2023年5月26日金曜日

ポルノ新曲"アビが鳴く"が凄すぎて怖くなった




ポルノグラフィティの"アビが鳴く"。

広島G7サミットの応援ソングとして書き下ろされた新曲である。

先日、突如発表されてファンたちを驚かせた曲だが、カフェイン11でフルサイズが宇宙初披露されたことで、ファンたちを更に恐れおののかせた。

僕自身も大驚失色(たいきょうしっしょく)の心地で、あまりの衝撃に、本気で感想記事を書かずに逃げようかと思った。

しかしながら、これだけの大役とテーマから逃げずに、真っ向から向き合ったポルノグラフィティに対して、ファンとして逃げるわけにはいかない。

ということで、かつてないほどのプレッシャーの中、書いていこう。まぁプレッシャーは勝手に感じてるだけだが。

※途中で理由には触れますが、いつも以上に情緒不安定、支離滅裂状態です



"アビが鳴く"の凄み




楽曲について現時点での情報では、

作詞:新藤晴一
作曲:岡野昭仁・tasuku
編曲:tasuku

というクレジットのようだ。
※正式に出たので更新しました


新曲として発表された際にアップされたワンコーラスのリリックビデオ。




この時点でも、相当心に刺さっていた。

[追記]
メッセージビデオもアップされたので載せておきます。




発表された時点では、アビって正直なところ知らなかったのだけど、調べてみたら広島の県鳥で、Wikipediaにはこんな記述まであった。

その鳴き声が、壇ノ浦の戦いによる平家の滅亡を悲しむ声とされたことによる

これ見て思わず「怖っ」て呟いてしまった。
間違いなく、意識していない訳が無い。


ポルノグラフィティが平和というテーマに本気で真っ向から挑んできた。

ただでさえ先のツアーで"OLD VILLAGER"なんていうサプライズぶち込んできたのに、ポルノグラフィティ、なんなんだよ。


しかしながら、カフェイン11でフルサイズが宇宙初オンエアされたら、揺さぶられていた脳を更に本気でぶっ飛ばされた。

この曲のどこにぶっ飛ばされたかといえば、ポルノグラフィティがこれほどのテーマを音楽として、ポップソングとしてあまりに見事に昇華していたからだ。

これ相当な離れ業をやってのけてると思っていて、本気でポルノグラフィティが怖くなった。
凄すぎて本気で「俺、これ書けねぇ」ってなったもん。

完膚なきまでに叩きのめされた、ってこういうことを言うのだと思う。


まず、フルサイズで聴いた人が最も驚かされたであろうCメロについて触れたい。

最初にリリックビデオで発表されたワンコーラスでは、ミディアムテンポで落ち着いた曲という印象だった。

特に冒頭のサビ〜イントロは特に強めにリバーヴが効いていて、音像が"シスター"とか"IT'S A NEW ERA"を聴いて思い浮かべた情景に近いものを感じた。

それがギターソロを経たCメロから一変する。

綺麗事が綺麗事と なぜか揶揄される現実
お伽の国に龍宮を 見たいわけではなくて
万の言葉の声を超えて行け
この地上を語る綺麗事


「現実(うつつ)」はズルすぎるだろ。やられた。


平和を祈る気持ちに対して、また違う角度の視点を切り込んでくる。

この曲、展開に度肝を抜かれたファンは多いことだろう。僕も大層びっくらこいた。

最初の「綺麗事が綺麗事と」の部分。

そこまでは比較的語尾を伸ばし気味で、余韻を残すような歌い回しだったところに、ラップ調と言ってもいいくらい語尾をハッキリと切った歌い方に変化する。

それからCメロ後半の「万(よろず)の言葉の~」になると、歌声が少し機械的なエフェクトがかかり、最後にまた出てくる「綺麗事」は巻き舌に近いほどに、生々しく、切実に訴えかけゆような歌になる。

このワンセンテンスごとに目まぐるしく変わるような展開は、決してただ奇をてらっただけの仕掛けではなく、ちゃんと明確に意図があるアレンジだと思う。ちょっとこの辺りは後述にする。


