2026年10月12日月曜日

【ネタバレ感想】映画「バイオハザード」監督:ザック・クレッガー





2026年に公開されたザック・クレッガー監督「バイオハザード」のネタバレ感想を書きたい。バイオのことしか考えられない。かきたい……かゆい……うま

日本以外の国は公開が早かった※ので、とにかく決定的なネタバレを踏むようなことはないよう気をつけたが、それでも伝わってくるのは、観た観客たちの熱。
※アメリカでは9月18日公開

期待だけが膨らんでいく中で初日のIMAXをおさえ、定時ダッシュで劇場へ向かい、この映画を見届けた自分は。あまりに満たされてしまった。

今年1位は観る前から決まっていたのだが、これはオールタイムベストに入れても構わない。それくらい、想い入れが深い作品となった。

自分はそれくらい好きだけど、内容が内容なので人を選ぶとは思う。

ゲームシリーズのガチファンの自分がどんなところに惹かれたのか、書いておきたい。





ザック・クレッガーが監督するということ




まず、今回の映画の最大のトピックは「ザック・クレッガーがバイオを監督する」ということだ。

メジャーどころの主要な作品としては「バーバリアン」、「WEAPONS/ウェポンズ」というホラー好きを唸らせた彼が、本人も大ファンというバイオハザードを映画にする。
特に「WEAPONS/ウェポンズ」でより強く心を掴まれた監督なので、もしかしたら、と思えたのだ。あの映画観た時、監督ほんとうに頭がおかしいんじゃないかと思った(褒めてる)。


これまでのバイオハザードの実写シリーズは──自分は好きな部分も沢山あるしたまに見返すけど──多かれ少なかれ“言いたいこと”が沢山あったのだ。


たとえば、ミラ・ジョヴォヴィッチ版は最大の功労者はシエンナ・ギロリー演じるジル・バレンタインだが、他にも敵の造形、特に処刑マジニなどは頑張ってたと思う。
(後述するがキャラを実写にするとギャップに苦しむものだが、あのジルは今でも自分はガチ恋するくらい大好きだ)

2022年のヨハネス・ロバーツ監督による「バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ」は、原作が好きな精神は伝わるが、身体がついていかなかった。クリスとクレアはまだ比較的良かったと思うが、他の主要キャラが……ね?
ヨハネス・ロバーツも監督としては好きなんだけど、ちょっとバイオハザードというテーマは持て余してしまっていたと思う。

頑張った役者の方々にも申し訳ないが、あまりに辛くて「ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ」だけ持ってない。基本円盤は揃えてるの。


ネトフリの実写ドラマ? そんなもんない。


少し前に発売したバイオハザード30周年のムック本があって、それの内容がとても興味深いんだけど。





この本で、ファン向けに募ったアンケート結果があった。

その中でシリーズで重要視する要素という質問があって、男女別に集計されている。特に女性は1位がキャラクターということが面白い。男性もストーリーに次いでキャラクターが来ていた。

それだけストーリーやキャラクターが大切にされているシリーズであるというのは、裏を返せばそれだけ思い入れが深いということだ。

ということで、人々の脳裏に染み付いたキャラを生身の役者が演じるというのは難しいものだ。ストーリーにしても、原作をなぞる映画にしたらファンほど「知ってる」ということになってしまうので、やはりホラー要素と相性が悪くなってしまう。
※演出で巧くもできるだろうが、直近で上記要素をやろうとした「ウェルカム〜」が興業的にも評価的にも失敗しているので、尚更このタイミングは難しいだろう


ザック・クレッガーも同じ気持ちのようで、潔くそれを投げ捨てている。

バイオの魅力のうち、

・サバイバルホラー
・錠前などツッコミどころある仕掛け
・感染によって起こる悲劇

そういった要素をフィーチャーした映画となった。つまりはゲームをしている時の自分の心情あるあるを映画化したのだ。


自分はこれが一つの正解だと思う。

原作を知ってるほど、観客は原作との些細なギャップが気になってしまう。

だからこそ、あえて雪景色にしているのも、ウイルスの特性がオリジナルなのも原作ゲームの世界線とは異なる世界線という意志表示だろう。結果的にそこが評価の分岐も生んでしまっているということもある。

