた15枚目のシングルである。今回の「テーマソング」が51枚目なので数字が表裏となっている、というのは今思いついたこじつけなだけで特に深い意味はない。

表題曲の"シスター"は比較的落ち着いたテンポで、アコースティックギターが効果的に使われた曲だ。
けれど、そこには曲のテーマ以外にも大きな意義が宿っている。

2004年、デビュー5周年を記念して発売されたベストアルバムを最後に、ポルノグラフィティのベースTamaが脱退した。

そこからポルノグラフィティは岡野昭仁と新藤晴一の2人体制となった。

2人になったポルノグラフィティは歩み続け、10周年のアニバーサリーツアー本編最後に岡野昭仁はこんなことを語った。

「デビューから10年間で1度だけポルノグラフィティを止めにしようかと考えたことがあったが、ふたりでもう一度前に進もうと決心をしたときにリリースした曲」

そう言って演奏されたのが"シスター"であった。

以前インタビューで新藤晴一は語っていた。

「リスタートとしては暗い曲かもしれないけど、最も相応しい曲が"シスター"だった」※

※"シスター"の歌詞について新藤晴一はTamaについて書いたものではないと明言しているが、僕は本間昭光が作曲したメロディとアレンジに込めた2人とTamaへの想いを汲み取ったのでないかと解釈している
シスター歌詞解釈〜あなたのために祈る事なら今の僕にも許されるでしょう





当時、Tama脱退という報にどうしてもネガティブになってしまっていたが、それでもカフェイン11で初オンエアをされた"シスター"を聴いて、ポルノは止まっていない、岡野昭仁と新藤晴一は新たな一歩を踏み出したという意志を強く感じた。

ファンもさることながら、当然一番頭を悩ませたのは本人たちである。
直接は語っていなくとも、ある曲にそれは描かれている。


君はあの時 黙って頷いてくれた
行かなきゃ 君がそれを覚えてたら 行かなきゃ
~"AGAIN"

"シスター"と"IT'S A NEW ERA"は、どちらも「船出」であることが重要だ。なぜかというと、船というものは自分の意志で漕ぐ必要があるとともに、河や海の流れに行く先を左右されるからだ。


人の願いなど大きな時間の前では
大河に漂う木の葉みたいだ
~"デッサン#2 春光"


時間という大きな河があって、誰もがその流れに乗って流されていく。人はそれを運命と呼ぶのかもしれない。それでも人は、流れの中で時に抗い、舵を取り、オールを漕ぎながら自らの意志で進む道を選ぶ。

共に夢を見た仲間の離別、誰も予想もしてなかった疫病の流行、それが定められた運命と呼ぶのなら。

今回のシングルで、流されるがままの僕らへ新藤晴一は問い掛ける。


手を叩いて 足を鳴らして
まだ声にできぬなら
聞こえてるか 私の希望
紛れもない 祝福の音
~"IT'S A NEW ERA"

意思を紡いで 縒り合わし 幾千の
決して切れない意図に変えて張り巡らせる
~"REUNION"

今 その胸は震えているか?
~"テーマソング"


運命の中、自らの意志で選ぶものこそが希望なのだと思う。

それは自分の夢かもしれないし、大切な人かもしれない、或いはポルノグラフィティの音楽そのものかもしれない。

これは岡野昭仁が"ROLL"で書いたテーマとも通ずる。

大きな時の流れの中で
僕は何を手にしたんだろう
~"ROLL"

折しも、岡野昭仁がコロナ禍のソロライヴ1曲目として選んだのが"ROLL"であった。


続・IT'S A NEW ERAはシスターの続編




"シスター"における船出、それは2人になったポルノグラフィティのリスタートであった。

そして2021年コロナ禍において新始動として新たな一歩を踏み出すためのシングルが"テーマソング"であり、その同じテーマを宿す"IT'S A NEW ERA"であった。

ネガティブの中で踏み出す決意の一歩、どうしてもそこに"シスター"と"IT'S A NEW ERA"の同意性を見出してしまうのだ。

意を決し先へ進んだとしても、流れは厳しく思うように舵を切れないかもしれない。
先は暗く、何も見えないかもしれない。

しかし、そんな時に胸に秘めるものとは何か。
それは今までのポルノグラフィティの曲たちに散りばめられてきたではないか。

夜ごと、君に話してた未来についての言葉は、
いくつかは本当になって、いくつかはウソになってしまった。
~"ダイアリー 00/08/26"

夜ごと君に話していた約束は今も果たせず
痛みに姿を変えて尚 AGAIN AGAIN
~"AGAIN"

夜ごと君に話した約束たち
今も果たせずにいて
~"VS"


たしかな約束を胸に、荒波へ船を漕ぎ出す。


東の海に舟を浮かべて
誰より早く朝を迎えに
風が便りを運ぶと言うなら
僕に宛てた風は吹いていない

~"シスター"


新世界、そこは誰も知らない未来であり、自らが切り拓いていく世界。

見渡す限りの荒野に ひとり立っているんだ
そりゃ身震いもするだろう
~"瞬く星の下で"


そこに不安や恐れが心に宿ったとしても、自分を信じて一歩を踏み出せば、たしかに未来は待っている。


気分次第で行こう 未来はただそこにあって
君のこと待ってる 小難しい条件 つけたりはしない
迎えにも来ないけど
~"ブレス"


変化をしながら変わっていない、新藤晴一というのはそういう人なのだ。

だからこそ、僕らはポルノグラフィティの音楽に未来を見るのだ。

新藤晴一にとって約束とは、自身が見る旅路の果てなのかもしれない。

けれど約束はまだ果たされてはいない。

それは決してネガティブなものではなくて。

新藤晴一の中にある約束こそが希望という光となって、僕らの行く道を照らしてくれるのだ


夜明けを待って さあ船を出そう
目指すのは 新世界
私のための 場所がそこにある
約束は果たされる

IT'S A NEW ERA


新世界で、僕らは再び歩き出す。


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