2019年3月15日金曜日

続・「UNFADED」ツアーとは何だったのか 完全ネタバレで徹底的に考察する







WOWOW収録の入った、「UNFADED」ツアー横浜アリーナ公演二日目。

初日はMCをなるべく書いたが、映像でもそこそこ残ると思うので、二日目のレポはとりあえず一旦置かせていただく。

そこで、あらためて「UNFADED」ツアーの自分なりにどう受け止めたかを中心に書いていきたい。

静岡初日を受けて「UNFADEDツアーとは何だったのか」という記事を書いてしまったが、あれから時間も経ち、新しく思ったこともあるので、それについて。


「UNFADED」ツアーとは何だったのか 完全ネタバレで徹底的に考察する


所々重複するか箇所もあるがご容赦を。


タイトルに入っているが、あらためてネタバレ注意。



続・「UNFADED」ツアーとは何だったのか 完全ネタバレで徹底的に考察する









セットリストについて




ポルノグラフィティの20年を詰め込んだセットリスト。静岡でも書いたが、初期の曲と最新の曲が中心で、その対比がどう映るかという問い掛けであった。

初期の曲が今も色褪せてないか、そして同時に今の曲が昔の人気曲に負けていないか。

3公演見ていて、反応がどんなだったか振り返ってみる。


自分の印象として、とりわけイントロでの歓声が大きかったのが"ヴィンテージ"と"Zombies are standing out"ではないだろうか。

根強い人気を誇るが久しぶりの披露となった"ヴィンテージ"と、2018年秋にリリースされたばかりの"Zombies are standing out"は、同じくらい大きな歓声とともに迎えられた。

つまり、セットリストの狙いは完璧に当たっていたのではないだろうか。それは新旧問わず、それを鳴らしている"今のポルノグラフィティ"が如何に強い魅力を持っているか、ということも表している。

これまで多くのアーティストをライヴで見てきた。
その中には常に過去のヒット曲や代表曲が求められ、それを外せない上に、新しい曲はあまり反応がない、というアーティストも国内外問わず数多くいた。

それを思うと、過去の人気曲と、最新の曲が同じように聴かれ、求められるというのは、現役バンドとして、こんなに理想的なものではないのではないだろうか。

それも、これだけマニアックな曲たちを並べても、まだまだ「あれが聴きたい」「これが聴きたい」「"小規模な敗北"が聴きたい(切望)」など、まだまだ聴きたい曲があるファンが多いのではないだろうか。


その傾向もバラバラで、それほど聴きたい曲がバラけるアーティストも、珍しい。もちろんそれほど曲数があるということだが。それで思い出したのが「ラヴ・E・メール・フロム・1999」ツアーである。

あのツアーではライヴで聴きたい曲のアンケートが行われた。

その結果がライヴに反映されていたのだが、そこでの岡野昭仁の言葉を思い出す。


「アンケートなんですけど有難いことに、もちろん票数の多い少ないはあるけど、全部の楽曲に票が入っていました。僕らの曲を隅々まで聴いて貰えてるんだなと嬉しくなりました」


そんなことを言っていた。
今回のMCでは「サブスクで聴いてこんな曲あったかと思い出したりしていた」と語っていた。本人たちですらそれくらいの状態だ。

つまりは、ファンはそれほどポルノグラフィティの音楽を愛して、聴き続けてきた。ということなのだ。

これだけの曲があっても、票が全てに入ったほど、人それぞれに、それぞれの大切な曲がある。このツアーで、この曲が聴きたかった!という念願が叶った人がどれほど多くいることだろう。



Swingとヴィンテージ





セットリストには"Swing"と"ヴィンテージ"が日替わりで演奏されていた。

基本的には初日"ヴィンテージ"、二日目"Swing"という流れだったが、福岡からなぜか逆転していた。そのため、友人は横浜二日目で"Swing"を聴くつもりが聴けなかった悲劇に見舞われた。

"ライオン"と"DONT CALL ME CRAZY"の日替わりもあるが、こちらはロックな面のポルノグラフィティを見せるというため、そこまで違和感ない。

しかし"ヴィンテージ"と"Swing"はなかなか面白い2つが並ぶなと思っていた。

別に意図的にではないかもしれないが、並べるにしては毛色の違う2曲なので、深読みしてしまいたくなる。

どちらも「時間」が描かれる。"ヴィンテージ"では2人の恋愛をワインに例え、時とともに成熟していけという願いが込められている。

一方"Swing"は「薄れてゆく だけど消えない記憶なのさ」という歌詞にあるように、時が経っても消えない記憶がある。最後に「君を忘れてしまおう」という歌詞は、僕は主人公の強がりとして聞こえる。