このオリジナル設定をまっさらな気持ちで見ることか、原作との違いと捉えるかは、結構大きいだろう。

何がなんでもバイオの設定に忠実でなければ納得しないという人には多分合わないと思う。ただ、バイオの設定と言っても元からな……ということもあるし……


あと今回賛否が分かれる部分として、この作品のコメディ要素が強すぎるというものがあると思う。

そもそも自分は「バーバリアン」と「WEAPONS/ウェポンズ」などを見ても、この人はホラーというよりはホラー要素のある(人は選ぶタイプの)エンタメ作品をつくる作家性という印象を持っていたので、そんなに違和感はなかったが、確かにコメディ要素は多かった。

かと言ってコメディ要素が強いからといってホラー要素を放棄してる訳でもないしね。映画館で「前の席を蹴らないで」って注意流れるけど、今回ジャンプスケアで後ろの人が自分の席に思わず足ぶつけてしまってたのは凄く楽しかった。

ただ、試写でこれよりコメディ要素が多くて削ったらしいので、初稿どんだけコメディだったんだ、とは思う。

好みは分かれるとは思うが、自分は今回のバランス感覚はとても好みであった。ホラーを見る時は半分コメディ観る気持ちでいるからだ。

こうした潔いほど原作の要素を絞ってテーマ的に突き抜けたこと、この感覚はゲームのシリーズの、とあるターニングポイントと重なることになる。









バイオ7の革命的な映画




ゲームにおいて「バイオハザード7」の革命があった。

主要キャラてんこ盛りの群像劇となったバイオ6が、アクション方向に寄りすぎて賛否出たところに、主要キャラをほぼ排して愚直なほどホラーに突き抜けたバイオ7は、フランチャイズに奇跡的な復権をもたらした。この作品に向けてREエンジンが開発されたことも大きい。

結果的に一般人とは言えないが、一応の設定は一般人として巻き込まれ主人公になったイーサン・ウィンターズ。

これだけのシリーズに突然現れた一般人で、しかも顔も出ないのに結果的にシリーズの中でも指折りに入る人気キャラとなった。俺、バイオで泣かされたの全部イーサン絡みだもの。一般人がバイオハザードに巻き込まれるとこうなる、といのはイーサンの真実の部分とも符合する。

巨大になったフランチャイズのリセットの意味合いこそバイオ7の功績だ。


当然ながらバイオ7だって当時から賛否はあったが、この作品がなかったら、おそらく今のバイオハザードの復活はなかっただろう。

結果的に、今回の映画はバイオ7がもたらした功績を、映画で達成していると思う。迷走しまくっていた実写シリーズに、こうした新たな可能性を生んでくれたのだ。

コンスタンティン・フィルムが映画化権を獲得していて、権利を失わないために定期的に映画を創らなければならないというのは、いままで足枷になっていたと思うが、こういう作品ができてしまうと話が違うと言うしかない。


バイオらしさとは、みたいな意見が飛び交ってもそれがなんか議論にならないのは、バイオらしさなんて人それぞれ過ぎて交わりようがない。バイオ=ゾンビというイメージだって、シリーズの中では普通のゾンビが出てくる作品の方が少ないまであるし、シリーズのどこに、何に思い入れを抱いているかによって違うだろう。


自分が思うに、変化こそがバイオハザードの特性であり魅力だと思う。

変化することにおいて意見が満場一致になることは、ほぼないと言い切っていいだろう。僕だって「美味しくなって新登場」を一切信用してない。かと言って変化がなければ、今度はマンネリという否を生み出すことになる。

そもそも本家のカプコンが出すものでさえ毎回賛否を生んでいる。ところで、なんでRE:バースとかいうよく分からない代物出したんですか?


