アルバム「暁」より"悪霊少女"の感想と考察。
ダークでゴシックな雰囲気という前情報に、果たしてどんな代物になっているかと思っていたが、想像以上の世界観だった。
本当はアルバム総括の記事を書きたいのに曲に触れると「詳細は別の考察記事に譲る」で全部終わりそうなので、諦めて曲ごとに書いていくことにする。
今回は曲順番的に"悪霊少女"にしたけど、想いがより溢れたら順不同にしていく。
あくまでも今この瞬間に感じたことなので、今後インタビューとかツアー後になにか掴んだから改めて書く前提なのはご了承を。
"悪霊少女"①
90年代っぽいテイストのアレンジがクセになる。
一時期こういう曲流行ってた時代あったよね。それでいてボカロ曲、アニソンっぽさみたいな現代も感じる絶妙なアレンジ。
アレンジは江口亮、そしてストリングスの共同アレンジに友野美里がクレジットされている。
この2人は今回のアルバムでは先行配信された"証言"もアレンジしているけど、曲の方向性としてはまったく違っている。
他の編曲者たちにもいえるが、ポルノグラフィティだけでなくアレンジャーたちの引き出しの多さにも驚くばかりだ。
ちなみにイントロの柔らかいストリングスだけ最初「なに?ミスチル?」となった。
※他の曲でもちらほらそういう瞬間がある
そこから歌い出しで印象がだいぶ変わっていく。
神父は言う 少女には悪霊が憑いたのだと退散せよ 父親は十字架をかざした
胸を刺す痛みに少女は身悶え苦しむ
いきなり「エクソシスト」か?「エミリー・ローズ」か?みたいな歌詞が炸裂する。それにしてもAメロのベースめちゃくちゃカッコイイな。
ダークファンタジー的な雰囲気ということでブラッドボーンみたいな重めの世界観の曲を想像していたけど、メロディは良い意味で軽めで聴きやすい。
やりようによっては北欧メタルみたいなアレンジになりかねない歌詞だが、なぜそういう曲調になっているかいうと、次のラインで判る。
それこそが恋だとはまだ知らなかった
新藤晴一、この野郎。
すみませんあまりに驚いて暴言を吐いてしまいました。
ここで「恋」を持ってくるというのに、完全にやられた。
この曲は悪魔憑きのホラーな顔をして、実は普遍的な「恋」を歌っているのだ。
まだ恋という感情を知らない少女にとって、未知のものである恋も悪霊も変わらないものなのだ。
(Forbidden) 暗黒の館には決して(Go away) 足を踏み入れてはならない(Forbidden) 出口には錠が落とされて呪いの儀式で身を焼かれる
Forbidden(禁断)から始まるサビ。禁断とは「暗黒の館」に入ること。
暗黒の館はそのまま「未知の世界」を示している。
自分の中でこの歌詞の少女にどうしても「ストレンジャー・シングス」のイレブンを重ねてしまう。未知の世界という印象はそれに大きく引っ張られてる。
同時に「踏み入れてはならない」という世界に対して、それでも踏み入れてしまう子どもの好奇心を重ねているんだと思う。
そして一度足を踏み入れれば、その感情に気づいてしまえば、もう戻ることはできないのだと。
妄想がどんどん肥大していく感じが、幼さを感じさせていて面白い。
考えてみると神父から連想される教会って、結婚式のように祝う場所でもあれば、死者を弔う場所でもあるんだよね。
神父という存在の神秘性というものがそういうところにあると思って。
2番に入ると、少女は自分の中に生まれた感情と向き合っていくことになる。
悪霊少女②
母に聞いた このままじゃ私ではなくなっちゃうの?我らは戦士 戦うの 生涯をかけても
手を伸ばしてもすり抜けてく影しか持たずにそれこそが恋だとは信じたくない
「我らは戦士」のくだりは母親が答えてるのかなと思う。「ゲーム・オブ・スローンズ」の世界にいそうな人だな。love soldierが重火器持ってる。
(Can you hear?) 不気味な雷鳴が轟く(Awakening) 闇夜にのまれてはならない(Can you hear?) 生暖かい泥のような甘美の夢から逃れられない