恋愛と失恋、その状況は相反するが、実は根底にあるテーマは共通していて「時とともに変化するもの」を描いている。

ワインは時とともに熟成されるもの、虹や雨はいつか消えてしまうもの、そして愛は心に留まり続けるもの。

横浜でのMCではなくなってしまっていたが、静岡初日で「時とともに色褪せないものがあれば、色褪せてしまうものもある」という言葉があった。

その言葉にあるメッセージが"ヴィンテージ"と"Swing"に込められている。

それを日替わりにしてしまうのは、なんて贅沢なことを。


"ヴィンテージ"は赤が基調の映像。
"Swing"はモノクロの波など風を感じさせる映像で、最初とギターソロ辺りで曲名が出ていた。

映像としてどちらもとても凝っていて、正直"Swing"が映像に残らないのは残念であるが、「BUTTERFLY EFFECT」のパターンで映像作品で収録されなかった曲たち"Hard Days,Holy Night"、"Century Lovers"(カウントダウン)、"ライオン"そして"Swing"が特典映像として復活することを祈る。

今の2人が奏でる"Swing"は、それほど感動的だったのだ。
"ヴィンテージ"はベストにも入るほど人気だけど、"Swing"は「ライブ"RE・BODY"」で初披露されて以来である。

それも「ライブ"RE・BODY"」でさえ、まだライヴでやったことない枠(この時点で岡野昭仁は「こんな曲あったってけ」と言っていた)として演奏された。そうすると岡野昭仁が弾き語りの時に言っていたサブスクリプションで「お、これは実は隠れた名曲では?と思った」曲は"Swing"だったのではないかと勘繰ってしまう。

名曲だよ!"Swing"は!!

と声を大にして言いたい。










20年




20年の間に、ファンだけでなく、それぞれの中に「自分にとってのポルノグラフィティ」があって。

そうした時に思う。

ポルノグラフィティにとって、僕らはどうだっただろうか。

ファンはワガママで、いつでも思いのままに意見する。

時には本人たちにとって辛辣な言葉だってあったはずだ。
それでも20年という歳月、その間に大切なメンバーが離れても、岡野昭仁と新藤晴一はその歩みを止めることはなかった。

そうして辿り着いた「UNFADED」というツアーで、岡野昭仁は言った。


「20年間やってこれたのは、何よりも皆さんがポルノグラフィティを求めてくれたから」


ここ数年で、今までよりも強く、2人は僕らファンのことを「自分たちを支えてくれたもの」と言葉にすることが多くなった気がする。

ファンはいつだってこんなワガママなのに2人は、どこまでも優しく、大きな存在だ。

僕には何かを生み出す力はない。
それはコンプレックスにも似た思いである。何かをクリエイトできる人を尊敬するし、嫉妬に近い感情さえ抱いてしまう。

だけど、精一杯受けとめることはできる。
それが「ポルノグラフィティの音楽を求める気持ち」であるならば、それしかできない僕の感情が、ポルノグラフィティを動かす歯車のひとつに繋がっているのであれば。

求めることは只のワガママなはずなのに、それを原動力として20年が繋がってきたのなら、それほど嬉しいことはない。



幸せについて本気出して考えてみた




横浜アリーナ公演でより感動したのが"幸せについて本気出して考えてみた"だった。

二日目のイントロで岡野昭仁は叫んだ「幸せになろうぜ」


幸せについて本気出して考えてみたら
いつでも同じ所に行きつくのさ
君も幸せについて考えてみてよ
後で答え合わせしよう 少しは合ってるかな


僕が幸せについて考えたとき、その多くはライヴというく空間にあった。
ライヴという会場で、それぞれのポルノグラフィティ、幸せの種を育てたものを持ち寄って、そこで演奏された楽曲で答え合わせをする。

それは正解のない、正解をみんなで見つける瞬間。


それとなく流れていく日々のそこかしこに
君がいて 次々と溢れる気持ちを胸に


人生の幸せな瞬間も、辛い時も、いつでもそこにポルノグラフィティの音楽があって。

ライヴという場所に行けば、どんな日常も晴れてしまうほど楽しくなれて。

そんな場所がこれからも、続いていくならば。
“それなりに”人生を頑張って生きてくことができる。

幸せの種は、いつもそこにあるのだから。




続・∠RECEIVER




改めて"∠RECEIVER"という曲を考える。

スクリーンに映された後ろ姿、その背後に映る争い、災害。

そして、この歌詞は果たして何を意味しているのか、考え直した。


この目よ 虚構を射よ この耳よ 意志を聞け
迷いを打ち消すのは綿密に練り上げられた 自信(CONFIDENCE)


2011年につま恋、そして東北でライヴが行われた時に"∠RECEIVER"は演奏された。その当時を思い返した。

つま恋で、東北で"∠RECEIVER"を演奏したことは、今でも並大抵の決断ではなかったと思う。たとえば事務所の大先輩の名曲が、その"TSUNAMI"というタイトルだけで、曲を演奏することを控え、2019年3月現在も演奏されていない。