また、この映画の最大の勝因が、昨今のゲーム実況の普及だと思う。もうレッドオーシャンでもあるが。

僕は自分でゲームをプレイしたい方の人間だけど、世間的には同じくらい、いやそれ以上にゲームの発表時に「◯◯さんの実況配信楽しみ」という人がいる。

そうした実況を見る文化があったことと、この映画の構成がうまくハマっていたと思う。

今回の映画に「狩野英孝の実況みたいな映画」と例えたものがバズってたが、俺が言ったことにならないかなというくらい、言い得て妙な例えである。

ただ、この映画については、あるあるという部分で明らかにバイオハザードをプレイしたことある、ということが楽しみを増す仕組みもあるので、やはり実況だけではなく自分でプレイもしてもらいたい気持ちは強い。みんな、ゲームやろう。

大筋はこんな感じの感想なんだけど、ここからもう少し細かい部分の感想を残しておく。


ブライアンの魅力




主人公のブライアンは、イーサン・ウィンターズほど人間をやめてはない、限りなく一般人である。

恋人ととある事情で揉めていたりはするが、序盤から人の善さが目立って早い段階で観客の好感度は高まっている。

それは何より演じてるオースティン・エイブラムスの魅力に他ならなくて。バイオの次の日本公開映画で鯨に呑まれているの可哀想すぎる。





予告などで散々観た「楽勝じゃん」とニット帽を被った後のバカの化身な笑顔だけでなかった。けど、この屈託のない笑顔、本当に演技天才だと思う。バカにしか見えない。

しかも妊娠した彼女との決断をなんとか交わそうとする姿は序盤から印象は最悪だ。

しかしながら最初に車で轢いた“それ”を、ちゃんと追いかけて車に乗せて、パトカー警官にも素直に答えるバカ正直さ。

更にはトンネルの中で出逢った少女との顛末。
「子ども好きなのに」というセリフがまた切なくて良い。どんどん好きになる。

自分が歳を重ねているのもあるが、姪っ子や甥っ子など子どもについての向き合い方が変わってきているのもある。

しかも、あの状況なのにちゃんと荷物は届けようとはしているところが愛らしい。俺ならあの農場で荷物投げ捨ててる。
※任務放棄をギリギリ躱すために噛まれる展開は定番ながら巧いと思った

事態が起きてから セリフのほとんどがFワードなの面白すぎる。サミュエル・L・ジャクソン映画とかオアシスのドキュメンタリーよりFワード多い映画あるんだ。

更にはそんなFワード発声器のセリフを多種多様な日本語役に翻訳した稲田嵯裕里はこの映画最大の功労者だと思う。Fuckって200色あるねん。 


あと2回目を観て思ったけど、ブライアンに選択肢はいくつもあったけど、結局行き着くところは同じだったと思うんだよね。

たとえば、あそこで車で柵に突っ込む前に鍵を見つけてたとしても、結局トンネルで車を降りることになる。
マキシーンの死体から車の鍵を取っても、結局あのビルに行くことに変わりはない。

これがレオンやクリスであれば、噛まれる前に対処していただろう。
ブライアンはタイプライターでセーブしてたらトライ&エラーできたのにね。

詰まるところ、初手であの仕事を受けてしまった以上、この末路は確定してしまっているのだ。

一般人がバイオハザードの世界で生き残るのは、あまりに困難なのだ。でも、あの世界カビをぶん殴って何とかする一般的な狂人(ジョー・ベイカー)もいるからな……


追記
更新してから気づいたけど、彼女の妊娠に「君の身体のことだから君が決めて」と逃げたブライアンが、結果的に自身の感染にどうしようもなくなるの、凄い皮肉が効いてると思う