「逃れられない」のロングトーンやばい。
音源としたら最長じゃないか。
2番のサビでもダメだとわかっていながらもそこに惹かれ、足を踏み入れてしまう様が描かれている。
そこにあるのは少女の中にある好奇心で、その好奇心の根幹にあるものこそ恋だ。
たとえば新藤晴一は"愛が呼ぶほうへ"で愛そのものを擬人化してみせた。ある意味"悪霊少女"で少女は、自分の変化させた知られざる恋という感情を悪霊に例える。
もしかしたらアホな父親が変な事を吹き込んだり、映画でも見せたのかもしれない。それで悪霊少女は自分が自分でなくなってしまう、悪霊が憑いたのだと想像に浸る(少女なりにそういう遊びとしてやってる可能性がある)。
新藤晴一が小さな子どもを歌詞で書くときは、子どもが持つ純粋性みたいなものを信じて書いていると思う。
それにしても悪霊少女はイレブンとも重なるけど、そこはかと感じる雰囲気として、実はフリルのスカートはいてるようにも思えてきた。
愛と恋の違いは結構大きくて、愛は家族や友人などにも使えるけど、恋は恋愛関係でしか使わない。或いは「恋は自分本位で、愛は相手本位」という言葉もある。
愛ではなく恋、とすると自分の中でひとつ繋げてしまうことがある。
なんとかのキューピッドというやつだ。
僕らは彼らを「恋の」とはいうけど、「愛の」とは言わない。
迫りくる赤い空には、赤月が浮かんでいるのかもしれない。けれど、少女にとってはそれが知らざるうちに成長への暁になるのかもしれない。
さて、天使といえば。
オレは天使?オレは詐欺師?さぁ、どっちだ?
そして、このフレーズが導くもの。
噂が世界を巡る 天使と悪魔本当のところ やつらは双子だって?
「天使の中にも住んでいる、悪魔が」
2007年のツアー「OPEN MUSIC CABINET」で披露された"オレ、天使"~"Devil in
Angel"の流れ。
本人たちが繋げた流れなんだから、"Devil in
Angel"は岡野昭仁の作詞ということは置いておいて。だってもうひとつのカップリングは……
余談だが"Devil in
Angel"自体が問いかける「自分の正義のために誰かを傷つけてしまう」ということは、当時よりも更に今の時代に悲しいくらい響いてしまう。
ちょっと"バトロワ・ゲームズ"にも通ずるものがあると思う。
だからこそちょっと個人的にはツアーで久しぶりにやってくれないかと密かに願っている。
脱線が過ぎるので話を"悪霊少女"に戻す。
その日から少女の涙は 七つの色合いを帯びてく誰にも読みとられない思い 密かに隠して生きるのだろう
ここの「七つの色合い」ってとても意味深な表現で。
アルバム収録曲の"ジルダ"にも「虹」というワードが出てくるが、そもそもを辿ると太陽がもたらすものになる。
だからこそ、どうしても「暁」というタイトルそのものにダイレクトに直結してしまうのだ。
七つの色とは、そのまま光を帯びた少女の瞳と取れるんだけど、昔から思っていたがどうしても、ここで溢れてしまった。
七つの色。
ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ
七つの音色。
フラットとかシャープとか細かいこと言わないように。
最後に、聴いていて気づいたんだけど「誰にも読み取られない思い」って言葉は、実は理解してくれていたと思えた母親の言葉も肯定してはいないんだよね。
もちろん「自分でもわかってない感情だから誰もわからないでしょ?」という意味合いでもあると思うが、気づいた瞬間ちょっとゾッとして、本当に悪霊のせいなのではと思ってしまった。
たぶん「X-ファイル」にそういう話があるせいだと思う。
ということで本当に思いつくままに綴ってしまった。
兎に角書きたいことを最後に記すと。
全人類、これ聴こ。
【アルバム「暁」特集】
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