2018年10月8日月曜日

記憶と嗅覚 ポルノグラフィティの楽曲で「匂い」が出てくる歌詞を分析する







最近、アホのくせに一丁前に「プルースト効果」について考えている。

プルースト効果とは、簡単にいえば「匂いによって人の記憶が呼び起こされる」というものだ。

フランスの小説家マルセル・プルーストが小説『失われた時を求めて』で書いたエピソードの由来する。主人公の「私」がマドレーヌを紅茶に浸して口にした時に、過去の記憶が甦るという話だ。






小説としてはとても長い話だが、名作なので、まぁ読んでない方が無粋というものだ。ちなみに僕は読んでいない。

かのように、人の嗅覚と記憶は密接に結びつく。聡明な僕は鼻から入った匂い成分が直接脳にも影響するのではないかと、推測しているが、生憎僕は鼻炎持ちなので証明出来ず悔やむばかりである。

本題に入ろう。ポルノグラフィティの楽曲においても、しばしば「香り」が登場する。匂い、臭い、悪臭、様々であるが、これもまた記憶に結びつく重要な要素となっている。

ということで香りという観点からポルノグラフィティの歌詞を見ていこう。







失恋のにおい




最も印象的に登場するのが、失恋曲である。

真っ先に浮かんだのは「サウダージ」のカップリングである"冷たい手~3年8ヵ月~"だ。


もしも僕の部屋に君の匂いが
残っているのならば返してあげるから
あんなに注ぎ込んだ愛の結末
救われないのならば溢れて還らないでいい


「君の匂い」がそこにある限り、僕は君を思い出してしまう。追憶さえ痛みに変わるなら、君の記憶さえ消してしまいたい。

恋愛って、大袈裟に云えば相手の全てを受け入れてしまえると思う気持ちなんだと思う。だからこそ、それは記憶として君が残した欠片にさえ気づいてしまう。

同様に現在進行形で進む別れ話で、後にその記憶となる「におい」が登場するのが"サボテン"と"別れ話をしよう"である。

"サボテン"では「雨のにおい」や「冷たい風」を主人公が感じる場面で始まる。心模様を写すかのような雨。雨のにおいで思い出すのは、そんな日でもサボテンに水を与えていた君、そしてそんな雨のにおいは君がいなくなった日々に塗り替えられていく。

雨はその度に君を思い出させることだろう、愛し合った日々を、別れの日を。


"別れ話をしよう"は「『東京』ってにおいのする この暗いBarで」という出だしで始まる。そこから恥じるのは、タイトルの通り、別れ話。

都会的な空気に溶け込む紫煙と、バーボンのにおい。
こおりは溶けてしまっても、そのにおいはいつまでも2人の記憶となる。


香りと別れ。最近では"夜間飛行"においても「甘く香るの 私好みじゃないパフューム」というフレーズで登場する。君の全てを受け止めていながらも、君は飛び立ってしまう。

君への想いが強く滲んでしまう、それこそが「私好みじゃないパフューム」という言葉に詰まっていて、やはり泣けてしまう。










夏の香り




逆に受かれてしまうような夏を感じさせる匂いも登場する。それが"狼""ルーシーに微熱"である。それぞれ「アゲハ蝶」と「THE DAY」のカップリングナンバーである。


狼では「熟した果実からむせかえる芳香りに Love was born 」
"ルーシーに微熱"では「マリブビーチの香りが 誘惑を予感させた 」


それぞれ南国を思わせるような、空気を感じさせる。太陽と海、まさにそんな国。僕は南国行ったことないから嗅いだことはないけど。

もちろんマリブビーチはカリフォルニア、ロサンゼルスである。南国ではなく、西海岸だ。それなら僕は知っている。あれだろ、ほらゼブラヘッドみたいな。

というか歌詞のマリブビーチはカクテルを指しているので、そもそも違うのだ。このフェイクに普通なら騙されてしまうだろう。「古畑任三郎」で犯人を外したことなくて、「名探偵コナン」や「金田一少年の事件簿」の犯人を勘だけで2~3割当ててきた僕にとって見れば容易いことだ。ジンみたいなポンコツと一緒にしてもらっては困る。


段々と悪ふざけが過ぎてきたので次に行こう。
最後は「悪臭」である。



悪臭




悪臭は"ラック"や"リビドー"のようなロックテイストが強い曲に登場する。

"ラック"「ずるい現代の 悪臭にだって」
"リビドー"「だけど隣の部屋から漂う"生活"という悪臭において/身の毛がよだつことに遭遇」

のように直接的な臭いというよりも、時代の空気だったり、日常を忘れるほどの快楽の最中に飛び込む生活の臭いといった"空気"を彷彿とさせている。

そして、この度新たな悪臭が誕生した。それが最新曲"Zombies are standing out"である。


ただ歩いているけど無目的で
ありつけたご馳走には悪臭が漂った


もちろんそのままというよりは、メタファとして使われている言葉である。このフレーズを見るたびに「煮え湯を飲まされる」という言葉が浮かぶのは、僕が病んでいるからだろうか。


【番外編】
"Search the best way"「未来まで待ちぶせしてしまうくらいに/光のにおいする方 走って行くんだ」

「光の射す方へ」というのは歌詞の定番であるが、こうして「光のにおいする方」という歌詞が絶妙だ。

ある意味で現代において必要なのは、未來を見据える力よりも、それを嗅ぎ取る嗅覚なのかもしれない。


ということで見てきた。

後半というか最初以外、ほとんど記憶と関係ないではないかというツッコミは大いに正しい。僕も書き終わって困惑している。

しかも最後に至っては記憶はおろか未来の話ではないか。

プルーストどこに行った。

マドレーヌを紅茶に浸せば思い出すのか?


最後までお付き合いいただきありがとうございました。



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