2018年9月5日水曜日

米津玄師の"Lemon"の歌詞を聴いたことないけど解釈する







このブログは基本的に好きなものを好きなように紹介することをコンセプトとしている。

しかしながら「音楽には時代を切り取る要素が大切」と何度も書いているわりには、最近の音楽傾向を全く持って無視してしまっているなと反省した。

ということで、挑戦として自分のプレイリストにない音楽をしっかり歌詞を踏まえて聴いてみようと思った次第だ。

今年を代表する曲ということでセレクトしたのは、米津玄師の”Lemon”である。


※ここから先は熱烈なる米津ファンの方へ「俺なんかが、おこがましくもすみません」と平謝りしながら書いていると受け取ってください







米津玄師、人気は凄まじい。正直” アイネクライネ”ですらなんとなく聴いたことある程度である。

これだけの人気を誇るだけあって、時代を掴む”何か”が彼に宿っているはずだ。

ついでにいえば、歌詞解釈が結構求められている曲らしいので、相応しいだろう。

インタビューや他の方の解釈を読まずに、どれだけ曲の意図を汲み取れるか、これだけブログで歌詞を解釈してきた自分を試したいという驕りでもあり、エゴでもある。


そして何より。普通であればまず曲ありきで、曲を聴いて歌詞を読むか、もしくは歌詞を読みながら曲を聴く。それが、歌詞を先に徹底的に見てから曲を初めて聴くと、新しい体験が出来そうだという気持ちになったのだ。


では、歌詞を見ていこう。

最初に読んだ時には、ところどころで比喩が散りばめられている上に、その比喩が掴みどころがないので、確かに厄介だぞと思った。
なので、あらためて比喩を除いて見た場合に、伝えたいことは比較的分かりやすく示されているように感じた。

”いなくなってしまったあなた”へ私が問い掛けるストーリーである。

そこに込められた追憶。

それは「あなたがいかに私にとって大きな存在であったか」という語りである。


記憶の象徴としての”Lemon”
ここで少し不思議な感覚になるのが”Lemon”が「苦いLemonの匂い」として登場すること。

“苦い”という言葉であれば本来”味覚”への刺激だが、ここでは”匂い”としている。
さらにはそれが残るのが「胸」つまり心の内なのである。

このどこか倒錯した感覚こそが、あなたを失ったことへの私の痛みを表しているのかもしれない。

人の五感で最も記憶と強く結びついているのが”嗅覚”だという。

ではなぜレモンなのか





この曲は元々ドラマ「アンナチュラル」の主題歌となっている。このドラマは法医解剖医が主人公である。

こちらも申し訳ないことに見てはいないが、概要をそれだけ知っている。

そこから連想してしまうのが”刺激物”の匂い

つまりは”ホルマリン”の匂い。
といってもホルマリンの匂いをちゃんと嗅いだことがないのだけど。

そんな訳ないか。

別れを描いた曲であるが、現在のあなたがどうなっているかは明確には書かれていない。
遠くへ行ってしまったのかもしれないし、私の心情からすれば、亡くしてしまった存在と捉えてもおかしくはないのではないだろうか。


あと興味深いと思ったのが「自分が思うより/恋をしていたあなたに」という歌詞。

基本的には”私”と”あなた”で構成されている歌詞であるが、ここでの”自分”とはどちらのことだろうか。

この自分を”私”と取るか”あなた”と取るかで、歌詞の内容が異なってくる。
私の思っていた以上にあなた”が”恋をしていたのならば、それは私の願望ともいえる。

或いは、私の思っていた以上にあなた”へ”恋をしていたのならば、喪失はより重くなるだろう。


最初にも触れたがこの歌詞って、比喩部分を全て除いたら、かなり分かりやすいのではないだろうか。

あなたとの日々を「戻らない幸せ」としているが、その日々は決して明るいものばかりではない。


「最後にあなたが教えてくれた/消えずに隠してた昏い過去」このフレーズ。つまりはあなたが隠していたかった過去を私に打ち明けてくれるほど親密になったと捉えられる。

「昏い(くらい)」は「暗い」とはまた意味合いが少し違う。

「黄昏」という言葉のように「昏い」は日が暮れて辺りが見えずらくなってきたことを示す。

「切り分けた果実の片方」つまりレモンの断面が太陽を示すというのは言うまでもないだろう。

歌詞中に繰り返される「今でもあなたは私の光」という言葉。

ある種、そもそも光であったあなたという存在が「昏い過去」をも持っていたことで、光が強さを増したとも受け取れる。

それにしてもあなたが悲しんでいるのなら、私のことなど忘れてください、それでもあなたは私の光ですというのは、もう感情が相当迷子だ。


一応レモンについては調べてみた。知らなかったがレモンには「欠陥品」とか「ダメな女」「魅力のない人」みたいな意味もあるらしい。どうやら英語のスラングらしいが。

そう考えると「苦いLemonの匂い」は「私があなたにとって相応しくなかったんじゃないかと思っている記憶」とも取れる。

そう考えると「私のことなど忘れてください」というへりくだった言葉も、どこか繋がる気がする。










……とここまで歌詞だけを純粋に見て書いてみた。

ここからは曲をしっかり聴いて、インタビューを見て答え合わせではないが、曲の印象がどうなるか書いてみたい。


インタビューによるとテーマは「人の死」だという。それはドラマのテーマともリンクするものとして創られた。
そして制作中に自身の祖父が亡くなり死の捉え方が変わっていったそうです。

そして当初は「memento(メメント)」というタイトルであった。だが直接的すぎて鼻についたので変更した。

「胸に残り離れない苦いレモンの匂い」という歌詞は仮歌からあったもので、手を動かしたら出てきた言葉でどうしてもその歌詞しかなかった。タイトルの"Lemon"もそこから取ったとのこと。

つまり、意図せず出てきたのが「レモン」というワードであった。他の曲は分からないが少なくとも"Lemon"という曲は直感的に生まれた一端もあるということだ。
ホルマリンやらスラングやら関係なかった。

果物のモチーフは構造が、皮があって、肉があって、種があるっていう、その構造自体が人間の体と共通してる。
なるほどな。結構面白い発想の人だ。

ドラマのプロデューサーからのオーダーは「傷ついた人たちを優しく包み込むような曲」
この言葉を受けて歌詞を見ると、主観的でありどこか俯瞰して、自分のことを客観視している目線に納得がいった。

ということで意味があったのか分からないが、歌詞解釈してから曲を聴くという前代未聞の暴挙をしてみた。


では、曲。

ようやく聴いてみました。






変な意味ではなく、奇を衒わないサウンド。

ちょくちょく音は面白いけど、基本的にはメロディの良さと声を最大限活かすような構成で、こういう曲こそ普遍的な名曲と云われるのだなと思った。

意外と近年でこのサウンドでそれをやれるアーティストは、メジャーのステージでいないんじゃないだろうか。
とりわけポップス、時代を映す曲というのはメロディの良さが本当に大切なのだなと思った次第だ。


ただ。それでもなお、なぜこの曲がここまで天下を取ったのか、おっさんになった僕には正直まだ掴めないというのが正直な感想だ。


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