クリーチャーについて




今回は雪景色でスマホすらあるラクーンシティなこともあって、パラレル設定ではある。マルチバースのことはよく分かっていない。

個人的に1番驚いたのが、かなり序盤の犬で「これ、プラーガ???」と示されたことだ。

元々走ったりするゾンビに、T-ウイルスでなぜ? と予告で思ってたんだけど、プラーガ的な寄生体によるものという設定にしているとは思わなかった。結構びっくりした。

それと予告で隠しているのと、欧米感想でも触れてる人にぶつからなかったの有難かった。
ちなみに日本公開日の夜に速攻で「プラーガ」という単語を見かけた。

公開前に監督が「T-ウイルスではあるけどゲームと別作用」というようなニュアンスをインタビューで言っていた気がするが、これもパラレル設定のうえだろう。

結果的にはアウトブレイク2のニュクス的な要素、プラーガ、G-ウイルスをミキサーしたような代物に思える。最悪すぎて笑える。

原作にも出てこないクリーチャーと化した存在たち、これ、もしかしたらまたゲームに逆輸入されるのでは?と思ってしまうくらい良かった。

特に予告で散々観たドアから出てくる複数の手足が、そういう仕組みでそうなってたのかって分かったり、あの印象的だったボスキャラ風味の肥ったオジサンがあの顛末で外しにくるの面白い。アイツなんだったんだよ。

ブライアンのラストの姿は限りなくG生物のような雰囲気だ。

この作品の続編があってもおかしくないと思うが、続編があるとしたらブライアンが人間を取り戻して恋人と再会する未来があってほしいなと思う。
といいつつバッドエンドでも最高という人間が自分なのだが。



小ネタ?




とりあえず気づいた小ネタ(イースターエッグ)を並べておく。


車でゾンビを轢くのはバイオRE2風味。

雪原を恐る恐る歩く感じはヴィレッジ冒頭っぽい。

農場の小屋のデザインがバイオ4的。

農場の窓には救急スプレーが2本もある序盤のイージー仕様のサービス。

露骨すぎるタイプライター、ショットガンの弾薬箱の再現性。

ショットガンのヘッドショットによる頭の飛び散り方はゲーム初期のものに近い。

ほとんどの鍵は銃で壊れない。

農場の柵の鍵がダイヤの紋章。

トンネル内の車に植物(たぶんグリーンハーブ)。

トンネルのデカいキャンピングカー(バス?)はバイオ7の中庭にあったトレーラーを思い出す。

カメラも要所要所でゲームっぽいTPS,FPS視点になる。

ネズミをマシンガンで一層するのは、アンブレラクロニクルとかガンサバイバーみたいなアーケード系スタイルの雰囲気。

このネズミ、もちろん原作のウイルス撒き散らし要素もあるんだけど、撃たれたあとに集まりだすのとか、ちょっとバイオ0のヒルっぽさも感じた。あれ、あの後どういう形態になるんだろう?

アンブレラ社員にろくな人間がいない。というかクズ。

ということでウイルス漏洩という大参事を「アンブレラだから」で済ませられる便利な設定。

序盤のクリーチャーがしつこく追って登ってくるのは、ネメシスのようでもあるけど、バイオ6っぽいと思う。

酸を吐くクリーチャーというのは、見た目は6くらいに出そうだが、設定としては初代とかのゲロ吐きゾンビを思い出す。

ブライアンの主人公補正が唯一輝く最後の1発のあとのセリフが、「ゲーム万歳(Video game!)!!!」なの最高。

外で始まり研究所で終わる物語はバイオだが、地下に行きがちなゲームに比べて、映画は上へ向かう。

カプコン製ではない(=カプコンは基本絡んでない)からヘリは落ちない。


間違いなくもっとあるけど、とりあえずここまでにする。

最後に。

ザック・クレッガーによる「バイオハザード」はB級ホラー映画をゲームとして落とし込んだゲームだと思う。

そんなシリーズが時代を経て、ゲーム的な要素を映画に落とし込むという円環を迎えた。

実写映画シリーズがこの先どういう展開になるか分からないが、ザック・クレッガーが再び息を吹き込んでくれた映画がまた世間には響いてくれたら嬉しい。





 
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