それほど多くの人が傷ついた。その事態に。

当然のように"∠RECEIVER"も封印されるものだと、覚悟していた。しかし、2人はあえてライヴの最後にメンバー2人だけでステージに残り"∠RECEIVER"を演奏した。

あらためて、あれは僕らに向けて「託された曲」だったんだと思う。


当時のカフェイン11で、新藤晴一は「"∠RECEIVER"をやるかどうか、自分の内から出たものを演らないっていう選択が自分の中になかった。だけど、なるべく誤解のないように。その言葉だけで傷ついてしまう人もいる。しかし、ちゃんと聴いてもらえば届くと思う、それが表現できているって」というような言葉を残していたと思う。

それをミュージシャンのエゴと呼べるだろうか。
それをエゴと呼ぶのなら、表現者の驕りと言うのなら、表現とはなんだろう。

本当に伝えたいメッセージではなく、その手前の言葉を抜き出してしまえば"∠RECEIVER"は災害を思い返させる辛い曲となる。

しかし、本当に伝えたいメッセージはそれではない。だから、あえてポルノグラフィティは演奏した。

だからこそ「逃げない」という歌詞に心打たれた。涙した。

信じたのだ。僕らが、その"∠RECEIVER"の本当に伝えたいテーマを受け取ってくれると。

表現とは、人の心を乱すことだ。
心に浸け入り、価値観を覆すような衝撃を与えるもの。

衝撃でもいい、共感でもいい、そこで確かに心が動いたなら、それこそが表現しているということではないか。

ポルノグラフィティが表現者として伝えた決意。


その決意が「UNFADED」ツアーで再び問いかけられた。
「ワシらの決意は色褪せてないかな」という問いと同時に「君たちはあれから"∠RECEIVER(受信者)"でいられたか」という問いでもある。

8年が過ぎた。

世界は動き続け、この星の裏側でも僕たちの足下でも、ありとあらゆる事件、事故、災害が起きている。


ポルノグラフィティは"∠RECEIVER"を演奏できたことを誇りに思っているわけではない。

本当に誇りに思ったのは、"∠RECEIVER"の伝えたいメッセージをきちんとファンが受け止めてくれたこと、そんなファンたちと歩んで来れたことではないか。

だからこそ、20周年を前に、それを伝えたくて本編最後という大切な場所で"∠RECEIVER"が演奏されたのではないだろうか。



"ライラ"に泣いた夜




どう考えても泣く曲ではない。


強いていえば僕にとっては、「UNFADED」最後の日だったので、その最後の1曲ということで涙腺が弛んでしまったのかもしれない。

とにかく、最後の最後で"ライラ"に涙していた。
それは横浜アリーナ初日から少し感じていたのかもしれない。


歩き疲れたら帰っておいで 懐かしい歌など唄いますましょう


このフレーズから思考が暴走してしまったのだ。

よく言われるように、ファンにとってポルノグラフィティは「ホーム」のような感覚だ。日々の中で、違うアーティストに熱をあげたりしても、最後に帰ってきてしまう場所だ。

そう、ワガママなファンを2人はいつだって優しく迎え入れてくれる。

まさに"ライラ"の世界観は、ポルノグラフィティのライヴそのものではないか。

時に素通りしてしまっても、一度その扉をくぐれば、あたたかく迎え入れてくれる。そして、そっと寄り添ってくれる。そう、まるで"ブレス"のメッセージのように。あたたかく優しい場所でいてくれる。

客席に向かって手招きしながら「歩き疲れたら帰っておいで」と唄う岡野昭仁の姿。

もし、20年後にポルノグラフィティがまた横浜アリーナ公演をやるとして。

そこで。


懐かしい歌など唄いましょう


"ライラ"が唄われる光景、そんなのが広がってたらいいな。
まさに「ラ・ラ・ランド」のラストシーンのように、そんな if が頭を過って。


そうなればどんなに素敵だろう、と思えて泣けてしまった。




続「UNFADED」ツアーとは何だったのか





「UNFADED」ツアーは多くのファンにとって、大切なツアーになったのではないか。

時間とは。

忘れたい記憶も、忘れたくない記憶も。

色褪せてしまうものも、色褪せないものも。

僕らの中にあって。

それでも確かなものは、そこにあって。

時の流れを止めることはできないが、確かな今を分かち合うことはできる。ライヴとは、そんな場所だ。

ライヴの一瞬一瞬に永遠が宿っていて、決して色褪せない記憶となって未来へ繋がっていく。

どんな楽しい瞬間にも終わりは訪れる。

それが生きていくということ。

生きていくことは、何かを残していくことだ。

そこに意味はない。しかし、確かな今がそこにある。

それを求める人々がいる限り。

音楽は決して色褪せない。

それが。

LIVEであり。


それは。


「UNFADED」



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