それに付随して本気で怖いと思ったのは、1曲の中でこれほど様々な歌声を使い分けている岡野昭仁のヴォーカルだ。なんなのこの人。

アルバム「暁」で、またファンをビビらせるほど、歌の力を上げた。進化の仕方が飛躍的すぎてヴォーカル界のゴリスと呼んでいる。


この人だけ精神と時の部屋に住んでんの?ってくらい才能の標準ブレーキが壊れてる。たぶんうちの姪っ子や甥っ子より成長スピードが早い。

アルバム「暁」でヴォーカリストとしての表現力の豊かさを見せてはいたけど、お世辞抜きにこの"アビが鳴く"1曲で、その集大成を見せつけられた感さえある。

それを最も強烈に感じたのが、最後の「明日に 明日に 祈るよ」。2回目の「明日に」のかすれ気味の歌い方と感情、ちょっと凄すぎやしませんか。

ここでCメロからずっと飛べるほどの立っていた鳥肌が羽化した。

ヴォーカリストとしての進化じゃなくて人類として進化してんだろ、この人。

さて、改めて歌詞についても触れておきたい。








"アビが鳴く"の言葉




今回は歌詞考察とは少し趣旨が異なる。

それは最初からテーマが「平和」と明確になっているからだ。
 
新藤晴一の中でも、特に意識的にメッセージを伝えている。
解釈の余地とか考察がいらないように、誰が聴いても、この言葉(いのり)が届くように。

かといって歌詞が単純かといったら、そんなことないわけで。なんなのこの人。

とりあえず、僕がフルで聴いた時、最初に思ったバカみたいな感想を白状しておく。


「日本語って、めちゃくちゃ豊かで美しいな」


だって、そうなるよ。

雲が風に流れ行くように
記憶も感情もずっと
同じ姿ではいられはしない
時間と旅をするの

表現の豊かさ、情景描写の佳麗さよ。

「時間と旅をするの」ってフレーズ聴いた瞬間、もうさ、うっとりし過ぎて溜め息が出てしまったよ。

新藤晴一が「旅」って言った瞬間に、全細胞がこうなった。





俺が日本語つくった人だったら新藤晴一に三つ指ついて土下座している。


Cメロの中では「現実(うつつ)」という言葉が出てくる。

当て字の元は「現(うつつ)」。
この言葉はそのまま「この世の現実」って意味もあるけど、「夢うつつ」のような使われ方もする。

「夢うつつ」って夢と現実の区別がついていない状態で、語弊を恐れずにいえば、まさに今の僕らを取り巻く"平和"というものが、そんな存在になっていると思う。

世界のある場所では紛争が続いている、日本だってミサイルが飛んでくる、それでも僕は今日を呑気に生きている。
正直にいえば、僕は平和というものに夢うつつでいるのかもしれない。

だから、"アビが鳴く"と向き合うことに、どこか後ろめたさを感じてしまって、僕は何度も記事をボツにした。たぶん5記事分くらいはゴミ箱にボツファイルが入っている。

この「夢」が眠りながら見るものか、願い叶えようとするものなのか、僕にはまだ答えられない。


ここら辺の解釈はどうしても人それぞれに想いがあると思うので、あくまで僕個人の話として受け止めてほしい。

そんな中でだいぶひねくれている自分には、平和というテーマは、とても心苦しい。

それに対して「平和」というテーマを、突きつけることなく、ただ優しく問いかけてくれるものを、僕はスピルバーグの映画くらいしか知らない。

教えられることってキッカケでしかなくて、そこから何に気づくかが本当の学びなのではないだろうか。

アルバム「暁」とか"OLD VILLAGER"でもやられたと思っていたなのに、なんで更新してくるの。

では、最後に考察という名のこじつけを。



"アビが鳴く"の視点




最後に"アビが鳴く"に秘められた(と思う)メタ的な視点を考察したい。

冒頭のサビが最後にも繰り返される構成になっているんだけど、これって果たして同じ視点なのだろうか?

何かというと。同じ景色を見ながら、この同じフレーズの間には数百年、千年の歳月が流れているかもしれないのだ。


それと後述するといったCメロの展開になるが。
ここの怒涛のアレンジの理由はその前にあると思っていて。

雲が風に流れ行くように
記憶も感情もずっと
同じ姿ではいられはしない
時間と旅をするの

アビの鳴き声が檀ノ浦の戦いから語り継がれているように。

歌詞の言葉で時が刻まれているように、楽曲としてもポップミュージックの全てをかけて時を描こうとしている。

人間が様々な音楽を生み出してきたことのメタファでありつつ、ポルノグラフィティがポピュラー音楽の世界で、24年の間ありとあらゆるジャンルを呑み込んで活動してきたことにも重なる。

新藤晴一がこの曲で語っていた臨機応変に譜割りなども自由に変えながら、それでもポップソングとしてフレーズを繰り返すことの大切さ、口ずさめることのバランスを意識したという。

これもまさに変わること、繰り返されることのメタ的なレイヤーとなっている。

変わっていくことで、変わらないものを描いているのだ。

歴史から過去、過去から今、今から明日、そして明日から未来へ。

"アビが鳴く"は全ての時を駆け抜ける。


それを考えたときに、ようやく気づいた。

どうして、ポルノグラフィティが"アビが鳴く"にたどり着けたのか。

僕らの生まれてくるずっとずっと前にはもう
アポロ11号は月に行ったっていうのに
僕らはこの街がまだジャングルだった頃から
変わらない愛のかたち探してる

変わらない想いが、最初からそこにあったのだ。

だから、なんかね。カフェイン11での"アビが鳴く"初オンエア時に板屋監督がゲストだったことも。もうさぁ、運命としか思えないんだよ。

ポルノグラフィティだから、こうなった。

いま自分に溢れた感情の意味が全部繋がって、ちょっと泣きながら書いている。

それくらい、ポルノグラフィティのファンであることが嬉しくて、誇らしい気持ちで溢れている。

俺、本当にポルノグラフィティのファンでよかった。


時は過ぎ行く。

形あるものはいつか、なぜか脆く壊れていくとしても。

けれど。

それを願う人の心は、決して壊れることはない。

僕らがいなくなった未来にも、同じ祈りがきっと続いていく。

この曲が願いではなく、祈りの曲であり続けますように。

人が大鳥居に恒久の祈りを捧げてきたように。

明日に、明日に祈り続けよう。

時間は距離じゃないのだから。


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